暗号資産市場でビットコインの占有率(ドミナンス)が約半年ぶりに60%を超え、投資家がアルトコインからビットコインへ資金を移す動きが鮮明になっています。背景には、テザー社による大規模な資産凍結や、米大手取引所に対する法的措置など、規制当局による監視の強化があります。業界団体は法整備を求めて活動を強めていますが、法案成立の不透明感が市場の重石となっていると見られます。
規制リスクを背景としたビットコインへの資金集中
ビットコイン・ドミナンスは2026年4月23日時点で60.7%に達し、2025年11月以来の高水準を記録しました。これは、相次ぐ規制関連のニュースを受けて、投資家がリスクの高いアルトコインへの露出を減らし、相対的に法的位置づけが明確なビットコインへ資金を退避させているためと見られます。
ビットコイン・ドミナンスの上昇は4週間にわたって続いており、特に直近の1週間でその傾向が強まりました。背景には、多くのアルトコインが分類上のリスクを抱える一方で、ビットコインは国家レベルでの保有が進んでいるという事実があります。2025年11月時点のデータでは、少なくとも10カ国が合計51万8,526BTC(約404億7,000万ドル相当)を保有しており、供給量全体の2.47%を占めています。こうした状況から、規制や地政学リスクが高まる局面において、ビットコインが「安全資産」としての魅力を強めていることが示されています。
相次ぐ法的措置とテザー社による資産凍結の影響
市場の不透明感を強めた主な要因は、法執行機関と連携した規制の動きと、主要な暗号資産事業者をめぐる法的トラブルです。
ステーブルコイン(法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産)発行体のテザー(Tether)社は、米法執行機関および米財務省外国資産管理局(OFAC)と連携し、不正活動に関連する3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結したと発表しました。同社のパオロ・アルドイーノCEOは、USDTが不正活動の逃げ場ではないことを強調しており、これまでに凍結された資産は累計で44億ドルを超えています。
また、米国の大手取引所やプロジェクトも法的問題に直面しています。
- ニューヨーク州司法長官は、コインベース(Coinbase)とジェミニ(Gemini)の予測市場サービスが無認可の賭博契約に類似しているとして提訴しました。
- ジャスティン・サン氏は、ドナルド・トランプ氏に関連する暗号資産事業者ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)に対し、数千万ドル相当のトークンを不当に凍結したとして訴訟を起こしました。
これら一連の動きにより、USDTの時価総額が7%減少して1,888億ドルとなるなど、市場心理の悪化を招いています。
CLARITY法案の行方と業界のロビー活動
今後の規制環境を左右する焦点として、デジタル資産の明確な枠組みを定める「CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act)」の動向が注目されています。
4月23日には、100を超える暗号資産関連企業や団体が米上院銀行委員会に対し、同法案の審議を進めるよう求める書簡を送付しました。しかし、伝統的な銀行業界からは、ステーブルコインへの利息支払いが銀行預金の流出を招き、融資能力を低下させるとして強い反対の声が上がっています。
予測市場「ポリマーケット(Polymarket)」における、同法案が2026年中に成立する確率は、4月18日時点の65%から、4月23日には43%まで低下しました。米中間選挙が近づき立法日程が制限されるなか、当局による法的措置の強化や党派間の交渉難航が、法案成立の妨げになると懸念されています。
ポイント
- ビットコイン・ドミナンスが60.7%に上昇し、規制リスクを背景にアルトコインからビットコインへの資金シフトが加速しています。
- テザー社が不正活動に関連する3億4,400万ドル相当のUSDTを凍結し、規制当局との連携姿勢を改めて示しました。
- 米大手取引所(コインベース、ジェミニ)やトランプ氏関連プロジェクトに対する法的措置が相次ぎ、市場の弱気心理を強めています。
- 規制の明確化を目指すCLARITY法案の年内成立確率が予測市場で低下しており、法整備の遅れが懸念されています。
- ビットコインは国家による保有が進んでおり、規制の不透明感が増すなかで相対的な安全資産として機能しています。