三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が、日本国債のレポ取引(国債などを担保とする短期資金の貸借取引)をブロックチェーン上で即時決済する仕組みの導入を検討していることが報じられました。2025年時点で約270兆円の残高があるレポ市場において、従来の翌営業日決済(T+1)から即時決済へ移行し、機関投資家の資金効率を高める狙いです。時差による海外投資家の取引制約解消や資金拘束期間の短縮が見込まれており、伝統的金融市場のオンチェーン化を推進する取り組みとして注目されます。
270兆円市場における即時決済導入の背景と仕組み
MUFGは、2027年度からの商用化を目指した実証実験を計画し、2029年度中の本格展開を視野に入れています。国債レポ取引では決済のズレに備えた余剰資金の確保が必要とされますが、ブロックチェーンを活用した即時決済が実現すれば、資金拘束の期間を大幅に短縮できます。
今回の試みでは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が手がける取引データを基に、Progmat(プログマ)の基盤と米デジタルアセット社のブロックチェーン技術を組み合わせ、トークン化預金(銀行預金をブロックチェーン上で表現した送金用トークン)やステーブルコインによる決済を目指します。なお、国債そのものをトークン化する「デジタル国債」の発行は、法的論点の整理が未完了であることを理由に採用が見送られました。
現在、日本の国債決済時間は平日午前8時30分から午後9時までに限られており、海外投資家からは時差による取引の難しさが指摘されていました。即時決済の導入により、時間帯の制限が緩和され、国債の安定的な消化や流動性の向上に貢献すると見られています。
業界横断コンソーシアムとグローバルな市場動向
国債オンチェーン化の動きは単独の取り組みにとどまらず、業界全体へと広がりを見せています。Progmatが主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)」では、2026年に「トークン化国債・オンチェーンレポ ワーキング・グループ」が設置されました。同グループには三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3メガバンクをはじめ、大和証券、SBI証券、ブラックロック・ジャパン、ステート・ストリート信託銀行、ゼニスなどが参加しており、同年10月をめどに報告書が公表される予定です。
金融安定理事会(FSB)の報告によれば、世界の国債レポ市場は2024年末時点で約16兆ドル(約2,560兆円)規模に達し、日本はその約1割を占めています。
海外では先行事例が蓄積されています。米JPモルガンは独自のブロックチェーン基盤「Kinexys(キネクシス)」上のアプリケーション「イントラデイ・レポ」を通じて、累計3,000億ドル規模のレポ取引を処理しています。また、米国の証券保管振替機関(DTCC)もデジタルアセット社と提携し、米国債等を含む預託資産をカントン(Canton)ネットワーク上でトークン化する実証を推進しています。国内でも、みずほフィナンシャルグループと野村ホールディングスが国債担保のデジタル管理に関する実証実験を実施しており、伝統的金融機関によるオンチェーン金融の基盤整備が加速しています。
ポイント
- MUFGが2025年時点で残高270兆円に達する日本国債レポ取引へブロックチェーン活用を検討し、2027年度の実証実験および2029年度の本格展開を目指している点で注目されます。
- 約定から1営業日を要する「T+1」決済からトークン化預金やステーブルコインによる即時決済へ切り替えることで、資金拘束期間を短縮し機関投資家の資金効率を高める効果が期待されます。
- 取引時間の制約による海外投資家の参入障壁を減らし、日本国債の安定消化と市場流動性の向上に寄与する可能性があります。
- 3メガバンクや海外運用大手が参画する国内コンソーシアムの結成や、米JPモルガンなどの先行事例にみられるように、国債とステーブルコイン等を結びつけるオンチェーン金融が世界的に本格化している点で重要です。