日本円ステーブルコインの勢力図:JPYCとJPYSCの役割分担とトークン化預金の台頭

日本国内において、円建てステーブルコインの普及に向けた動きが本格化しています。先行する「JPYC」に加え、SBIホールディングスとStartale Groupが「JPYSC」の提供を2026年4月から6月にかけて計画しており、両者の役割の違いと棲み分けに注目が集まっています。ステーブルコインの活用が広がる一方で、米ドル建てのブロックチェーン送金や「トークン化預金」の活用といった新たな選択肢も浮上しており、次世代の決済インフラを巡る競争が加速しています。

JPYCとJPYSCの設計思想:コンシューマーと機関投資家の棲み分け

日本円ステーブルコインの勢力図:JPYCとJPYSCの役割分担とトークン化預金の台頭

円建てステーブルコイン市場では、先行する「JPYC」と、新たに登場する「JPYSC」の立ち位置の違いが明確になりつつあります。

JPYCは現在、資金移動型のスキームで発行されており、主にコンシューマー(一般消費者)やビジネスシーンでの利用を背景としています。これに対し、SBIグループとStartale Groupが共同で推進するJPYSCは、信託型(発行額に相当する資産を信託銀行に預託する形態)の枠組みを採用し、機関投資家による利用や国際決済での活用を目指しています。

両者は名前こそ似ていますが、設計思想が異なるため、直接的な競合というよりは、用途に応じた「棲み分け」が進むと見られています。SBIグループを率いる北尾氏は、JPYCへの支援も検討し得る旨を語っており、日本円をオンチェーン化(ブロックチェーン上で扱えるようにすること)するという共通の目標に向けた、補完的な関係になる可能性があります。

ステーブルコインとトークン化預金:グローバル決済の新たな競争軸

ステーブルコインの普及が進む一方で、既存の銀行システムを基盤とした「トークン化預金」(銀行預金をブロックチェーン上のトークンとして表現したもの)の動きも活発化しています。

三菱商事は、2026年度にもJPモルガンのブロックチェーン基盤を活用し、米ドル建ての国際送金を開始する方向で検討していると報じられています。この取り組みの先には、単純な送金にとどまらず、プログラマブルな資産運用が可能になるトークン化預金の活用も視野に入っていると見られます。

現在、国内の主要銀行によるステーブルコイン共同発行構想は慎重に進められている状況ですが、三菱商事のようなグローバル企業が独自の決済インフラを選択する動きは、今後のデジタル通貨の使われ方に大きな影響を与える可能性があります。「日本円か米ドルか」「ステーブルコインかトークン化預金か」という多層的な競争軸の中で、どのネットワークが決済インフラの主導権を握るかが注目されます。

ポイント

  • JPYCは主にコンシューマーやビジネス向け、JPYSCは機関投資家や国際決済向けと、異なる役割を担うことが想定されています。
  • SBIとStartaleによる「JPYSC」は、日本初の信託型ステーブルコインとして2026年4〜6月の提供を目指しています。
  • 三菱商事は2026年度に、JPモルガンの基盤を用いたドル建てのブロックチェーン送金を開始する見通しです。
  • 決済インフラの選択肢として、ステーブルコインだけでなく「トークン化預金」という新たなレイヤーでの競争が始まっています。
  • どのネットワークや通貨が採用されるかが、将来的なデジタル通貨の利便性や活用範囲を規定する重要な要素となります。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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