ソニーグループ(以下、ソニー)は、独自のイーサリアムレイヤー2「Soneium(ソニューム)」を軸としたブロックチェーン事業を、実験段階から事業化段階へと移行させています。同社は音楽やアニメ、ゲームといった豊富な知的財産(IP)をオンチェーン化することを目指し、法的枠組みの整備やインフラ構築を進めています。この取り組みは、クリエイターやコミュニティを支援するエンターテインメント・エコシステムの構築を目的としており、Web3業界における大手企業の本格参入として注目されます。
IPのオンチェーン化に向けた制度設計と組織改編
ソニーは、これまでブロックチェーン領域を担当していた「先端インフラ事業探索部門」を「オンチェーン事業戦略部門」へと名称変更しました。これは、ブロックチェーンを単なる先端技術の研究対象として扱う段階から、事業戦略の中核に据える段階へ移行したことを示唆しています。
戦略の柱となるのは、ソニーが保有する音楽、アニメ、ゲーム、映画、キャラクター、スポーツ関連の権利などの多岐にわたるIPのオンチェーン化です。現在は、各分野の法的枠組みや規制面を整理しながら、Soneium上でオンチェーンIPインフラを構築するための制度設計が進められています。大手企業が制度面まで踏み込み、IPの本格的なオンチェーン展開を模索する事例は、グローバルでも先駆的な動きといえます。
Soneiumを中心とした包括的なエコシステム構築
ソニーのブロックチェーン事業は、基盤となる「Soneium」に加え、複数の要素を組み合わせることで包括的な体制を整えています。
- インフラ:イーサリアムレイヤー2(メインのブロックチェーンの処理を補完し、高速化や低コスト化を図るネットワーク)「Soneium」の運営。
- 開発者支援:アプリ開発者向けインキュベーションプログラム「SPARK」の提供。
- ゲートウェイ:暗号資産取引所「S.BLOX」による、法定通貨と暗号資産をつなぐ機能の提供。
- 投資機能:2000件以上の応募から選定された23プロジェクトへの投資。
さらに、外部資金を活用するためのGP/LP型ファンド(投資事業組合形式のファンド)の設立準備も進められています。これにより、ネットワーク運営にとどまらず、投資機能を通じてSoneium上のアプリやエンターテインメント領域のエコシステム形成を加速させる方針です。
技術環境の変化への対応
ソニーは、ブロックチェーン技術だけでなく、AGI(汎用人工知能)、フィジカルAI、量子コンピューティングといった新技術の変化も視野に入れています。同社でオンチェーン領域を統括する波多野和人氏は、こうした技術環境の変化を踏まえた対応が必要であるとの認識を示しています。
現在は、実際の事業化に向けて「キラーユースケース」を示すことが重要視されており、アイドルイベントの公式アプリとの連携や、ステーブルコインの発行、ファン活動の基盤構築など、具体的な活用事例の積み上げが進んでいます。
ポイント
- 組織改編により、ブロックチェーンを先端技術の研究から「事業戦略の中核」へと位置付けを変更しました。
- 音楽やアニメなどの豊富なIPをオンチェーン化するため、法的・規制面の整理を含む制度設計に本格的に着手しています。
- レイヤー2「Soneium」を基盤に、取引所、開発者支援、投資ファンドを組み合わせた独自の多角的なエコシステムを形成しています。
- 2000件超の応募から厳選されたプロジェクトへの投資に加え、外部資金を取り込むファンド設立により、事業の拡大を図る計画です。
- ブロックチェーンのみならず、AIや量子コンピューティングといった次世代技術との融合も視野に入れた長期的な戦略が示されています。