国際決済銀行が暗号資産大手による「シャドーバンキング」のリスクを警告

国際決済銀行(BIS)は、暗号資産(仮想通貨)業界の大手プラットフォームが、適切な規制を受けずに銀行のような役割を果たしている現状に警鐘を鳴らしました。これらの企業は「シャドーバンキング(影の銀行)」として機能しており、金融の安定性を損なうリスクを抱えていると指摘されています。既存の銀行に適用されるような慎重な規制が欠如していることが、業界全体の課題として浮き彫りになっています。

規制の枠組みを欠いた多機能な仲介者の台頭

国際決済銀行が暗号資産大手による「シャドーバンキング」のリスクを警告

BIS(スイスのバーゼルに本部を置く、中央銀行間の協力を推進する国際機関)は、暗号資産の大手プラットフォームが「ルールブック(規制の枠組み)」なしに銀行のように振る舞っているとする報告書を公開しました。

報告書では、これらの企業を「多機能暗号資産仲介者(MCI)」と定義しています。本来、伝統的な金融システムでは銀行、証券会社、取引所といった役割は分離されていますが、暗号資産の大手プラットフォームはこれらを一つの組織内で統合して提供しています。このような構造は効率性を高める一方で、リスクが集中しやすく、透明性が低いことが問題視されています。特に、銀行が遵守すべき自己資本比率の維持や流動性の確保といった「プルデンシャル規制(慎重な監督規制)」が適用されていない点が、大きなリスク要因として挙げられています。

「Earn」製品に潜む無担保貸付のリスク

BISは、多くのプラットフォームが提供している「Earn」や高利回りの貯蓄型製品について、その実態を詳しく分析しています。これらの製品は一般消費者に対して「受動的な収入を得るためのツール」として宣伝されていますが、その構造は銀行の預金とは根本的に異なると指摘されています。

報告書によると、これらの製品は実質的にプラットフォームに対する「無担保貸付」に近い性質を持っています。ユーザーは資産の管理権をプラットフォームに委ね、プラットフォーム側はその資産をレバレッジ取引や自己勘定取引、貸付などに再利用しています。伝統的な銀行預金のような預金保険制度が存在しないため、プラットフォームが経営危機に陥った場合、ユーザーは資産を回収できない直接的なリスクにさらされます。BISは過去のCelsius NetworkやFTXの破綻を例に挙げ、こうした構造的な脆弱性が依然として業界内に残っていると警告しています。

金融システム全体の安定性への影響

BISは、これらの活動が金融システム全体に波及する可能性についても言及しています。2025年10月に発生したとされる、レバレッジポジションの強制清算による約190億ドルの市場消失(フラッシュクラッシュ)を例に引き、暗号資産市場における高いレバレッジと流動性の低さが、いかに急速に連鎖的なリスクを引き起こすかを説明しています。

現在のところ、暗号資産プラットフォームと伝統的な金融機関との直接的なつながりは限定的ですが、ステーブルコインの発行体や銀行との連携が深まれば、暗号資産市場の混乱が既存の金融システムへ伝播する「波及経路」となる可能性があります。BISは、消費者保護を強化し、暗号資産特有のリスクに対応した標準的な規制ルールを構築することが急務であるとの見解を示しています。

ポイント

  • BISが暗号資産の大手プラットフォームを、規制を回避して銀行業務を行う「シャドーバンキング」のリスクとして特定しました。
  • 取引、貸付、資産運用を一つの企業で完結させる「多機能仲介者」の構造が、リスクの集中を招いていると指摘されています。
  • 高利回りをうたう「Earn」製品は、預金保護のない実質的な無担保貸付であり、ユーザーが損失を直接被る可能性が高いとされています。
  • 2025年10月の市場混乱を教訓に、高いレバレッジが金融システム全体を不安定にする可能性が懸念されています。
  • 伝統的な銀行と同等の慎重な監督規制(プルデンシャル規制)の導入が、今後の規制議論の焦点になると見られます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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