ブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)のシニアインテリジェンスアナリスト、Kaitlin Martin氏は、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が同国の暗号資産経済において圧倒的なシェアを占めている実態を明らかにしました。新たに報告されたホルムズ海峡での通行料徴収システムは、イランが進める広範な暗号資産統合の最新事例と見られています。このシステムでは、ビットコインではなくステーブルコインが主要な役割を果たしている点が特徴です。
IRGCによる暗号資産経済の広範な管理
Martin氏の分析によると、IRGCはイラン国内の暗号資産エコシステムにおいて支配的な地位を確立しています。2025年第4四半期時点のデータでは、IRGCに関連する活動がイラン全体の暗号資産活動の約50%を占めており、その運用額は公的に確認できる範囲だけでも約30億ドル(約4,600億円)規模に達するとされています。国際的な制裁により従来の金融システムへのアクセスが制限される中、IRGCは暗号資産を国家の金融インフラに深く統合し、独自の資金調達ルートを構築していると見られています。
ホルムズ海峡の通行料徴収とステーブルコインの役割
イランが世界の石油供給の要所であるホルムズ海峡において、暗号資産を活用した通行料徴収システムを導入したことが報告されています。
報道によれば、船舶の運航会社に対し、石油1バレルあたり約1ドルの通行料を暗号資産または中国人民元で支払うよう求めているとされています。この際、ビットコイン(BTC)よりもステーブルコインが優先的に利用されている点が注目されます。これは、ビットコインの価格変動を避け、米ドルに連動した価値の安定性と、大規模な取引に必要な流動性を確保するためであると分析されています。特に、制裁回避の手段としてステーブルコインが実務上の中心的な役割を担っている実態が示唆されています。
ビジネス上のリスクとコンプライアンスへの影響
この新たな徴収システムは、世界の海運業界や金融機関に対して深刻なコンプライアンス上の課題をもたらしています。
IRGCは複数の管轄区域で制裁対象となっており、暗号資産による通行料の支払いは「重要な支援」とみなされ、米国や国際的な制裁違反に問われるリスクが極めて高いとされています。一方で、イラン中央銀行側が暗号資産による徴収を公式には否定し、現金での支払いを主張しているとの報道もあり、情報の透明性や運用の実態については依然として慎重な確認が必要な状況です。
ポイント
- Chainalysisのアナリストが、イラン革命防衛隊(IRGC)による国内暗号資産経済の圧倒的な支配を報告しました。
- 2025年第4四半期時点で、IRGCはイランの暗号資産活動の約50%に関与しているとされています。
- ホルムズ海峡の通行料徴収に暗号資産が導入され、実務上はビットコインよりステーブルコインが優先されています。
- IRGCとの取引は国際的な制裁違反となる可能性が高く、海運業界にとって重大な法的リスクとなっています。
- 暗号資産が国家の金融インフラや制裁回避の手段として組織的に統合されている実態が示された点で注目されます。