米テネシー州において、州全域で暗号資産(仮想通貨)ATMの設置および運営を全面的に禁止する法律が成立しました。これはインディアナ州に続き、米国で2例目の全面禁止措置となります。近年、暗号資産を悪用した巧妙な詐欺被害が拡大しており、消費者保護を目的とした規制強化の動きが全米で顕著になっています。
法律の概要と対象範囲
テネシー州のビル・リー知事は、2026年4月13日に下院法案2505号(HB 2505)に署名しました。同法案は上下両院を全会一致で通過しており、2026年7月1日から施行される予定です。
この法律の特筆すべき点は、暗号資産ATMの運営会社だけでなく、その設置場所を提供している店舗や施設の所有者も規制の対象となることです。ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、ショッピングモールなどの事業者は、自らの敷地内に機器を設置させている場合、法的責任を問われる可能性があります。
違反した場合は「クラスA」の軽犯罪に問われ、最大1年の禁錮刑および2500ドル(約40万円、1ドル=155円換算)の罰金が科される可能性があるとされています。
規制強化の背景にある詐欺の手口
今回の全面禁止の背景には、暗号資産ATM(仮想通貨キオスク)が国際的な詐欺グループによる資金洗浄や詐取金の回収手段として悪用されている実態があります。
典型的な手口は、警察官や政府職員を装った詐欺師が、被害者に「逮捕される可能性がある」あるいは「架空の債務を支払う必要がある」と偽り、現金を暗号資産ATMで交換させて指定のウォレットに送金させるものです。
このプロセスでは被害者が自ら操作を行うため、資金の追跡や回収が極めて困難になります。暗号資産の送金は一度実行されると取り消しが不可能な場合が多く、詐欺グループにとって利用しやすい仕組みとなっていることが、州政府による厳しい決断を後押ししました。
Web3業界への影響と今後の展望
米国では現在、多くの州がライセンス制度や取引制限などの規則を導入していますが、州全域での全面禁止に踏み切った例はまだ少ないのが現状です。
しかし、インディアナ州に続きテネシー州がインフラそのものを排除する方針を打ち出したことは、今後の州レベルでの規制トレンドに影響を与える可能性があります。物理的なアクセスポイントが制限されることで、現金ベースで暗号資産を利用するユーザーの利便性が低下する一方、業界全体にはより高いコンプライアンスと消費者保護への取り組みが求められるようになると見られます。
ポイント
- テネシー州がインディアナ州に続き、全米で2番目となる暗号資産ATMの全面禁止法を成立させました。
- 法律は2026年7月1日に施行され、運営者のみならず設置場所の提供者も処罰の対象となります。
- 公的機関を装った詐欺グループによる、追跡・回収が困難な不正送金被害の抑制が主目的です。
- 米国の他州でも規制を巡る議論が活発化しており、管理から排除へと舵を切る動きとして注目されます。