暗号資産取引サービス「Coincheck」を運営するコインチェック株式会社は、2026年3月12日、法人口座数が1万件を突破したことを発表しました。背景には、企業の財務戦略として暗号資産を保有・運用する「クリプト・トレジャリー」の広がりがあるとされています。国内の法人口座全体に占める割合は依然として限定的ですが、上場企業の参入や運用の多様化など、法人市場の構造に変化が見られます。
法人市場の現状と利用企業の属性
コインチェックの法人口座数は2026年2月末時点で1万件を超え、国内の法人口座市場において約2割のシェアを占めていると推測されます。日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の統計によれば、2025年3月末時点の国内法人口座数は4万5198口座であり、前年同期比で12%増加しています。
口座を開設している法人の属性を見ると、非上場の中小企業が大多数を占めています。具体的には、建設系や医療系の企業が余剰資金の一部を財務・運用の観点から暗号資産に割り当てるケースが目立ちます。一方で、直近1年のトレンドとしては、情報通信業(IT企業)の登録が最も多く、さらに「クリプト・トレジャリー」を掲げる上場企業の利用も増加傾向にあります。
国内の全口座数に占める法人口座の割合は2025年3月時点で約0.4%に留まっており、業界全体としては法人参入の余地が依然として大きい状況にあると見られます。
資産運用の目的変化と大口顧客の動向
法人が保有する暗号資産の種類はビットコイン(BTC)が主流ですが、次いでイーサリアム(ETH)への関心も高い状況です。特に上場企業においては、安全な保管を大前提としつつ、単なる長期保有に留まらない「運用」へのニーズが高まっています。これは、ステーキングなどを通じて利回りを追求する金融資産としての側面が重視され始めていることを示唆しています。
顧客層の構成については、1,000万円以上の取引や預託残高を対象とする「Coincheck Prime」層が、口座数全体に占める割合は小さいものの、預託残高全体のシェアでは大きな割合を占めています。過去の相場上昇期(2018年や2020〜21年)には口座開設の数そのものが大きく伸びましたが、足元では社数は限定的ながらも、財務戦略として本格的に取り組む大口法人の存在感が増しています。
税制対応サービスと法人参入の判断基準
法人による暗号資産保有のハードルとなっていた税制面については、環境整備が進んでいます。コインチェックが2024年5月から提供している「Coincheckアセットロック」は、保有する暗号資産の移転を一定期間制限することで、期末時価評価課税(期末時点の含み益に対して課税される仕組み)の適用除外を受けるためのサービスです。
同社によれば、このサービスは法人が問い合わせを行う一定のきっかけ(フック)にはなっていますが、法人口座数全体を劇的に押し上げる要因にはなっていないと分析されています。法人の参入判断は、税制やサービスの有無以上に、現在の相場環境において保有するメリットがあるかというシビアな財務判断に基づいている実態がうかがえます。実際に、相場上昇時には問い合わせが増加する一方で、下落時には引き合いが減少する傾向が見られます。
ポイント
- コインチェックの法人口座数が1万件を超え、国内シェアの約2割を占める規模に成長しています。
- 利用企業の中心は中小企業ですが、直近では財務戦略として暗号資産を活用する上場企業の参入が目立っています。
- ビットコインの長期保有だけでなく、イーサリアムなどを活用した「運用」へのニーズが拡大しています。
- 期末含み益課税を回避するサービスが提供されていますが、企業の最終的な参入判断は相場環境や財務上のメリットに左右される傾向があります。
- 国内の法人口座比率は全体の0.4%に過ぎず、法人向け市場は今後さらなる発展の可能性を秘めています。