Linux Foundationは2026年4月2日、ステーブルコインを用いたエージェント決済のオープンプロトコルを推進するx402 Foundationの設立を発表しました。CoinbaseやStripe、Google、Visaなど主要な22社が参加し、AIエージェントが自律的にマイクロペイメント(小規模決済)を行える環境の整備を進めます。この取り組みは、従来のAPI利用における契約や決済の摩擦を解消し、AI主導の経済圏を支える重要なインフラになると見られています。
22社が参画する中立的なガバナンス体制の構築
x402 Foundationは、Linux Foundation傘下の非営利団体として、ニューヨークで開催されたMCP Dev Summit North Americaにおいて正式に発足しました。初期開発を主導したCoinbase、Cloudflare、Stripeに加え、Google、Microsoft、Amazon Web Servicesといったクラウド事業者、Mastercard、Visa、American Expressなどの決済ネットワーク、そしてSolana Foundationなど計22社が発足メンバーに名を連ねています。
プロトコルの運営はApache 2.0ライセンスのもとで行われ、特定企業による支配を避けるための中立的なガバナンスが敷かれます。これは、初期開発者であり決済チェーン(Base)の運営者でもあるCoinbaseなどの特定企業からプロトコルを切り離すことで、競合他社を含む多様な組織がx402を利用しやすくする意図があると推測されます。
HTTP 402を活用したマイクロペイメントの技術的特徴
x402プロトコルの名称は、ウェブ上の課金を想定して以前から予約されていたHTTPステータスコード「402 Payment Required」に由来します。従来のAPI利用では、事前に契約を締結し、APIキーを取得する手間が必要でしたが、x402ではこれらの手続きを不要にすることを目指しています。
具体的な決済フローでは、AIエージェントが有料リソースにアクセスした際、サーバーから返される決済要件に対し、エージェントが署名付きの支払い情報を再送することで決済が確定します。決済の代行はファシリテーターと呼ばれる中継ノード(Coinbase Developer PlatformやCloudflareなど)が担うため、クライアントとサーバーの双方がウォレットの秘密鍵管理やガス代(ネットワーク手数料)の支払いを意識せずに取引を完結できる設計となっています。
対応ブロックチェーンは、Ethereum互換のEVM系(Base、Arbitrumなど)とSolanaの両方に対応しています。現状の利用状況では、取引件数の約85パーセントがCoinbaseのレイヤー2であるBaseで処理されている一方、取引金額の約65パーセントはSolanaが占めているという特徴があります。
AIエージェント経済圏の現状と今後のプロトコル連携
2026年4月19日には、x402対応サービスを横断的に発見し、即座に統合できるマーケットプレイス「Agentic.Market」がCoinbaseより公開されました。推論やデータ、検索、インフラなどの分野で、AWS Lambda、Google Flights、X(旧Twitter)といったサービスの参加が確認されています。
Foundation発足時点での累計取引件数は約1億6,500万件に達しており、平均取引額は約0.31ドルと非常に少額です。これは、x402がAIエージェントによる一回数セント単位の細かな呼び出しに適した、実用的なマイクロペイメント基盤として機能していることを示しています。
また、AIエージェントの活動を支えるプロトコルは多層化しており、x402はその中で価値移動(決済)を担当します。ツール接続のMCP(Model Context Protocol)、権限管理のAP2(Agent Payments Protocol)、注文手続きのACP(Agentic Commerce Protocol)など、他の標準規格と組み合わせて利用されることが前提となっており、各社が連携してAI経済圏の構築を急いでいます。
ポイント
- Linux Foundationのもとで中立的な運営体制が整ったことにより、特定の企業に依存しない業界標準としての普及が期待されます。
- APIキーや事前契約を不要にする設計は、AIエージェントが自律的に新しいサービスを発見し、即座に利用を開始する際の大きな摩擦を解消します。
- 決済、クラウド、カードネットワークの主要企業が参加しており、既存の金融インフラとブロックチェーン技術が高度に融合する可能性があります。
- 平均取引額0.31ドルという実績は、これまで困難だった1ドル未満のマイクロペイメントが、AIエージェントの領域で実用化されていることを裏付けています。
- 他のAI関連プロトコル(MCP、AP2、ACP)と補完関係にあり、AIエージェントが自律的に経済活動を行うための多層的な標準規格の一つとして位置づけられています。