ブロックチェーンを活用したDXや新規事業を検討する際、パブリックチェーン、プライベートチェーン、コンソーシアムチェーンなど種類の違いに戸惑った経験はありませんか?
すでにブロックチェーンの基礎知識や活用事例は把握しているものの、自社ユースケースにマッチするチェーンをどのように選定し、ROIをどう評価すべきか難しいと感じる企業担当者は多いです。
今回、Pacific Meta Magazineでは、ブロックチェーンの種類について以下の内容について紹介しています。
- ブロックチェーンの種類・プラットフォームを5つ紹介
- 5種のブロックチェーンの比較
- 採用するブロックチェーンの種類を選定する際のポイント
ぜひ、最後までご覧ください。
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ブロックチェーンは何種類あるの?
ブロックチェーンには、大きく分けてパブリックチェーン、プライベートチェーン、コンソーシアムチェーンの3種類が存在します。
これらの違いは主に「参加権限」「ガバナンス形態」「台帳の公開可否」「セキュリティ」「法規制の適用」など複数の観点に基づいて分類されます。
さらに、「レイヤー1(Layer1)」と呼ばれるブロックチェーン本体と、その上で動作する「レイヤー2(Layer2)」、あるいはオンチェーン・オフチェーンを組み合わせたハイブリッド構造も考慮することで、より柔軟な設計が可能になっています。
種類・プラットフォーム別のブロックチェーンの仕組みや特徴は?
ここからは、以下の順番で各ブロックチェーンについて紹介していきます。
- パブリックチェーン
- プライベートチェーン
- コンソーシアムチェーン
- レイヤー2ブロックチェーン
- ハイブリッド型ブロックチェーン
① パブリックチェーン
パブリックチェーンは、誰でもノードを立ち上げて参加できるオープンなブロックチェーンです。
透明性が高く、参加者が多いため非常に分散度が高い一方、ガス代の上昇やスケーラビリティが課題となることも多いです。
代表例としてはビットコイン(Bitcoin)やEthereum、近年注目を集めるSolana、Polkadotなどが挙げられます。
ここでは、それぞれの特徴を比較しつつ、仮想通貨 ブロックチェーン 種類の最新トレンドやガスコスト削減の動向について見ていきましょう。
主要パブリックチェーンの比較
代表的なパブリックチェーンをTPS(1秒あたりのトランザクション数)やファイナリティ(取引がブロックに確定するまでの時間)といった観点で簡単に比較すると、以下のようになります。
チェーン名 | コンセンサス | TPS目安 | ファイナリティ |
---|---|---|---|
ビットコイン | PoW | 約7 | 10分~1時間 |
Ethereum | PoS(The Merge後) | 約15~20 | 数分 |
Solana | PoH+PoS | 数千~ | 数秒 |
Polkadot | NPoS | 約1000 | 数秒~数分 |
ビットコインは最も歴史が長くセキュリティが高い一方、トランザクション速度は低めです。
EthereumはL2の導入により今後スケーラビリティを大幅に改善する計画があります。
Solanaは高TPSを謳っており、NFTゲームなどリアルタイム性が求められるユースケースで注目を集めています。
パブリックチェーンのメリット
パブリックチェーンの最大の魅力は、誰でも自由に参加できるオープン性と高度な分散化です。
コミュニティ主導での開発が活発であり、アップグレードやエコシステム拡張が迅速に進みます。
特に、DeFi(分散型金融)やNFTなど、複数のプロジェクトやユーザーが相互に利用し合うことで生まれるネットワーク効果は大きな強みです。
多くのウォレットやスマートコントラクトが標準化・相互運用可能である点も、エコシステム拡張に寄与します。
ただし、ネットワーク混雑時には手数料(ガス代)の上昇リスクがあるため、費用対効果やトランザクションの優先度設計が必要です。
パブリックブロックチェーンの最新トレンド
近年、EthereumコミュニティではEIP-4844(Proto-Danksharding)など、ガスコスト削減やスケーラビリティ向上が注目されています。
これらのアップグレードにより、L2との連携をさらに強化し、トランザクション手数料の大幅な削減が期待されています。
SolanaやAvalancheなどガス代が比較的安いパブリックチェーンも台頭しており、ユースケースによってはマルチチェーン展開というアプローチが主流になりつつあります。
② プライベートチェーン
プライベートチェーンは、特定の企業や組織がアクセス権やノード運営権を管理し、許可されたメンバーのみが参加できるブロックチェーンです。
台帳の閲覧や書き込み権限を制限できるため、機密性の高いデータを扱う業務に適しています。
一方で、オープン性や分散度は低下するため、「ブロックチェーンを利用するメリットがどの程度あるのか」について慎重に検討する必要があります。
ここでは、銀行やサプライチェーン領域の具体的事例やROIデータを交えながら、プライベートチェーンの特徴を確認していきます。
プライベートチェーンのメリット・課題
プライベートチェーンの特徴をメリットと課題に分けて整理すると、次のようになります。
項目 | メリット | 課題 |
---|---|---|
権限管理 | アクセス制御が容易 | 中央管理者への依存度増 |
ROI | 内部システムとのスムーズな連携 | 初期導入コストが高い可能性 |
セキュリティ | 外部からの不正アクセスリスク低減 | 内部不正リスクは残る |
権限管理を徹底しながら業務効率を上げられる点はプライベートチェーンの大きな利点です。
ただし、完全に分散化できないので、「中央集権リスクや可用性」をどのようにバランスするかが導入の鍵となります。
プライベートチェーン採用事例
銀行業界では、送金や顧客認証など高セキュリティが求められる領域でプライベートチェーンの導入が進んでいます。
例えば国内の某メガバンクでは、海外送金プロセスの一部をプライベートチェーン化し、事務コストを約30%削減したと報告されています(2022年の独自調査によるデータ)。
サプライチェーンマネジメント(SCM)でも、製品のトレーサビリティ強化と書類処理の効率化にプライベートチェーンが採用される事例があります。
ある海外物流企業の事例によると、荷受け関連手続きの電子化によって、ROIが年率換算で15%上昇したというデータがあります。
これらの事例から、許可制による高いセキュリティと既存システムとの親和性が、プライベートチェーン導入の主なメリットといえます。
③ コンソーシアムチェーン
コンソーシアムチェーンは、複数の企業や組織が共同で運営するブロックチェーンです。
プライベートチェーンとパブリックチェーンの中間的存在とも言われ、参加団体が限定されているものの、分散運営の要素も取り入れています。
特定業界やサプライチェーン全体で取り組む場合に適しており、参加企業間でガバナンスルールを定め、共同でノードを運用する仕組みが特徴です。
以下では、コンソーシアムチェーンを成功させるためのガバナンス設計や、国内外の事例を確認していきましょう。
コンソーシアムチェーンのガバナンス設計
コンソーシアムチェーンでは、参加メンバー(企業や組織)があらかじめ決められており、ブロック生成や取引承認権がそれぞれに分散されます。
ただし、パブリックチェーンのように誰でもノード運営できるわけではありません。
ガバナンス設計では、以下のような点が重要です。
- 決議プロセス:参加組織が持ち回りで提案し、多数決や合意形成プロトコルでアップグレードや運営方針を決定する。
- ノード配分:各組織が持つノード数や投票権をどう割り当てるか、業界バランスを考慮する。
- コンプライアンス:個人情報保護や業法に基づく運用ルールを共同で策定し、定期的に監査を行う。
こうしたガバナンスモデルを明確に設計しておくことで、コンソーシアムチェーンのメリットを最大化できます。
一方、意思決定が遅くなるリスクもあるため注意が必要です。
“Hyperledger Fabric”の”Corda”比較
企業向けブロックチェーン基盤として有名なのがHyperledger FabricとR3のCordaです。
両者ともコンソーシアムチェーン開発を想定しており、多くの大手企業がプロジェクトに採用しています。
Hyperledger Fabricはモジュール設計が特徴的で、スマートコントラクト言語はGo言語やNode.jsなどに対応しており、API互換性が比較的高いです。
一方、Cordaは金融業界向けに特化しており、スマートコントラクト機能を「コルダアプリ」として提供します。JavaやKotlinが主にサポートされ、既存の業務システムとの連携を重視しています。
どちらを採用するかは、業界の慣習や既存システムとの親和性、開発者リソースなどを総合的に考慮して決定されるケースが多いです。
国内外の業界別コンソーシアム事例
代表的な事例としては、物流業界のTradeLensがあります(※サービス終了済み)。
複数の海運企業や港湾当局が参加し、コンテナ情報を共有・追跡する仕組みを構築しています。
従来の紙ベース手続きが大幅に削減され、全体効率を高めた事例として注目されました。
業界全体の共通課題や法的要件をクリアしながら、参加企業がメリットを得られるプロジェクトでコンソーシアムチェーンが有効だと考えられます。
④ レイヤー2ソリューション
レイヤー2ソリューションは、ブロックチェーン本体(レイヤー1)の混雑を軽減し、TPSやスループットを向上させるための仕組みです。
Rollupはトランザクションをバッチ化し、L1に圧縮データを送ることでガス代を削減します。
プラズマはサイドチェーンの一種で、大量のトランザクションをL2で処理し、重要な情報のみをL1に報告します。
状態チャネル(State Channel)は参加者同士のやり取りをオフチェーンで行い、最終結果だけをオンチェーンに書き込む方式です。
⑤ ハイブリッドチェーン
ハイブリッドチェーンは、オンチェーン環境とオフチェーンのクラウドやデータベースを連携させたアーキテクチャを指します。企業ユースケースではAWSやAzureなどのクラウド基盤に機密情報を保管し、トランザクション検証や価値転送にはEthereumなどのパブリックチェーンを利用する形態が典型的です。
ハイブリッドチェーンのメリットは、機密情報や大量データをオフチェーンで管理できる一方、必要な部分のみをブロックチェーンで透明化・改ざん耐性を担保できる点です。
ただし、オフチェーンデータの改ざんリスクやブロックチェーンとの同期設計が複雑になる可能性があるため、システム全体のアーキテクチャ設計が重要です。
各種ブロックチェーンの比較表
ここまで紹介したチェーンの特徴を総合的に比較すると、メリット・デメリットは以下のように整理できます。
チェーン種類 | コスト | 速度(TPS) | 分散度 | 法規制適合 |
---|---|---|---|---|
パブリック | ガス代は高騰しやすいが運用コストは低 | 中〜高 (L1次第) | 非常に高い | グローバルで多様だが規制リスクも高 |
プライベート | 導入・運用コストが高 | 比較的高 (許可型なので高速) | 低い(参加者限定) | 自社・業界ルールを柔軟に反映可能 |
コンソーシアム | 参加組織で分担 | 中 (合意形成により変動) | 中程度 | 業界標準化しやすい |
ハイブリッド | 要件次第で可変 | ケースバイケース | 中〜高 | 運用モデルによる |
レイヤー2 | トランザクションコストが大幅に低減 | 高 (L1に依存しつつ拡張) | 高 (L1と連携) | ベースチェーンの規制を引き継ぐ |
パブリックチェーンは分散度が高いもののガス代リスクがあり、プライベートチェーンはセキュリティと制御性が高い反面、導入コストが高いという特徴があります。
コンソーシアムは複数企業で標準化を図りやすい一方、調整に時間がかかりがちです。
ハイブリッドやレイヤー2は特定の課題を補うソリューションとして人気が高まっています。
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下記の記事では、支援内容の詳細をCASIOのプロジェクトメンバーへのインタビューと共にご紹介しているのでぜひ、こちらもご覧ください。
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ブロックチェーンの種類・プラットフォームを選ぶ際のポイント

ここでは、どの種類のブロックチェーンを活用すべきかを選ぶ際のポイントを紹介してきます。
セキュリティとガバナンス
ブロックチェーンの信頼性を支える要素として、「どのようなコンセンサスアルゴリズムが使われているか」と「誰がガバナンスに関与できるか」が重要です。
本章では、PoW・PoS・BFTなどのコンセンサスアルゴリズムとガバナンス構造の違いを確認します。
セキュリティモデルの違い(PoW, PoS, BFT)
代表的なコンセンサスアルゴリズムにはPoW(Proof of Work)、PoS(Proof of Stake)、BFT(Byzantine Fault Tolerance)系などがあります。
PoWはビットコインが採用し、膨大な計算量を投入することで高いセキュリティを維持します。一方、エネルギー消費の大きさが課題です。
PoSはイーサリアムがThe Mergeで移行した方式で、ステーク(保有量)に応じてブロック生成権を与えます。
大口保有者の影響力が強くなる懸念もありますが、PoWよりも環境負荷を抑えられます。
BFT系アルゴリズム(TendermintやPBFTなど)は、バリデータが合意形成を行うため、高速なトランザクション確定が可能です。
ガバナンス構造とアップグレード手順
パブリックチェーン(例:Ethereum)では、コミュニティの提案(EIP)やコア開発者の調整、財団の資金サポートが組み合わさってアップグレードが実施されます。
プライベートチェーンは管理組織の裁量で変更できるのが特徴です。
コンソーシアムチェーンでは参加者全員の合意が必要となり、ガバナンスルールを事前に設定しておかなければ意思決定が難航する可能性があります。
バグや脆弱性が発見された場合の修正手順も明確にしておくことが重要です。
ブロックチェーンの種類別スケーラビリティとパフォーマンス評価
ビジネスユースでブロックチェーンを活用する場合、トランザクション性能は導入可否を左右する重要な要素です。
本章では、TPSやファイナリティ、レイテンシの計測方法と、ShardingやSidechainといったスケーラビリティ改善策を紹介します。
TPS・ファイナリティ・レイテンシの計測方法
ブロックチェーンのパフォーマンスを客観的に評価するには、以下の指標が不可欠です。
TPS(1秒あたりのトランザクション数)やファイナリティ(取引が確定するまでの時間)などを把握することで、システムの処理能力を比較できます。
ベンチマークにはオープンソースツール(例:Hyperledger Caliper)を用い、ノード数やブロックサイズ、トランザクションサイズなどを統一して測定するのが一般的です。
スケーラビリティ改善パターン(Sharding, Sidechain)
Shardingはネットワークを複数のシャードに分割し、並行してトランザクションを処理する仕組みです。
Ethereum 2.0で導入が予定されており、大幅なTPS向上が見込まれています。
ブロックチェーンの種類に関するよくある質問
最後に、ブロックチェーンの種類に関するよくある質問とその答えを紹介していきます。
ブロックチェーンにはどのような種類がありますか?
大きく分けると、パブリックチェーン、プライベートチェーン、コンソーシアムチェーンの3種類です。
さらに、これらに加えてレイヤー2やハイブリッドチェーンなども存在します。
パブリックチェーンとプライベートチェーンの違いは?
パブリックチェーンは参加権限がオープンで分散度が高く、プライベートチェーンは特定組織の管理下で高い機密性を確保します。
ただし、パブリックチェーンはガス代などコスト面の変動リスクがあり、プライベートチェーンは導入コストが高い傾向があります。
企業が最も安全に導入できるブロックチェーンは?
銀行や証券などの高セキュリティ分野ではプライベート・コンソーシアム型が主流です。
一方、NFTやトークン発行のように幅広くユーザーを募る場合は、パブリックチェーン+レイヤー2を組み合わせるケースが多いです。
用途や規制要件に合わせて選定しましょう。
ブロックチェーンの種類・プラットフォームについてまとめ
今回、Pacific Meta Magazineではブロックチェーンの種類・プラットフォームについて幅広く解説しました。
自社でブロックチェーンを導入する際は、ROIやセキュリティ、規制対応などを総合的に検討し、PoCで得られたデータを基に慎重に種類を選ぶことが重要です。
特に2025年以降は金融庁の改正案や海外規制も強化される見込みですので、早めの準備と情報収集が求められます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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