暗号資産データ大手のCoinGeckoが発表した調査報告書により、主要な暗号資産取引所における株や金などのトークン化された伝統的資産の時価総額が、18カ月間で約5倍に増加し約1兆800億円に達したことが判明しました。この急拡大の背景には、分散型取引所や伝統的証券会社との競合に直面する中央集権型取引所の生き残り戦略と、機関投資家からの根強い需要が存在しています。暗号資産市場と伝統的金融市場の境界が急速に曖昧になりつつある実態を示す出来事として注目されています。
トークン化市場の拡大状況と需要の変遷
CoinGeckoの調査によれば、主要な暗号資産取引所(バイナンス、OKX、バイビット、ビットゲット、ゲート、MEXCの6社)における貴金属、米国株、コモディティ、世界株価指数、為替(FX)を含むトークン化された伝統的資産の時価総額は、2025年1月の14億ドル(約2,290億円)から2026年6月には66億ドル(約1兆800億円)へ急増しました。
初期の市場成長は貴金属のトークン化が牽引していましたが、その後は米国株へと関心が広がりました。2026年半ばには、半導体株への投資熱や新規株式公開(IPO)への期待感を背景に、米国株のパーペチュアル先物(満期日が設定されていないデリバティブ契約)が取引高・建玉(オープンインタレスト)ともに貴金属を上回る結果となっています。
なお、市場における取引の大部分はパーペチュアル先物が占めており、現物(スポット)市場は比較的小規模にとどまっています。これは、取引所側が原資産の保管(カストディ)や発行を行わずに上場できる点や、トレーダーがレバレッジ取引を好む傾向にあるためと分析されています。
競合環境の変化と金融インフラの統合
中央集権型取引所(CEX)が伝統的資産のトークン化を推進する背景には、市場シェアを伸ばす分散型取引所(DEX)と、デジタル資産の取り扱いを広げるロビンフッドをはじめとした伝統的証券会社との挟み撃ちによる競争激化があります。単一の暗号資産取引だけではユーザーの獲得・維持が難しくなっており、取扱商品の多角化を余儀なくされている状況です。
一方で、機関投資家によるトークン化資産への関心も高まりを見せています。スタンダードチャータードは6月の報告書で、現実資産(RWA:Real World Assets)の普及を通じて2030年までに分散型金融(DeFi)が2兆7,000億ドル(約442兆円)規模へ拡大する可能性があると試算しました。またバーンスタインのアナリストも、トークン化市場全体が2030年末までに4兆ドル(約655兆円)に達し得ると予測しています。
さらに、ビットゴーとOTCマーケッツ・グループの提携によるトークン化証券アクセスの拡大や、トレーダブルとステラ・ネットワークによる最大10億ドル(約1,640億円)規模のプライベートクレジット(私募融資)のオンチェーン化など、銀行や証券会社、暗号資産企業が同一のブロックチェーンインフラ上で事業を展開する動きが加速しています。
ポイント
- トークン化された伝統的資産の時価総額が18カ月で約5倍の約1兆800億円に急増した点で注目されます。
- 現物取引ではなく、レバレッジ可能なパーペチュアル先物(満期のないデリバティブ取引)が取引の中心となっている点が特徴的です。
- CEXがDEXや伝統的証券会社との競争に対抗するため、暗号資産以外の資産へ領域を拡大している実態が明らかになりました。
- 伝統的金融機関と暗号資産企業が共通のブロックチェーン基盤を利用し始めており、金融市場の統合が進んでいる点で重要です。