米財務長官スコット・ベセント氏、暗号資産規制法案「CLARITY法」の早期可決を要求

米国のスコット・ベセント財務長官は、暗号資産(仮想通貨)企業が国外へ流出している現状に警鐘を鳴らし、上院銀行委員会に対して「CLARITY法(Digital Asset Market Clarity Act)」の審議と早期可決を強く求めました。この動きは、トランプ政権が米国をデジタル資産のグローバルハブとして確立させるために、法的枠組みの整備を最優先事項としていることを示しています。明確なルールの不在が米国の競争力を損なっているとする、政府側の強い危機感が背景にあります。

企業の国外流出への懸念と議会への働きかけ

米財務長官スコット・ベセント氏、暗号資産規制法案「CLARITY法」の早期可決を要求

ベセント財務長官は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿や議会での証言を通じ、米国が明確な規制を整備できない場合、デジタル資産分野の高度な人材や資本が国外へ流出する動きが加速すると警告しました。同氏は、シンガポールやアブダビといった規制環境の整った地域に企業が拠点を移している現状を指摘し、米国がリーダーシップを維持するためには、現在の「執行による規制(明確なルールがないまま個別に摘発を行う手法)」を終わらせる必要があると主張しています。

CLARITY法(H.R.3633)は、2025年7月に下院を圧倒的な賛成多数で通過しましたが、現在は上院銀行委員会に留まっています。ベセント氏は、11月の中間選挙が近づくにつれて議会での超党派の協力が難しくなる可能性があるとして、5月までの法案成立を目指すよう議会に促しています。

CLARITY法が目指す規制の枠組みと管轄権の整理

CLARITY法は、米国内のデジタル資産市場における規制の重複と混乱を解消することを目的とした包括的な法案です。主な内容は以下の通りとされています。

  • 資産の分類と管轄権:デジタル資産を「デジタルコモディティ(商品)」と「投資契約資産(証券)」に明確に分類します。これにより、商品先物取引委員会(CFTC)がデジタルコモディティの現物市場を監督し、証券取引委員会(SEC)が証券とみなされる資産を監督するという、両機関の管轄境界を明確化します。
  • 市場構造の標準化:暗号資産取引所、カストディアン(資産保管業者)、ブローカーに対する連邦レベルの登録制度を創設し、顧客保護や開示に関する厳格な基準を設けます。
  • ステーブルコインの監督:決済用ステーブルコインの発行体に対する規制枠組みを構築し、金融システム全体の安定性を図ります。

長官は、先行して進められている「GENIUS法(ステーブルコインに関する法案)」に続く、不可欠なステップとしてCLARITY法を位置づけています。

業界への影響と今後の展望

ベセント長官のこの要請は、ブロックチェーン業界にとって制度的な安定をもたらす重要な転換点になると見られています。法案が成立すれば、これまで法的リスクを懸念して参入を控えていた年金基金や保険会社などの機関投資家が、数兆ドル規模の資本を市場に投入する可能性があるとされています。

上院銀行委員会のメンバーからは、4月末までに法案の中間案が検討されるとの見通しも示されています。法案が上院を通過し、トランプ大統領の署名を経て成立すれば、米国は「執行による規制」から「法律に基づく透明な規制」へと移行し、世界的なルールメーカーとしての地位を強化することになると期待されています。

ポイント

  • ベセント財務長官が上院に対し、暗号資産の市場構造を定める「CLARITY法」の早期審議と可決を強く求めました。
  • 規制の不透明さにより、米国からシンガポールやアブダビなどの規制優位な地域へ、人材と資本が流出していることに強い懸念を表明しています。
  • 同法案は、SECとCFTCの管轄を整理し、デジタル資産の分類(証券か商品か)を明確にすることで、業界に法的確実性をもたらすことを目指しています。
  • 2025年7月に下院を通過済みの同法案について、中間選挙前の政治的な空白期間を避けるため、2026年5月までの成立が目標とされています。
  • 法案の成立は、法的リスクを軽減し、機関投資家による大規模な資本流入を促進する可能性があるとして注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta