2026年3月19日に開催された「N.Avenue club Summit」において、国内の金融・IT大手4社がブロックチェーンを活用した最新の取り組みを発表しました。トークン化預金やセキュリティトークン(ブロックチェーン等のデジタル技術を用いて発行される証券)の具体的事例が示され、日本の金融インフラをオンチェーン化(ブロックチェーン上で管理・運用すること)する動きが加速しています。これらの取り組みは、決済の即時性向上やコスト削減、さらにはグローバルな資産流動性の確保を目指すものであり、Web3ビジネスの社会実装における重要な一歩とされています。
トークン化預金とセキュリティトークンによる実用化の進展
国内の金融機関やIT企業は、既存の銀行システムや証券取引の仕組みをブロックチェーンへ移行させる具体的なフェーズに入っています。
株式会社ディーカレットDCPは、銀行預金をデジタル記録とする「トークン化預金」のプラットフォームを構築しています。この基盤は、銀行がトークンを発行する層とユースケースを適用する層の2層構造になっており、異なる銀行間での相互運用性を確保している点が特徴です。具体的なユースケースとして、不動産管理会社のデータと連携した家賃の自動収納システムを年内にもローンチする計画です。また、シンガポールを拠点とする銀行間決済ネットワークのPartior(パルティオ)や、米国発のトークン化アセットリーダーであるOndo Finance(オンドファイナンス)との提携を通じ、24時間365日のリアルタイム決済やグローバルな決済網の構築も進めています。
証券領域では、株式会社大和証券グループ本社が不動産セキュリティトークン(ST)の拡大を報告しました。日本の不動産ST市場は発行開始から約5年で3000億円規模に成長しており、同社は2025年度に大型案件を含む4件の組成を実施しました。現在は、証券会社が保有する振替口座簿とブロックチェーンを同期させる実験などを通じ、株式や投資信託といった伝統的な有価証券市場のオンチェーン化を次の目標として掲げています。
既存金融とブロックチェーンを繋ぐインフラと法規制の課題
ブロックチェーンを社会実装する上では、既存の金融システムとの整合性や法規制への対応が重要なテーマとなっています。
株式会社BOOSTRYは、有価証券という法的裏付けのある資産を扱うため、既存の金融システムとブロックチェーンレイヤーを繋ぐハブとなるシステムを提供しています。同社が主導するコンソーシアム型ブロックチェーン「ibet for Fin」は国内有数の規模となっており、今後はステーブルコイン(法定通貨と価値が連動するよう設計された暗号資産)との連動や国債のトークン化を見据えています。また、株式会社電通総研は、英国の主要銀行による実証実験にインフラを提供しているQuant Network(クアント・ネットワーク)社と提携しました。プログラマブル決済(プログラムによって自動実行される決済)の導入により、決済基盤の刷新を目指しています。
こうした動きに対し、専門家からは戦略的なアドバイスが寄せられました。法規制の面では、預金トークンは銀行預金であるため利息が付けられる一方で、資金決済法上の電子決済手段(ステーブルコイン)は利息が付けられないといった実務的な差異が指摘されています。また、グローバル展開においては、イーサリアムの標準規格(ERC)と既存金融の国際標準(ISO)をいかに擦り合わせるかが重要視されています。ビジネス戦略としては、既存のインフラ運営者と対立するのではなく、まずは具体的なユースケースを作り、仲間を増やしながら段階的に進めるアプローチが有効であるとされています。
ポイント
- ディーカレットDCPが、トークン化預金を用いた家賃の自動収納システムを年内にローンチ予定であるなど、生活に密着した実装が進んでいます。
- 大和証券グループ本社が、不動産ST市場の成長を背景に、伝統的な株式や投資信託のオンチェーン化を次の重点課題としています。
- BOOSTRYや電通総研が、既存の金融システムとブロックチェーンを安全に繋ぐためのインフラ提供やプログラマブル決済の導入を推進しています。
- 専門家により、日本においてはリテール向けよりもB2B(法人間)の決済や海外送金において、ブロックチェーンのポテンシャルが最も高いとの見解が示されました。
- 法規制や国際標準規格への対応が、今後のグローバル展開や事業構造の構築において極めて重要な要素となります。