暗号資産交換業大手のコインベースが、米通貨監督庁(OCC)からナショナル・トラスト・チャーター(連邦信託銀行免許)の条件付き承認を受けました。一方で、フランスのカンヌで開催されたイーサリアム最大のカンファレンス「EthCC」では、分散化を重んじる開発者と企業主導の勢力との間で「アイデンティティ危機」とも呼べる対立が表面化しています。市場全体がストレスにさらされる中、規制対応とコミュニティの理念という二つの側面で大きな転換点を迎えています。
コインベースが連邦規制下での信託業務へ前進
米通貨監督庁(OCC)は2026年4月2日、コインベースに対し「コインベース・ナショナル・トラスト・カンパニー(Coinbase National Trust Company)」の設立を条件付きで承認しました。これにより、同社は連邦規制当局の直接の監督下で、デジタル資産の保管(カストディ)業務や市場インフラの構築を全国一律の基準で展開することが可能になります。
今回の承認は条件付きであり、本格的な運用開始までにはコンプライアンス体制の整備やリスク管理フレームワークの構築、OCCによる事前審査など、数ヶ月にわたる要件を満たす必要があります。なお、この免許は信託業務に特化したものであり、商業銀行のように個人からの預金を受け入れたり、支払準備金制度(預け入れられた資金の一部を貸し出しに回す仕組み)を用いた業務を行ったりすることは認められていません。
これまで州ごとに異なっていた規制ライセンスが連邦レベルで統一されることで、機関投資家からの信頼向上や、将来的な決済サービスへの展開に向けた基盤となることが期待されています。
EthCCで露呈したイーサリアムの「アイデンティティ危機」
3月30日から4月2日にかけてカンヌで開催されたイーサリアム・コミュニティ・カンファレンス(EthCC)では、エコシステム内の深刻な価値観の乖離が浮き彫りとなりました。
現場では、検閲耐性やオープンソース、プライバシー、セキュリティを重視する「サイファーパンク(暗号技術による社会変革を目指す層)」のグループと、ビジネス利用や効率性を追求する「コーポレート(企業層)」のグループが、まるで別々のカンファレンスに参加しているかのような分断が見られたと報告されています。
イーサリアム財団は3月中旬、検閲耐性、オープンソース、プライバシー、セキュリティの頭文字を取った「CROPS」という指針を再確認する声明を出していましたが、利便性のためにこれらの原則を妥協すべきではないとする理念派と、実社会への普及を優先する実務派の間で、今後の方向性を巡る議論が続いています。
市場のストレスとビットコイン企業の動向
デジタル資産の財務(トレジャリー)管理が「深刻なストレス」に直面しているとの指摘がある中、一部のビットコイン関連企業は依然として買い増しを継続していると報じられています。
背景には、米国とイランの紛争による市場のボラティリティ(価格変動)の高まりがあると見られます。イーサリアムの価格が過去最高値から大幅に下落し、ビットコインも一時7万ドルを割り込むなど不安定な相場環境にありますが、特定の企業はこれを好機と捉え、長期的な保有資産を積み増す姿勢を崩していません。
ポイント
- コインベースが米OCCから連邦信託銀行の条件付き承認を得て、連邦レベルでの規制遵守を強化する姿勢を明確にしました。
- この免許により、州ごとのライセンス制度に依存せず、全国一律の基準で機関投資家向けカストディ業務を提供できるようになります。
- カンヌで開催されたEthCCでは、イーサリアムの根本原則(CROPS)を重視する層と、企業・商業利用を優先する層の対立が顕在化しました。
- 市場全体が地政学リスク等でストレス下にあるものの、戦略的にビットコインの買い増しを続ける企業の存在が確認されています。
- 規制の枠組みへの統合が進む一方で、Web3本来の分散化理念をどう維持するかが業界全体の課題となっています。