日本円ステーブルコイン(法定通貨などに価値が連動するように設計された暗号資産)「JPYC」を発行するJPYC株式会社は、シリーズBラウンドのエクステンションにて新たな資金調達を実施し、累計調達額が約60億円に達しました。今回のラウンドでは、アマゾンなどのEC物流を手がける総合物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスが新たに引受先として参画しています。物流大手による出資と決済導入の検討は、国内企業によるステーブルコインの大規模採用事例となる可能性がある点でブロックチェーン業界において注目されます。
AZ-COM丸和との提携と企業間決済への導入検討
総合物流グループであるAZ-COM丸和ホールディングスは、協力会社約2,300社への支払いに日本円ステーブルコインJPYCを導入する方向で検討を行っています。これが実現した場合、国内企業によるステーブルコインのB2B(企業間取引)大規模採用における初の事例となる見通しです。
JPYC株式会社は、自社が発行するJPYCとAZ-COMグループが持つ物流網との相乗効果により、商流・物流・金流が一体化したオンチェーン金融(ブロックチェーン上で行われる金融サービス)の中核を担う基盤構築を目指すとしています。
店舗や自動販売機など消費者に近い領域での社会実装
JPYCは2025年10月の発行開始以降、クレジットカード払いや暗号資産ウォレットでの決済利用を通じて流通規模を拡大させてきました。2026年に入り、実店舗や日常的な決済スキームの実現に向けた複数のプロジェクトが展開されています。
7月1日からは、INSPAY、HashPort、チェリオコーポレーションと連携し、京都市内のチェリオ自動販売機にてJPYC決済の実証実験が開始されています。また、コンビニ大手のローソンでは、KDDIが運営するローソン高輪ゲートウェイシティ店において、MetaMaskなどのウォレットを使用した店頭決済実証実験を8月上旬から行う計画です。さらに、5月にはLINE NEXTが運営するステーブルコインウォレット「Unifi」がJPYCに対応し、ユーザーがLINEアカウントのみで保管・送金・決済を行える環境が整えられています。
資金の使途と今後の展開方針
今回の資金調達により、JPYC株式会社は金融とWeb3の両領域におけるエコシステムの拡大に資金を投じる方針です。今後はマルチブロックチェーン対応(複数のブロックチェーン基盤への対応)の推進や、地方金融機関との連携を含めた社会実装をさらに加速させていくとしています。
ポイント
- JPYCがシリーズBエクステンションでの調達により、累計調達額約60億円を達成した点で注目されます。
- 物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスが参画し、協力会社約2,300社への決済導入を検討している点で、大規模なB2B活用例として重要視されます。
- 自動販売機やローソンでの店頭決済実験、LINEアカウント対応ウォレットでの採用など、実生活領域での決済検証が進んでいる点で評価されます。
- 今後はマルチブロックチェーン対応や地方金融機関との連携を通じて、Web3と金融領域双方での基盤構築が進められる見通しです。