国内においてブロックチェーンを活用した次世代決済インフラの実用化に向けた動きが活発化しています。日本ブロックチェーン基盤は2026年9月24日、信託型日本円ステーブルコインの実証プログラムを開始し、東芝など26社が参加を表明しました。さらに翌25日には一般社団法人デジタル通貨イノベーション機構が記者会見を開き、トークン化預金の標準化やインフラ整備に向けた本格的な活動を10月1日より開始すると発表しました。官民や産業界の枠組みを越えて、ステーブルコインとトークン化預金の双方が社会実装フェーズへと移行しつつあります。
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日本ブロックチェーン基盤がEJPY実証を開始し東芝など26社が参画
日本企業が運営するブロックチェーン「Japan Open Chain(JOC)」のコンソーシアムを運営・管理する日本ブロックチェーン基盤は、事業会社や金融機関、自治体とともにステーブルコインの使い道を検討する「ステーブルコイン実証実験パートナーズ」を開始しました。募集開始からすでに26社が参加を表明しており、東芝、SCSK、朝日放送グループホールディングス、八十二長野銀行、福岡県田川市など16社の参加が公表されています。残る10社についても順次公表される予定です。
この実証プログラムは、2026年9月から2027年2月にかけての約半年間、参加費無料で実施されます。検証の対象は、国内外の送金・決済、企業間取引、不動産などのデジタル資産(RWA:現実資産)決済、Web3サービスでの決済など幅広い領域にわたります。同社は、ステーブルコインが定着するためには発行だけでなく実際の業務での価値創出が不可欠であるとしており、準備を進める信託型日本円建てステーブルコイン「EJPY」を軸に、勉強会やテストコインによる検証環境を提供します。
日本ブロックチェーン基盤は2026年5月にEJPYの発行方針を発表しており、ブロックチェーン運営パートナー(バリデータ)は当初の14社から最終的に21社体制とする計画でした。現在の公式サイト上では9社が名を連ねています。なお、国内の円建てステーブルコインとしてはSBI信託型の「JPYSC」と「JPYC」の2銘柄が先行しており、合計発行額は約310億円に達しています。
デジタル通貨イノベーション機構が発足しトークン化預金の標準化を推進
ステーブルコインの実証が進む一方、預金をブロックチェーン上で扱えるようにするトークン化預金の分野でも標準化の動きが本格化しています。一般社団法人デジタル通貨イノベーション機構(DCIO)は2026年9月25日に記者会見を行い、10月1日から本格始動することを明らかにしました。同機構は2020年に発足した「デジタル通貨フォーラム」を発展的に改組し、2026年7月に設立された組織です。
機構の代表理事には元財務事務次官で弁護士の勝栄二郎氏、エグゼクティブアドバイザーには前日本銀行総裁の黒田東彦氏、副代表理事には前身フォーラムの座長を務めた元日銀決済機構局長の山岡浩巳氏が就任しました。事務局は、トークン化預金プラットフォーム「DCJPY」を展開するDCPが務め、理事には三菱UFJ銀行、SBI新生銀行、GMOあおぞらネット銀行などの幹部が参画しています。2026年3月末時点で約130の企業・団体が参加していたフォーラムから引き継ぐ形で、現時点で40社以上が入会を決定、または検討しています。
DCIOは、銀行ごとに分断されがちな仕組みに共通ルールを策定し、企業間送金や大口決済での利用拡大を目指しています。具体的には、複数銀行間の決済を検討する「銀行部会」、基盤間の技術標準化を担う「技術部会」、商流・物流と決済を連動させるユースケースを開拓する「ユーザー部会」の3部会を設置します。設立の背景には、実証実験から社会実装フェーズへの移行に加え、自民党内のプロジェクトチーム発足や政府の骨太の方針に「オンチェーン金融の推進」が盛り込まれるなど、政策的な後押しもあります。DCJPYに関しては、ゆうちょ銀行が2026年度中の発行予定を維持しているほか、北陸銀行も決済事業での商用化を進める予定とされています。
決済インフラの多様化とブロックチェーン活用の広がり
国内では、ステーブルコインとトークン化預金という2つの異なるアプローチからデジタル決済の整備が進められています。DCIO副代表理事の山岡氏は両者の違いについて、ブロックチェーンを活用する点は共通しているとしつつも、トークン化預金は銀行が培ってきた本人確認(KYC)やマネーロンダリング対策のノウハウを活用できると説明しています。また、銀行本来の貸出や証券投資といった資金仲介機能を維持でき、企業間の大口決済にも上限なく対応できる利便性があると指摘しています。
一方で、日本ブロックチェーン基盤が推進する信託型ステーブルコインの実証には、製造業やIT、メディア、自治体など多様な業種が参加しており、Web3サービスや不動産などのデジタル資産決済を含む柔軟な活用方法の模索が進んでいます。発行基盤の構築から実際の業務や商流との統合へと焦点が移る中、双方のインフラ整備が今後のビジネス取引やオンチェーン金融の定着に寄与していくものと見られます。
ポイント
- 日本ブロックチェーン基盤が信託型ステーブルコイン「EJPY」の実証プログラムを開始し、東芝や地方銀行など26社が参画を表明した点
- 一般社団法人デジタル通貨イノベーション機構が10月1日より本格始動し、元日銀総裁の黒田東彦氏らが参画してトークン化預金の標準化を進める点
- 国内の円建てステーブルコイン発行額が約310億円に達する中、単なる発行にとどまらず実際の商流や業務でのユースケース開拓へとフェーズが移行している点
- 政府の骨太の方針に「オンチェーン金融の推進」が盛り込まれるなど、政策面と産業界の双方が連携して次世代決済インフラの整備を加速させている点
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