物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスは、円建てステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社と資本業務提携の覚書を締結しました。約10億円を投じて議決権の2.9%を取得し、個人事業主を含む協力会社およそ2300社への委託費の支払いにJPYCを段階的に導入する方針です。従来の銀行振込手数料の壁を回避して支払いサイクルを大幅に早める試みであり、国内の大手物流企業がステーブルコインを実際の企業間決済・業務フローへ組み込む先駆的な事例として注目されます。
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支払いサイクルの短縮と10億円出資の背景

AZ-COM丸和ホールディングスがJPYCの導入を決めた背景には、物流業界の中小事業者における資金繰りと人件費支払いの負担があります。同社はこれまで「月末締め翌月20日払い」を採用してきましたが、協力会社からはさらなる支払い回数の増加を求める声が上がっていました。しかし、1口あたり平均約160円(地方の信用金庫などでは約800円)かかる振込手数料の負担が大きく、支払い回数を増やすことが困難な状況でした。
ステーブルコインの導入により送金にかかる手数料負担を抑え、支払いのスピード向上を目指しています。また、同社が約10億円という出資に踏み切った理由は、JPYCの発行上限に関わる規制にあります。JPYC社は第二種資金移動業者であり、発行残高と同額以上の資産を保全する義務に加えて還付費用等の上乗せ分を自己資金でまかなう必要があるため、自己資金の厚みが発行上限を左右します。AZ-COM丸和の月間売上原価は約174億円に上り、8月中旬時点のJPYC総流通量(約28億円)を大きく上回るため、決済インフラとしての受け皿を広げる目的で巨額の出資が行われました。
ステーブルコイン導入支援のPacific Meta
自社でも発行・運用を実践する当事者チームが伴走します
導入に向けた法制度上の課題と今後の運用計画
実務への導入にあたっては、法制度や会計基準に関連するいくつかの制約が存在します。第二種資金移動業者の規制により、JPYCの発行および償還は1回あたり100万円が上限と定められており、大規模な支払いを一度に置き換えることは困難とされています。さらに、保有するステーブルコインの会計上の評価や表示科目が未確定であることや、公的な残高証明の仕組みが整っていない点も課題となっています。そのため同社では、四半期末や年度末には残高を一度ゼロに戻す運用を想定しています。
同社は早ければ年内にも、首都圏から対象を絞ってJPYCによる支払いを開始する計画です。当面は締めから支払いまでの期間を「25日締めの月末払い」など約5日前後へと短縮し、従来の20日から4分の1にすることを目指しています。また、実務上の課題解決に向けて同社は内閣府のヒアリングを受け、金融庁にも要望を提出しています。
ポイント
- AZ-COM丸和ホールディングスがJPYC社に約10億円を出資し、協力会社約2300社への委託費支払いにステーブルコインを段階的に導入します。
- 銀行振込手数料の課題を解決し、支払いサイトを従来の20日から約5日前後へ短縮することで、現場ドライバーや中小事業者の資金繰り支援を図る点で重要です。
- 月間約174億円に達する自社の原価規模に対応するため、発行体の保全資産の制約を踏まえて発行枠の拡大を目的に10億円を出資しました。
- 1回100万円の送金規制や残高証明などの会計・監査上の課題があり、早ければ年内に首都圏から段階的に開始される予定です。