証券トークン化プラットフォームのSecuritize(セキュリタイズ)は、証券名義書換代理人(株主名簿の管理や所有権移転を担う機関)で世界最大手のComputershare(コンピューターシェア)と提携しました。この提携により、上場企業は従来の株式と並行して、ブロックチェーン上で発行される「発行体スポンサー型トークン(IST)」を運用できるようになります。米国を代表する企業の株式がネイティブな形でオンチェーン化される道が開かれたことで、証券市場のデジタル化が大きく進展すると見られています。
S&P500企業の約60%をカバーする広範な影響力
今回の提携が注目される最大の理由は、Computershareが持つ圧倒的な市場シェアにあります。同社はS&P500指数の構成企業の約60%において株式管理を担っており、その管理対象にはApple(アップル)、Tesla(テスラ)、Microsoft(マイクロソフト)、Nvidia(エヌビディア)、Disney(ディズニー)、Coinbase(コインベース)といった主要企業が含まれています。
Securitizeの創業者兼CEOであるカルロス・ドミンゴ氏によると、同社はComputershareのトークン化パートナーとして、米国内外の株式をネイティブにオンチェーン化していく計画です。名義書換代理人は「誰が実際に株式を所有しているか」を公式に記録する役割を持つため、同社との提携は、ブロックチェーン上のデータが実際の株式所有権と直結することを意味します。
既存の権利を維持する「発行体スポンサー型トークン(IST)」の仕組み
今回導入される「発行体スポンサー型トークン(IST)」は、既存のデリバティブ(金融派生商品)や、株式を裏付けとしたラップ商品とは本質的に異なります。ISTはトークン形式の「実際の株式」として設計されており、既存の規制枠組みに適合しながら、従来の株式と同じ権利や経済的価値を保持することを目指しています。
投資家は、従来の証券システムを通じて株式を保有し続けるか、あるいはデジタルウォレットでオンチェーンの株式として保有するかを選択できるようになります。オンチェーン化された株式は、同じ権利を維持したまま、取引や借入などのオンチェーンサービスに利用可能となります。
証券市場の効率化とDeFi活用への期待
株式のオンチェーン化により、従来の証券市場では難しかった複数の機能が実現される見込みです。主な利点として、24時間365日の取引、1円単位などの少額単位での所有、そしてDeFi(分散型金融)での活用が挙げられます。
Securitizeはすでに、ナスダック上場企業であるCurrenc Group Inc.(カレント・グループ)の株式トークン化にも関わっており、2026年3月にはニューヨーク証券取引所(NYSE)とも24時間対応のトークン化証券プラットフォーム開発で提携を発表しています。今回のComputershareとの提携は、これらの動きを補完し、米国株全体のオンチェーン化を加速させる重要なステップになると見られます。
ポイント
- 世界最大の証券名義書換代理人ComputershareとSecuritizeが、株式トークン化に関する契約を締結しました。
- Computershareが管理するS&P500企業の約60%(AppleやTeslaなど)が、オンチェーンで株式を発行できる環境が整います。
- 発行されるトークン(IST)は、デリバティブではなく「実際の株式」として設計され、既存の株主権が維持されます。
- 投資家は従来の保有形態かデジタルウォレットでの保有かを選択でき、24時間取引やDeFiでの活用が可能になります。
- ニューヨーク証券取引所との提携など、Securitizeが進める証券市場のデジタル化に向けた取り組みの一環として位置づけられます。