予測市場の精度は少数の熟練者が支える構造、ロンドン・ビジネス・スクールらの研究で判明

ロンドン・ビジネス・スクールとイェール大学の研究チームは、予測市場の正確性が「群衆の知恵(多くの参加者の知恵を集約する考え方)」ではなく、わずか約3%の熟練トレーダーによって維持されているとする論文を発表しました。最大手プラットフォームであるPolymarket(ポリマーケット)の膨大な取引データを分析した結果、大多数の参加者は価格形成に寄与しておらず、少数の情報通が価格発見を主導している実態が明らかになりました。予測市場が月間取引高150億ドル(約2兆4000億円)を超える規模に成長する中で、その信頼性の源泉を再定義する重要な知見となっています。

参加者の3%が価格発見を主導する市場構造

予測市場の精度は少数の熟練者が支える構造、ロンドン・ビジネス・スクールらの研究で判明

研究チームは、2023年から2025年にかけてPolymarketで取引を行った172万件のアカウントデータを分析しました。統計的な検証の結果、参加者は5つのグループに分類され、そのうち真にスキルを持つ「Skilled Winners」は全体の3.14%に過ぎないことが判明しました。

この少数の熟練トレーダーが将来の価格変動や最終結果を予測する能力を持ち、市場における価格発見の大部分を担っているとされています。一方で、参加者の約61%は「Unlucky Losers(不運な敗者)」に分類されており、大多数のトレーダーは取引高の大半を生み出しているものの、市場の正確性を高める役割ではなく、少数の情報通の利益となる資金を提供する役割を果たしている実態が浮き彫りになりました。論文では、大多数は正確性に寄与するのではなく、正確性に資金を提供していると指摘されています。

インサイダー取引の影響と市場の信頼性

本研究では、予測市場におけるインサイダー取引(内部情報に基づいた取引)の事例についても分析が行われました。具体的には、2026年1月に米軍がベネズエラのニコラス・マドゥロ元大統領を拘束した際、事前に大規模なポジションを構築し、合計63万ドル以上の利益を得た3つの不審なアカウントが特定されています。

分析の結果、こうしたインサイダーは特定の個別イベントにおいては価格に大きな影響を及ぼすものの、市場全体の体系的な価格発見を支える要因にはなっていないと結論付けられています。予測市場の運営側でも対策は進んでおり、例えばKalshi(カルシ:米国の規制下にある予測市場)では、議員選候補者による自己賭けを処分するなど、インサイダー対策を強化する動きが見られます。

急成長する市場と日本国内の動向

予測市場は急速に拡大しており、月間取引高は150億ドルを超える規模に達しています。この成長を背景に、日本国内でも関連する動きが活発化しています。2025年11月には、gumiが日本版の予測市場サービスの事業化を検討していることが報じられました。

また、予測市場の基盤技術も進化しており、Kalshiがリアルタイムデータ連携のためにPyth(価格データを提供するオラクルネットワーク)を採用するなど、価格決定の精度を高める取り組みが続いています。今回の研究結果は、予測市場が「少数の情報通の知恵」を反映する場所であることを示しており、今後のビジネス展開や市場の信頼性を評価する上での重要な指標となると見られます。

ポイント

予測市場の精度は、参加者全体の約3%にあたる熟練トレーダーのスキルに依存している。

大多数の参加者は価格の正確性には寄与しておらず、結果として少数の情報通に利益をもたらす資金提供の役割を担っている。

インサイダー取引は特定のイベントで価格を歪める可能性があるが、市場全体の体系的な精度を支える基盤ではない。

月間取引高が150億ドルを超え、日本企業のgumiが事業化を検討するなど、予測市場のビジネス上の重要性が高まっている。

市場の信頼性を維持するため、Kalshiなどのプラットフォームではインサイダー対策やリアルタイムデータの活用が強化されている。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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