AIエージェントが自律的に金融取引を行う「エージェンティック・ファイナンス(Agentic Finance)」が、機関投資家の間で急速に普及しています。デジタル資産カストディ(保管)大手のBitGoでCOOを務めるジョディ・メトラー氏は、AIエージェントがユーザーや企業に代わって取引や決済を直接実行する現状を踏まえ、制度化された金融において不可欠となる4つの管理体制を提示しました。
AIエージェントによる自律的な取引執行の加速
2026年に入り、AIエージェントの役割は従来のレポート作成やアイデアの提示から、取引の執行、支払いの決済、トランザクションの実施へと大きく進化しています。調査によると、金融機関の約65%がAIを積極的に活用しており、そのうち21%がすでにAIエージェントを導入しているとされています。
AIエージェントは、従来のルールベースのシステムでは困難だった200ミリ秒未満でのルーティング判断や、リアルタイムの信号に基づいた決済リトライの調整などを自律的に行うことが可能です。こうした技術は、承認率の向上を通じて直接的な収益改善に寄与すると期待されています。
機関投資家に求められる4つの管理指針
メトラー氏は、AIエージェントによる取引が「無法地帯」となり金融危機を招くことを防ぐため、機関投資家レベルの運用には以下の4つの管理体制(コントロール)が必要であると強調しています。
1. アイデンティティ(Identity)
システム上で活動する各エージェントの背後に、誰が、あるいは何が存在しているのかを明確に特定できる体制。
2. 権限(Permissions)
各エージェントがアクセス、承認、実行できる範囲に対して、厳格な制限を設けること。
3. ポリシーと承認ロジック(Policy and Approval Logic)
どのアクションを自律的に実行させ、どのアクションに人間の承認(サインオフ)を必要とするかを定義するルール。
4. 監査可能性(Auditability)
問題が発生した際に、機関や規制当局が経緯を正確に把握できるよう、エージェントのすべての決定を追跡可能な記録として残すこと。
安全なAI活用のためのインフラ整備
BitGoは、AIエージェントや開発者が同社のインフラを利用して安全に構築を行えるよう、MPC(マルチ・パーティ・コンピュテーション:秘密計算技術の一種)サーバーを公開しました。これにより、セキュリティと規制遵守を両立した形でのエージェント活用を支援しています。
メトラー氏は、AIが金融インフラにもたらす可能性について「慎重な楽観主義」を持って注視すべきであるとし、技術革新を歓迎しつつも、強固な管理体制が普及の前提条件であるとの見解を示しています。
ポイント
- AIエージェントが自律的に取引や決済を行う「エージェンティック・ファイナンス」が2026年に急速に普及しています。
- BitGoのCOOは、無秩序な拡大によるリスクを回避するため、機関投資家向けの4つの管理指針を提言しました。
- 管理指針には、アイデンティティの特定、権限の制限、承認ルールの策定、監査可能性の確保が含まれます。
- AIエージェントは、従来のシステムを超える処理速度と収益向上の可能性を持つ一方で、厳格なガバナンスが求められます。
- BitGoはMPCサーバーの提供などを通じ、AIエージェントが安全に活動できるインフラ整備を進めています。