1.7兆ドルの運用資産残高を持つ大手資産運用会社フランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)が、暗号資産に特化した独立部門「Franklin Crypto」を設立することが明らかになりました。同社はベンチャーキャピタルCoinFundからスピンオフした250 Digitalを買収し、年金基金や政府系ファンドなどの機関投資家を対象とした本格的なサービス展開を目指します。市場が停滞する中でのこの動きは、伝統的な金融機関がデジタル資産の長期的な価値を確信していることを示唆しています。
新部門「Franklin Crypto」の設立と体制
フランクリン・テンプルトンは、デジタル資産運用会社である250 Digitalを買収することで、暗号資産専門の独立部門「Franklin Crypto」を立ち上げます。250 Digitalは、2026年1月にCoinFundからスピンオフした企業であり、CoinFundが以前運用していた流動性の高い暗号資産戦略を継承しています。
新部門のリーダーには、CoinFundのプレジデントを務めたクリストファー・パーキンス氏が就任し、最高投資責任者(CIO)には同じくCoinFund出身のセス・ギンズ氏が就く予定です。両氏は、フランクリン・テンプルトンのイノベーション責任者であるサンディ・カウル氏の直属となります。同社は2018年からデジタル資産分野に参入しており、すでに50名以上の専門スタッフを擁していますが、今回の買収により暗号資産ネイティブな専門知識とグローバルな販売網を統合し、機関投資家向けの成長を加速させる狙いがあります。
アクティブ運用戦略による機関投資家需要の取り込み
「Franklin Crypto」の主なターゲットは、年金基金や政府系ファンドなどの大規模な機関投資家です。これまで同社はビットコインETF(上場投資信託)などのパッシブ製品を提供してきましたが、新部門ではより高度な「アクティブ運用戦略」に重点を置きます。
これには、流動性のあるトークン市場でのポートフォリオ構築や、ブロックチェーン・インフラに関連する構造化製品などが含まれます。パーキンス氏は、暗号資産の「機関投資家時代の到来」を強調しており、ETFのようなパッシブ製品では対応できない複雑で進化の早い資産クラスにおいて、専門的な知識に基づいたアクティブ運用のニーズが高まっていると述べています。
トークンを活用した革新的な買収決済
今回の買収において注目すべき点は、決済手段の一部にフランクリン・テンプルトン独自のトークン「BENJI」が使用されることです。BENJIは、同社が2021年にブロックチェーン上でトークン化した「フランクリン・オンチェーン米国政府マネー基金(FOBXX)」のシェアを表すトークンです。
企業買収(M&A)の対価としてトークン化された資産が使用されるのは、業界でも先駆的な事例とされています。従来の銀行送金などのチャネルを介さず、ブロックチェーン・インフラ上で直接決済を行う試みであり、同社が推進する「金融のオンチェーン化」を自ら体現する形となりました。
今後のスケジュールと市場環境
この買収案件は、クライアントの同意や一般的な完了条件を経て、2026年第2四半期(4月〜6月)に完了する予定です。
現在の暗号資産市場は、ビットコインが昨年秋のピークである12万6000ドルから約45%下落し、市場全体で約2兆ドルの時価総額が失われるなどの停滞期にあります。しかし、フランクリン・テンプルトンの経営陣は、この市場の冷え込みを、人材の確保やインフラ構築を比較的低コストで行える「ユニークな機会」と捉えており、長期的な視点での投資を継続する姿勢を鮮明にしています。
ポイント
- フランクリン・テンプルトンが250 Digitalを買収し、専門部門「Franklin Crypto」を設立します。
- ターゲットを年金基金や政府系ファンドに定め、ETFでは提供できないアクティブ運用戦略を強化する方針です。
- 買収代金の一部に自社のトークン化マネー・マーケット・ファンド「BENJI」を使用する、先進的なオンチェーン決済が採用されました。
- 市場の停滞期をインフラ構築の好機と捉え、2026年第2四半期の部門稼働を目指しています。
- 伝統的金融(TradFi)の巨人が、パッシブ投資からアクティブ投資へとデジタル資産戦略を深化させた点で注目されます。