「漫画全巻ドットコム」などのEC事業を運営する株式会社TORICOは2026年5月14日、2026年3月期の連結決算を発表しました。同社はイーサリアム(ETH)を企業の内部留保として保有・運用する「トレジャリー戦略」を推進していますが、期末の時価評価に伴い2億5410万5000円の暗号資産評価損を計上しました。一方で、本業の収益性改善により、営業赤字および最終赤字は前期から縮小しています。
財務状況:暗号資産の価格変動が経常損益に影響
2026年3月期の連結業績は、売上高が31億8752万1000円、営業利益が6778万8000円の赤字となりました。前期の営業損失2億6018万5000円と比較すると、赤字幅は大幅に縮小しており、既存のEC事業において収益性を重視した運営が進んだ結果と見られます。
しかし、営業外費用としてイーサリアムの時価評価による評価損(保有する暗号資産の取得価格と期末時点の市場価格との差額による損失)を約2.5億円計上したことで、経常損益は3億4015万1000円の赤字となりました。これにより、経常赤字は前期の2億6455万8000円から拡大しています。親会社株主に帰属する当期純損失は3億6499万8000円となり、前期の4億4555万8000円の赤字からは改善が見られました。
イーサリアム保有状況と「稼ぐトレジャリー」戦略
TORICOは、暗号資産を単に保有するだけでなく、積極的に運用して収益化を目指す「稼ぐトレジャリー(PER型金融モデル)」を掲げています。
2026年3月末時点でのイーサリアム保有数量は2474.8649 ETHで、総取得価格は約10億8029万円でした。その後も追加取得を継続しており、直近の5月12日には50 ETHを新たに取得したと発表しています。これにより、累計保有数量は2669.4770 ETH、総取得価額は約11億4967万円に達しています。
同社は今後、ステーキング(ネットワークの維持に貢献し報酬を得る仕組み)やレンディング(暗号資産の貸付)、DeFi(分散型金融)などを組み合わせた運用体制の確立を目指す方針です。また、オプションプレミアム(権利の売買に伴う対価)の獲得を狙う「ターゲットバイイング戦略」など、高度な運用手法も取り入れています。
2027年3月期の展望と業績予想
2027年3月期の連結業績予想について、同社は売上高29億1000万円、営業利益0円(収支均衡)を見込んでいます。既存事業の収益構造改善を継続し、営業段階での黒字化を目指す姿勢が示されました。
一方で、経常利益および当期純利益については「非開示」としています。これは、同社の財務状況が保有するイーサリアムの期末時価評価に大きく左右されるため、現時点で合理的な算定が困難であるという判断に基づいています。事業面では、SBI VCトレードとの連携や、円建てステーブルコイン(法定通貨と価値が連動する暗号資産)の活用支援サービスなど、Web3領域での多角的な事業展開を並行して進めていく計画です。
ポイント
- 営業赤字の縮小:既存EC事業の収益性重視により、営業損失は前期の約2.6億円から約0.6億円へと大幅に改善しました。
- ETH評価損の影響:トレジャリー戦略として保有するイーサリアムの時価評価により約2.5億円の評価損を計上し、経常赤字が拡大する要因となりました。
- 保有資産の拡大:2026年5月時点で2669 ETH超を保有しており、累計取得価額は約11.5億円に達しています。
- 運用モデルの確立:ステーキングやDeFiを活用した「稼ぐトレジャリー」への転換を急いでおり、保有資産からの収益化が今後の焦点となります。
- 次期予想の不透明性:営業利益の黒字化を目指す一方で、最終損益は暗号資産市場の動向に依存するため、予測が困難な状況が続いています。