ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は、国内における暗号資産規制の断片化を解消し、規制と税制の枠組みを統一するための大統領令である仮想資産調整に関する大統領令2026に署名しました。この大統領令に基づき、ナイジェリア中央銀行が主導する仮想資産評議会が新たに設立されます。アフリカ最大規模の暗号資産市場を持つ同国において、この動きは規制の不透明さを解消し、健全なイノベーションの促進と利用者保護を両立させるための重要な一歩になると見られています。
大統領令の策定背景と市場の現状
ナイジェリアはアフリカ地域において、暗号資産やステーブルコインの採用が極めて活発な国として知られています。国際通貨基金(IMF)が2026年6月に発表した報告書によると、同国は2019年以降におけるサブサハラアフリカ地域のステーブルコイン流入の約60パーセントを占めており、2023年7月から2024年6月までの期間には約590億ドルの暗号資産の流入があったとされています。
一方で、これまでは複数の政府機関が個別に規制を行っていたため、規制の重複や抜け穴が存在し、マネーロンダリングやテロ資金供与、サイバーセキュリティの脅威、未登録の事業者による詐欺などのリスクにさらされていました。今回の大統領令は、こうした規制の断片化を解消し、金融システムの健全性を確保しながら、責任あるイノベーションを可能にすることを目的としています。
新設される仮想資産評議会と各機関の役割分担
大統領令により、ナイジェリア中央銀行(CBN)が議長を務め、ナイジェリア歳入庁(NRS)と証券取引委員会(SEC)が副議長を務める仮想資産評議会(VAC)が新たに設立されます。この評議会には、ナイジェリア金融情報局(NFIU)や国家安全保障顧問室(ONSA)もメンバーとして参加します。さらに、実務を担う仮想資産オフィスが設立され、その事務局は中央銀行内に置かれる予定です。
今回の枠組みは、新たな規制機関を創設したり既存の権限を移転したりするものではなく、各機関の独立性を維持したまま、協調を強化するものです。具体的な登録や監督の範囲は、活動と資産の性質に基づいて以下のように切り分けられます。
- 証券取引委員会(SEC):証券に分類される仮想資産に関連する活動の登録および監督
- ナイジェリア中央銀行(CBN):非証券の仮想資産に関連する決済、決済、保管(カストディ)、および関連サービスの登録および監督
どちらの機関が担当すべきか明確でないケースについては、新設される評議会が調整を行います。これにより、未登録の事業者が規制の隙間を突いて活動することを防ぐ効果があると見られています。
今後のスケジュールと具体的な施策
この大統領令は署名された2026年7月17日より、即時発効しています。今後の主な計画や展開は以下の通りです。
- 実施枠組みの策定:新設された仮想資産評議会は、署名から30日以内に、関係機関向けに調和された実施枠組みを策定することが求められています。
- 仮想資産サンドボックスの推進:ナイジェリア中央銀行は、事業者が本格的な規制を受ける前に、管理された環境下で仮想資産製品やブロックチェーンソリューションをテストできるサンドボックス(実証実験環境)制度を進めるとしています。
- 仮想資産税制ポリシーの発表:ナイジェリア歳入庁は、仮想資産セクターに対する税制ポリシーをリリースし、既存の税法がどのように適用されるかを明確化して、自主的な納税コンプライアンスを高める方針です。
- ホワイトペーパーの策定:政府は、業界の長期的な政策方針を示す仮想資産ホワイトペーパーの策定を進めています。
ポイント
- ナイジェリアの大統領が、暗号資産規制の統一を目指す「仮想資産調整に関する大統領令2026」に署名し、即時発効しました。
- ナイジェリア中央銀行(CBN)が議長を務め、主要な規制・法執行機関が参加する「仮想資産評議会」が新たに設立されます。
- 新たな規制機関は創設せず、既存の機関が資産の性質(証券か非証券か)に応じて役割を分担する形が取られます。
- 中央銀行によるサンドボックス制度の推進や、歳入庁による税制ポリシーの発表、長期方針を示すホワイトペーパーの策定などが並行して進められる計画です。
- アフリカ最大の暗号資産市場を持つナイジェリアにおいて、規制の不透明さや断片化を解消し、安全なイノベーションと利用者保護を両立させる取り組みとして注目されます。