ビットコインマイニング大手のBitfarms(ビットファームズ)は、マイニング事業から完全に撤退し、AI(人工知能)およびHPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)向けのデータセンター事業へ転換する方針を明らかにしました。2025年度決算では大幅な純損失を計上したものの、市場はこの戦略転換を好意的に受け止めています。同社はブランド名を「Keel Infrastructure」へと変更し、次世代のインフラ事業者としての道を歩み始めます。
財務状況の悪化とAI事業への抜本的な転換
Bitfarmsが発表した2025年度通期の決算によると、売上高は前年比72%増の2億2900万ドル(約366億4000万円)と大幅な増収を記録しました。しかし、その一方で純損失は2億8450万ドル(約455億2000万円)に拡大しています。
この損失の主な要因は、2億4800万ドル(約396億8000万円)に達した売上原価に加え、保有するデジタル資産の公正価値変動損が5050万ドル(約80億8000万円)に上ったことです。こうした厳しい財務状況にありながら、発表翌日の株価は6.64%上昇しました。これは、市場が同社のマイニング撤退とAI分野への転換を、将来的な成長機会として評価しているためと見られます。
ブランド刷新と米国への拠点移転
同社は事業転換に伴い、組織体制とブランドを全面的に刷新します。株主総会ではカナダからアメリカへの本社移転が承認され、社名を「Keel Infrastructure(キール・インフラストラクチャー)」、ティッカーシンボルを「KEEL」へと変更する予定です。
現在、ペンシルベニア州、ワシントン州、ケベック州において、合計2.2GW(ギガワット)規模のAI・HPCデータセンター開発パイプラインを進めています。同社のベン・ガニヨンCEOは、ビットコインはいずれ価値がなくなるとの考えを示しており、2025年に構築した資産やチームはすべてAIインフラの成長のためにあると強調しています。
ビットコイン保有資産の完全売却方針
事業転換の決定的な動きとして、同社は現在バランスシート上に保有している約1億6100万ドル(約257億6000万円)相当のビットコインをすべて売却する方針を明確にしています。これは、従来のマイニング事業者としてのアイデンティティを捨て、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)やネオクラウドを支えるインフラ基盤の構築に専念する姿勢を示すものです。
業界内ではBitfarms以外にも、CangoなどのマイナーがAI事業への転換のためにビットコインを売却する動きが見られており、マイニング業界全体が大きな転換期を迎えている可能性があります。
ポイント
- Bitfarmsはビットコインマイニングから完全撤退し、AIおよびHPCデータセンター事業へ転換します。
- 2025年度は大幅な純損失を計上しましたが、AIシフトへの期待から市場は株価上昇で反応しました。
- 社名を「Keel Infrastructure」に変更し、本社をカナダからアメリカへ移転させることで体制を刷新します。
- 保有する約1億6100万ドル相当のビットコインをすべて売却し、インフラ構築の資金やリソースに充てる方針です。
- マイニング事業者がその電力インフラを背景にAI分野へ進出する、業界の構造変化を象徴する事例として注目されます。