最大手ビットコイントレジャリー企業のストラテジーは、自社が保有するビットコイン価値を評価するための新たな指標体系を公表しました。本刷新により、負債や優先株式といったシニア請求権を差し引き、普通株主に実質的に帰属する価値を示す「純準備高(Net Reserve)」などが新たに導入されています。優先株式を中心とした資金調達構造への変化に対応し、財務耐性や1株あたりの本質的な価値を投資家に明確化する取り組みとして注目されます。
普通株主への帰属価値を示す「純準備高」の導入
ストラテジーは7月23日、投資家向けサイトに掲載した動画を通じて、ビットコイン保有価値の評価指標体系を刷新したことを明らかにしました。従来の単純な保有量ベースの評価から、資金調達に伴う権利関係を反映した算出方式へと変更されています。
新指標の中核となる「純準備高(Net Reserve)」は約366億ドルと算出されました。これは、同社が保有する843,775BTCのビットコイン(評価額約556億ドル)と現金準備金32億ドルの合計から、優先株式155億ドルおよび権利行使価格を下回る転換社債68億ドルからなる計222億ドルのシニア請求権を控除した残余価値です。
この純準備高を完全希薄化後の株式数で割った「1株あたり純ビットコイン(Net BTC per Share)」は95ドル(14万3,000サトシ相当)となりました。同指標は2020年末の13ドル(4万4,000サトシ相当)から年平均成長率43%で拡大しており、同期間のビットコイン自体の成長率16%を上回っています。指標見直しの背景には、資金調達の手段が転換社債から優先株式による「デジタルクレジット」へ移行したことや、投資家からの透明性向上に対する要望があったためと説明されています。
mNAVの算出方式変更とリスク耐性指標の新設
株価とビットコイン保有価値を比較する指標「mNAV」も、株価を「1株あたり純ビットコイン」で割る方式に変更されました。約220億ドルのシニア請求権を控除しない従来の方式では株価が割安に見えていましたが、新方式に基づくmNAVは24日時点で1.02倍となり、適正水準である1.0倍近辺に近づく形となりました。また、資本構成が株主のビットコインエクスポージャーを増幅させる度合いを示す「増幅率(Amplification)」は、保有総額を純準備高で割った資本乗数として再定義され、現在は約1.5倍とされています。
さらに、同社は信用力や負債の持続可能性を測る指標も新設しました。実質的な資金調達コストを示す「BTCハードルレート」は約10.8%、損益分岐点となる「ブレイクイーブンレート」は約3.2%と設定されています。また、負債の加重平均残存期間中にビットコインが年率換算でどこまで下落しても信用力を維持できるかを示す「BTCフロアレート」は約マイナス11%と算出されました。
財務上のリスクについて、フォン・レCEOはブルームバーグTVのインタビューで、ビットコイン価格が8,000〜1万ドルまで下落しない限り財務上の問題はないとの見解を示しています。
資本戦略の柔軟化と今後の決算発表
同社は6月下旬、現金準備の積み増しや優先株配当の支払いなどを目的に、最大12.5億ドル相当のビットコイン売却を可能とする枠組みを承認しました。会長が掲げてきた方針からの転換となりましたが、承認後の実際の資金調達は普通株式の追加発行によって行われており、843,775BTCの保有量は維持されています。
今後の日程として、同社は今月30日に第2四半期(2Q)決算の発表を予定しています。
ポイント
- ストラテジーが普通株主に実質帰属する価値を示す「純準備高(Net Reserve)」などの新指標を導入し、財務構造の透明性を高めた点
- シニア請求権222億ドルを控除する新算定により、指標「mNAV」が1.02倍となり株価評価が適正水準に近いことが明示された点
- 1株あたり純ビットコイン価値の年平均成長率が43%に達し、同期間のビットコイン上昇率(16%)を上回る成果が示された点
- ビットコイン急落に対する耐性を示すフロアレート(約マイナス11%)などの信用指標を新設し、財務リスクの許容範囲を数値化した点