TelegramのCEOであるパベル・デュロフ氏は、TON(The Open Network)ブロックチェーン向けの統合開発ツールチェーン「Acton」を公開しました。このツールチェーンは、スマートコントラクトの開発効率を従来の10倍に向上させるとされており、特にAI(人工知能)を活用したワークフローに最適化されている点が特徴です。断片化されていた開発環境を一本化することで、TONエコシステムへの新規参入障壁を下げ、開発サイクルの劇的な加速を目指しています。
開発プロセスを統合し効率を10倍に向上
Actonは、スマートコントラクトの作成、テスト、デバッグ、dApp(分散型アプリ)への統合、デプロイ、および検証までを単一のコマンドラインインターフェース(CLI)で完結させるツールチェーンです。
これまでTONでの開発には複数の異なるツールを使い分ける必要がありましたが、Actonによってこれらが一つのワークフローに統合されました。デュロフ氏によれば、この統合により開発スピードは10倍に向上し、特にテストの実行速度については従来比で約50倍の高速化が実現されているとのことです。Rust言語をベースに構築されており、ローカル環境で実際のブロックチェーン条件をシミュレートする機能も備えています。
AIエージェントによる自動開発への対応
Actonの最大の特徴の一つは、設計段階からAIの活用を前提とした「AI-ready(AI対応)」な設計になっていることです。
具体的には、CodexやClaudeといったAIコーディングエージェント向けの専用ガイドが含まれており、AIがスマートコントラクトを容易に構築・検証できる体制が整えられています。開発者は用意されたテンプレートを選択し、AIを活用してそれらを自律的なオンチェーン・ロボットへと変換することが可能です。これにより、手動のトリガーを介さずに多段階のアクションを実行するプログラムを、より迅速に構築できるようになると期待されています。
エコシステム拡大に向けた技術的背景
今回のActonのリリースは、2025年7月に導入された新しいスマートコントラクト言語「Tolk」を基盤としています。TolkはTONの仮想マシン向けに最適化された言語であり、ガス代の削減にも寄与しています。
TONエコシステムは、2026年第1四半期時点で1日のトランザクション数が100万件を超え、預かり資産総額(TVL)も10億ドルを突破するなど急成長を遂げています。Actonの導入により、複雑な開発スタックが簡素化されるため、今後さらに多様なアプリケーションやトークン(Jettons)の展開が加速する可能性があります。
ポイント
- Actonの導入により、TONのスマートコントラクト開発効率が従来の10倍、テスト速度が50倍向上するとされています。
- 断片化されていた開発ツールを一つのCLIに統合し、プロジェクトの作成から検証までを一貫して行えるようになりました。
- 「AI-ready」を掲げ、AIエージェントによるコード生成や自律型オンチェーン・プログラムの構築を強力にサポートします。
- TONの新しい開発言語「Tolk」をベースにしており、開発者体験(DevEx)の向上を通じてエコシステムの拡大を図る狙いが見られます。
- Web3業界において、開発スピードとAI親和性がブロックチェーンプラットフォームの新たな競争軸となる可能性を示唆しています。