米上院銀行委員会の民主党筆頭委員であるエリザベス・ウォーレン上院議員は、米通貨監督庁(OCC)のジョナサン・グールド長官に対し、暗号資産関連企業に対する国法信託銀行免許の条件付き承認を批判する書簡を送付しました。ウォーレン氏は、承認を得た企業が本来の信託業務を超えた活動を行おうとしているとし、消費者保護や金融システムの健全性にリスクをもたらす可能性があると指摘しています。同氏はOCCに対し、これまでの承認プロセスに関する詳細な資料を2026年6月1日までに提出するよう求めています。
暗号資産企業への国法信託銀行免許承認に対する懸念
ウォーレン氏は書簡の中で、米国の国法銀行を規制・監督する独立機関であるOCC(米通貨監督庁)が、2025年12月以降に少なくとも9社の暗号資産企業に対して国法信託銀行免許を承認したことを指摘しました。対象企業には、Ripple National Trust Bank(リップル・ナショナル・トラスト・バンク)、Paxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)、Coinbase National Trust Company(コインベース・ナショナル・トラスト・カンパニー)などが含まれています。
ウォーレン氏は、これらの企業が銀行としての基本的な保護措置や義務を回避しようとする実質的な暗号資産銀行として機能しようとしているのではないかと懸念を示しています。
国法信託銀行の役割と指摘されるリスク
国法信託銀行は、通常の国法銀行とは異なり、米連邦預金保険公社(FDIC)による保険付き預金の受け入れや伝統的な商業融資を行いません。しかし、通常の国法銀行ほど厳格な監督や義務を負わないという特徴があります。
ウォーレン氏は、国法信託銀行の業務は本来、受託者や遺言執行者、財産管理人などの明確な信託活動に限られるべきだと主張しています。しかし、最近承認された暗号資産企業の事業計画には具体的な信託業務が十分に盛り込まれておらず、非信託型カストディ、決済、融資、ステーブルコイン関連業務に関わる意図が示されていると指摘しました。厳格な監督を避けたまま実質的に銀行に近いサービスを提供することは、消費者保護、銀行システムの健全性、そして銀行と商業の分離に対してリスクをもたらす可能性があると警告しています。
ジーニアス法と業務範囲の整合性
書簡では、米国におけるステーブルコインの包括的な規制枠組みを定める連邦法とされるGENIUS Act(ジーニアス法)についても言及されています。ウォーレン氏は、ジーニアス法によってステーブルコイン発行体向けの枠組みが整備されたとしても、同法が国法銀行法上の信託銀行の権限を拡大するものではないと指摘しました。したがって、ステーブルコイン関連企業であっても、国法信託銀行として認められる本来の業務範囲を超えることはできないという見解を示しています。
資料提出の要求と今後のスケジュール
ウォーレン氏はOCCに対し、2026年6月1日までに以下の関連資料を提出するよう求めています。
- 承認済み9社と審査中企業の完全な申請書
- 各社の予定業務
- 国法銀行法との整合性に関する法的分析
- 9社の国法信託銀行免許申請および承認に関連する、OCC当局者とホワイトハウスまたはトランプ氏一家とのやり取り
暗号資産企業による国法信託銀行免許の取得をめぐっては、Coinbaseの条件付き承認に対して米銀行団体が反対を表明(2026年4月6日)するなど、業界内外で議論が活発化しています。また、Krakenの親会社であるPaywardが2026年5月9日に同様の免許を申請したほか、Crypto.comも2026年2月24日に条件付き承認を取得しており、これらの動向は今後のWeb3業界のビジネス環境に大きな影響を与える可能性があります。
ポイント
- エリザベス・ウォーレン上院議員が、暗号資産企業への国法信託銀行免許の条件付き承認をめぐり、米通貨監督庁(OCC)の対応を批判する書簡を送付しました。
- RippleやPaxos、Coinbaseなどの暗号資産企業が、厳格な監督を回避しながら実質的な銀行業務を行おうとしていると指摘されています。
- 国法信託銀行本来の限定的な業務範囲を超え、非信託型カストディや決済、融資、ステーブルコイン関連業務に進出することは、金融システムや消費者保護にリスクをもたらす可能性があると警告されています。
- ジーニアス法(GENIUS Act)が整備されたとしても国法信託銀行の権限は拡大しないとし、OCCに対して2026年6月1日までの資料提出を求めています。