暗号資産運用会社Bitwiseの最高投資責任者(CIO)であるマット・ホーガン氏は、新興の3つのブロックチェーンが合計で100億ドルを超える評価額となり、巨額の資金調達を実施した背景を分析しました。対象となったのはCircleの「Arc」、Digital Assetの「Canton Network」、StripeとParadigmが主導する「Tempo」です。これらのプロジェクトは、ステーブルコイン決済や資産のトークン化(現実世界の資産をブロックチェーン上のトークンとして扱うこと)に特化しており、規制の明確化とプライバシー機能の充実が機関投資家を引きつける要因となっています。
規制の明確化と機関投資家の動向
ホーガン氏は、これら3つのプロジェクトによる巨額の資金調達が、2025年7月にアメリカで可決されたステーブルコイン特化型の法律「ジーニアス法(GENIUS Act)」の後に行われた点に注目しています。ジーニアス法は、決済用ステーブルコインとその発行者に対して包括的な連邦レベルの規制枠組みを確立した法律とされています。
これまで機関投資家は、規制が不透明な状況下で暗号資産事業に参入することに消極的でしたが、法整備が進んだことで状況が変化しました。ホーガン氏は、最近の進展は機関投資家が暗号資産やブロックチェーンの構築に前向きになりつつあることを示唆していると述べています。
調達に成功した3つの新興ブロックチェーン
今回取り上げられた3つのプロジェクトは、それぞれ特定のビジネスニーズに特化した設計がなされています。
1. Arc(Circle)
評価額30億ドル(約4800億円)で2億2200万ドル(約355億2000万円)を調達しました。USDCの発行元として知られるCircleが手がけるレイヤー1ブロックチェーンで、USDCをガス代(取引手数料)に使用する設計が特徴です。2026年4月には、ネイティブトークンの発行やプルーフ・オブ・ステーク(PoS)モデルへの移行計画も報じられています。
2. Canton Network(Digital Asset)
評価額20億ドル(約3200億円)で3億ドル(約480億円)を調達しました。金融機関向けのプライバシー保護機能を備えたネットワークで、すでにJ.P. Morganが「JPM Coin」の提供を計画しているほか、Visaがスーパーバリデーター(ネットワークの維持・検証を行う重要な役割)として参加するなど、伝統的な金融機関の採用が進んでいます。
3. Tempo(Stripe / Paradigm)
評価額50億ドル(約8000億円)で5億ドル(約800億円)を昨年末に調達済みです。決済に特化したブロックチェーンであり、2026年3月23日にメインネットをローンチしました。AIエージェント(自律的に動作するソフトウェア)向けの決済プロトコルを導入している点が特徴的です。
技術的特徴としての「ネイティブプライバシー」
ホーガン氏は、これら新興チェーンがEthereum(イーサリアム)やSolana(ソラナ)といった既存の主要チェーンと異なる点として、プライベートトランザクション(取引内容の非公開化)をネイティブにサポートしていることを挙げました。
現実世界の組織や金融機関が実際に業務でブロックチェーンを利用する際、すべての取引データが公開されることは大きな障壁となります。新興チェーンは、設計段階から組み込まれたプライバシー機能こそが実社会の組織に必要とされるものだと考えており、最近の巨額な資金調達の成功はその方向性が正しいことを裏付けているとホーガン氏は分析しています。
ポイント
- 新興3チェーン(Arc、Canton Network、Tempo)の合算評価額が100億ドルを突破しました。
- 2025年7月の「ジーニアス法」成立による規制の明確化が、機関投資家の資金流入を加速させた要因と見られます。
- 既存の主要チェーンとは異なり、ビジネス利用に不可欠なプライバシー機能を標準装備している点が評価されています。
- VisaやJ.P. Morganといった大手金融機関がすでにこれらのネットワークへの参加や活用を始めており、実需に基づいた採用が進んでいます。
- 決済、資産のトークン化、AIエージェント向け決済など、特定のユースケースに特化した設計が投資を引きつけています。