米証券取引委員会(SEC)が公表した13F報告書により、大手マーケットメーカーのJane Streetが2026年第1四半期にビットコイン関連のエクスポージャーを約8億4000万ドル削減したことが明らかになりました。同社はビットコインETFや関連銘柄の保有を大幅に減らす一方で、イーサリアムETFやAI(人工知能)関連の暗号資産インフラ企業への配分を増やしています。この動きは、ビットコインの市場支配率がピークに達した可能性を見据え、次の市場サイクルでアウトパフォームが期待される分野へ資金を移動させる戦略的なポートフォリオ再編であるとみられます。
ビットコイン関連資産の圧縮とイーサリアムへの資金移動
Jane Streetは2026年第1四半期、主要なビットコイン現物ETF(上場投資信託)および関連銘柄のポジションを大幅に縮小しました。具体的には、ブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)の保有を前四半期比で約71%減らし、フィデリティのFidelity Wise Origin Bitcoin Fund(FBTC)も約60%削減しました。また、ビットコインを財務戦略に組み込んでいるMicroStrategy(MSTR)の保有株数も約78%減少させています。
これらビットコイン関連資産の削減額は合計で約8億4000万ドルに上ります。一方で、同社はイーサリアム関連のポジションを拡大させており、ブラックロックのiShares Ethereum Trust(ETHA)やフィデリティのFidelity Ethereum Fund(FETH)への配分を約8200万ドル積み増しました。
この背景には、ビットコイン・ドミナンス(暗号資産市場全体の時価総額におけるビットコインの占有率)が60%付近で頭打ちになっている状況があります。過去の傾向から、ビットコインの優位性が低下する局面では、資金がイーサリアムや他のアルトコインへ流入する「ローテーション」が起きる可能性が指摘されています。
AI需要と暗号資産インフラ企業への投資拡大
ビットコインへの直接的なエクスポージャーを減らす一方で、Jane Streetは特定の暗号資産関連株の保有を増やしています。特に、ビットコインマイニング企業のRiot Platforms(RIOT)や、米国最大の暗号資産取引所であるCoinbase(COIN)への投資を拡大しました。
これらの投資判断には、AI市場の拡大が影響しているとみられます。CoinbaseはAIを組み込んだ業務フローやエージェント型AI製品への投資を強化しており、マイニング企業の間では保有するコンピューティング資源をAI向けのデータセンター容量に転換する動きが広がっています。
Jane Street自身も、AI企業であるAnthropicへの早期投資を通じて多額の利益を得ており、AI主導の市場テーマを重視する姿勢を鮮明にしています。今回のポートフォリオ再編は、単なる暗号資産市場からの撤退ではなく、AIや取引インフラといった、より広範なデジタル資産セクターへの戦略的な再配置であると推測されます。
ポイント
- Jane Streetが2026年第1四半期に、ビットコインETFやMicroStrategy株を含むビットコイン関連エクスポージャーを約8億4000万ドル削減した点。
- 代わりにイーサリアムETFのポジションを約8200万ドル積み増しており、市場の関心がビットコインからイーサリアムへ移る可能性を想定しているとみられる点。
- ビットコイン・ドミナンスが60%超の高水準にあるなか、サイクル後半の価格修正や他銘柄への資金流入を見越した動きである点。
- AI事業に注力するCoinbaseや、AI向けインフラへの転用が期待されるマイニング企業の株式を買い増し、AIと暗号資産の融合領域に注目している点。
- 2025年に主要投資銀行を上回る収益を上げたJane Streetの動向は、機関投資家の投資戦略における重要な指標となる点。