米金融大手のJPモルガン(JPMorgan)は、イーサリアム・ブロックチェーン上で新たなトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)をローンチします。2026年5月12日に米証券取引委員会(SEC)へ提出された書類により明らかになりました。この新ファンドは、米国の新たな規制に基づきステーブルコイン発行体に求められる準備資産要件を満たすよう設計されており、伝統的金融資産のオンチェーン移行を加速させる動きとして注目されます。
新ファンド「OnChain Liquidity-Token Money Market Fund」の概要
JPモルガンが新たに設立するファンドの名称は「OnChain Liquidity-Token Money Market Fund(ティッカー:JLTXX)」です。このファンドは、主に米国債、および米国債や現金を担保とする翌日物レポ取引を投資対象としています。
技術基盤には、JPモルガンのデジタル資産部門である「Kinexys Digital Assets(キネクシス・デジタル・アセット、旧Onyx)」が管理するブロックチェーン技術が採用されます。当初はパブリックチェーンであるイーサリアム上で展開されますが、将来的には他のブロックチェーンへの拡大も計画されています。
このファンドの大きな特徴は、投資家がトークン化されたシェアをデジタルウォレットで保有し、暗号資産市場で担保として活用できる点にあります。また、従来のファンドでは1〜2日を要していた決済が、オンチェーン化により数分単位で完了するなど、運用効率の大幅な向上が期待されています。
ステーブルコイン規制「GENIUS法」への対応
本ファンドの最大の特徴は、2025年7月に米国で成立した「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」への完全準拠を意図している点です。
GENIUS法では、米国で規制に準拠するステーブルコイン発行体に対し、発行するトークンを米国債、現金、保険付き銀行預金などの高流動性資産で1対1で裏付けることを義務付けています。JPモルガンの新ファンドは、こうした規制要件を満たす適格準備資産の管理手段として、ステーブルコイン発行体にオンチェーンでの運用選択肢を提供します。
これにより、発行体は準備資産の透明性を確保しつつ、規制当局が求める厳格な資産基準を維持することが容易になると見られます。
伝統的金融機関によるトークン化市場の競争激化
トークン化された短期金融商品の分野では、伝統的な金融機関による参入が相次いでいます。フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)は、すでに「BENJI」と呼ばれるトークン化MMFを展開しており、複数のブロックチェーンで運用を行っています。また、ProSharesもGENIUS法に対応したMMF型のETFを上場させるなど、市場環境が整いつつあります。
JPモルガンの参入は、機関投資家やステーブルコイン発行体にとって、信頼性の高い大手金融機関によるオンチェーン商品が増えることを意味します。同行のジェイミー・ダイモンCEOは、ステーブルコインやスマートコントラクトを基盤とした新たな競合勢力の台頭に言及しており、自社のブロックチェーン技術を積極的に展開することで、デジタル資産領域での競争力を強化する方針と見られます。
ポイント
- SECへの設立申請
JPモルガンが、イーサリアム上で運用されるトークン化MMF「JLTXX」の設立書類を提出しました。
- GENIUS法への完全準拠
ステーブルコイン発行体に課される厳格な準備資産要件(米国債や現金による裏付け)を満たす設計となっています。
- 運用の効率化と透明性
Kinexys Digital Assetsの技術を用い、決済時間の短縮やオンチェーンでの透明な資産管理を実現します。
- 機関投資家向けインフラの拡充
伝統的金融機関が規制対応型の商品をオンチェーンで提供することで、Web3業界のビジネスパーソンにとって、より信頼性の高い資金運用手段が提供されることになります。