オーストラリア連邦議会において2026年4月1日、デジタル資産プラットフォームを同国の金融サービスライセンス制度の対象とする「2025年企業法改正(デジタル資産フレームワーク)法案」が可決されました。この法案は、取引所やカストディアン(資産保管業者)などの事業者にライセンス取得を義務付けることで、消費者保護と市場の健全性を高めることを目的としています。主要な地域で進む包括的な規制整備の流れにオーストラリアも加わることになり、業界の不透明感の解消が期待されています。
新たな規制枠組みとライセンス制度の導入
今回の法案可決により、オーストラリアで活動するデジタル資産プラットフォームおよびトークン化されたカストディプラットフォームは、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)から「オーストラリア金融サービスライセンス(AFSL)」を取得することが義務付けられます。
対象となるのは、暗号資産取引所やカストディアン、その他のデジタル資産仲介業者です。これまでは規制の空白地帯となっていた部分を埋めるため、企業法およびASIC法が改正されます。これにより、デジタル資産を扱う事業者は従来の金融機関と同様の基準で規制当局の監督を受けることになります。
この動きは、オーストラリア国内の暗号資産保有率が高いことも背景にあると見られます。2026年3月の調査報告では、オーストラリア人の33%が暗号資産を保有しているというデータもあり、利用者保護の重要性が高まっていました。
施行までのスケジュールと小規模事業者への免除規定
法案は現在、上下両院を通過して国王裁可(形式的な最終承認)を待つ段階にあります。法案が正式に施行されるのは、国王裁可から12カ月後の予定です。また、既存の事業者に対しては、新たな規制環境へ適応するための別途移行期間が設けられる方針です。
一方で、市場への参入障壁や過度な負担を考慮し、小規模事業者向けの免除措置も盛り込まれました。具体的には、以下のいずれかの条件を満たすプラットフォームは新たな枠組みの対象外となります。
- 年間取引額が1,000万豪ドル(約11億円、1豪ドル=110円換算)未満
- ユーザー1人当たりの保有額が5,000豪ドル(約55万円)未満
これにより、スタートアップ企業などの小規模な事業活動を阻害せず、大規模なプラットフォームを中心に適切な規制を及ぼす狙いがあります。
業界の反応とグローバルな規制動向との整合性
今回の法案可決により、オーストラリアはシンガポールや香港、欧州連合(EU)のMiCA(暗号資産市場規制)といった、包括的な法的枠組みを持つ地域と肩を並べることになります。
業界団体であるオーストラリア・デジタルエコノミー協議会(DECA)は、この法案を歓迎する意向を示しています。同団体は、デジタル資産プラットフォームに直接対応する法的枠組みが整備されたことで、企業や投資家が長年求めてきた「規制の明確性」がもたらされると評価しています。
オーストラリア市場を巡っては、2026年2月にGemini(ジェミニ)が撤退を表明する一方で、3月にはRipple(リップル)がAFSLの取得を目指す動きを見せるなど、各社の対応が分かれていました。今回の明確なルール整備により、不確実性に基づいた判断から、法的枠組みに基づいた事業実装へとフェーズが移行する可能性があります。
ポイント
- 2026年4月1日に「2025年企業法改正(デジタル資産フレームワーク)法案」が可決され、デジタル資産プラットフォームが規制対象となりました。
- 取引所やカストディアンは、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)から金融サービスライセンス(AFSL)を取得する義務が生じます。
- 年間取引額1,000万豪ドル未満などの小規模事業者には、規制の免除措置が適用されます。
- 施行は国王裁可から12カ月後となる予定で、事業者のための移行期間も設けられる計画です。
- シンガポールやEUと同様の包括的規制が整備されたことで、市場の信頼性向上と消費者保護の強化が期待されます。