レイヤー1ブロックチェーン「モナド(Monad)」の開発を手がけるカテゴリー・ラボ(Category Labs)は、量子コンピューターによる暗号解読リスクに備えるためのロードマップを公開しました。同計画では、利用者が既存のアドレスを変更することなく耐量子認証へ移行できる仕組みや、ネットワークの合意形成(コンセンサス)の耐量子化を優先事項として開発が進められています。従来の暗号方式が抱える解読リスクに対応しつつ、分散型金融(DeFi)などの既存利用環境への影響を抑えた段階的なセキュリティ強化を図る方針です。
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アドレスを維持した耐量子認証への移行とコンセンサスの保護
モナドやイーサリアムでは、一般的な取引の電子署名に「ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)」が使用されています。ECDSAは秘密鍵で署名し公開鍵で検証する仕組みですが、十分な性能を持つ量子コンピューターが実現した場合、公開鍵から秘密鍵が復元されて資産が不正に移動されるリスクが指摘されています。グーグルが2026年3月に発表した研究推計では、50万個未満の物理量子ビット(ハードウェア上で実現される情報の基本単位)を備えた量子コンピューターにより、ECDSAで使われる楕円曲線の秘密鍵が約18分から23分で復元される可能性が示されました。高額な資産を保有するウォレットへの攻撃は経済的に成立する可能性があると見られています。
こうしたリスクに対し、カテゴリー・ラボは利用者の資産保護を最優先とし、「柔軟かつアップグレード可能なアカウント認証」という技術提案を策定しました。従来のウォレットは署名鍵とアドレスが結び付いているため方式移行にはアドレス変更と資産移動が必要でしたが、新提案ではアカウント自身が認証設定を状態情報として保持します。これにより、利用者はアドレスを維持したまま耐量子認証を追加し、従来の認証を無効化できるようになります。アドレス変更を回避できる点は、預入資産や取引権利が特定アドレスにひも付いているDeFiプロトコルにおいて、会計処理やアドレス帳への影響を抑えて移行できるメリットがあります。
ウォレットに続く優先事項として、コンセンサスの耐量子化も進められています。モナドのバリデーター署名には「BLS12-381」という暗号技術が使われていますが、秘密鍵が復元されると署名偽造による二重支払い攻撃や取引確定妨害につながるおそれがあります。カテゴリー・ラボはこうしたネットワーク全体の危機に備え、コンセンサス方式「ケイデンス(Cadence)」の耐量子版を開発しています。
EVMや暗号化メモリプールを含む全6項目の対応計画
今回のロードマップは、ウォレット、コンセンサス、ステーキング、EVM(イーサリアム仮想マシン)、証明インフラ、暗号化メモリプールの全6項目で構成されています。先行して開発されているウォレットとコンセンサス以外の4項目は、現在計画段階に位置付けられています。
ステーキング領域では、ウォレットやコンセンサスで導入される耐量子技術を再利用し、資産の管理権限保護やバリデーター登録に対応する計画です。スマートコントラクトを実行するEVMにおいては、コントラクト内で使用される署名や暗号学的証明に耐量子検証手段を提供する方針が示されています。さらに、ゼロ知識仮想マシン(zkVM)などの証明インフラの耐量子化も予定されています。
また、取引がブロックに取り込まれる前に内容を暗号化して最大抽出可能価値(MEV)の獲得機会を抑制する「暗号化メモリプール」についても、将来的に暗号化方式を更新する計画です。量子コンピューターによって暗号が破られ、取引内容が意図せず早期に明らかになる事態を防ぐ狙いがあります。
ロードマップ全体の完了時期について、モナド側は公表していません。関連する動向として、グーグルは2029年を耐量子暗号への移行目標とし、イーサリアム財団の耐量子チームもレイヤー1の主要アップグレードを2029年までに完了可能と見積もっていますが、アプリケーションやエコシステム全体の移行にはさらに時間を要する見通しです。モナドも、ウォレットやバリデーターの移行には長期的な準備が必要であるとし、量子攻撃の実用化に先駆けた対策の重要性を説明しています。
ポイント
- モナド開発のカテゴリー・ラボが全6項目からなる耐量子化ロードマップを公開し、ウォレットとコンセンサスの耐量子化を優先して開発している点
- アドレスを変更せずに耐量子認証へ移行できる技術提案により、DeFiの会計処理やアドレス帳への悪影響を抑えながら資産を保護できる点
- コンセンサス方式「ケイデンス」の耐量子版開発により、バリデーターの署名偽造に伴う二重支払いなどのネットワーク障害を未然に防ぐ点
- EVM、ステーキング、証明インフラ、MEV対策の暗号化メモリプールまで含めた包括的な暗号更新計画を掲げている点
- 業界全体で完全移行に時間を要すると見込まれる中、将来の量子コンピューターによる暗号解読リスクを見据えて早期の防衛策に着手した点
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