米金融最大手JPモルガンのジェイミー・ダイモン会長兼CEOは、2026年4月6日付の株主宛て書簡(2025年度年次報告書)において、ブロックチェーン技術を基盤とした新たな競合勢力の台頭に警鐘を鳴らしました。同行が過去最高益を更新する一方で、ステーブルコインやトークン化といった技術が金融業界の構造を変化させている現状を指摘しています。
ブロックチェーン基盤の「新しい競合他社」の出現
ダイモン氏は書簡の中で、現在の金融業界が直面している構造的な変化について言及しました。同氏は、ブロックチェーンや暗号資産そのものが同行の中心的テーマではないとしつつも、「ステーブルコイン、スマートコントラクト、トークン化を含む、ブロックチェーンを基盤としたまったく新しい競合他社が出現しつつある」と述べています。
これは、従来の銀行業務がデジタル資産やプログラム可能な金融プロトコルによって、新たな競争環境に置かれていることを示唆しています。世界最大の銀行トップがこれらを「競合」として明確に定義したことは、Web3・ブロックチェーン技術が金融の主流層において重要な地位を占めつつあることの裏付けとも受け取れます。
自社基盤「Kinexys」の拡張と主要企業との連携
JPモルガンはこの変化に対応するため、自社開発のブロックチェーン基盤「Kinexys(キネクシス)」の拡張を加速させています。
- プラットフォームの役割: Kinexysは、従来の仲介機関を介さずに、ほぼリアルタイムでの資金移動を可能にするシステムです。
- 主要な採用企業: 三菱商事、Qatar National Bank(カタール国立銀行)、Siemens(シーメンス)、BlackRock(ブラックロック)といったグローバル企業や機関投資家がクライアントとして名を連ねています。
- 目標取引量: 同行はKinexysにおける1日あたりの取引量を、最大100億ドルまで拡大することを目指しています。
また、商業・投資銀行(CIB)部門では、グローバル決済や暗号資産分野での能力構築を継続する方針です。
資産のトークン化と規制環境の変化
今後の具体的な事業展開として、同行はKinexysを活用した「プライベートクレジット」や「不動産」分野のトークン化(資産をブロックチェーン上のデジタル証券として扱う技術)に乗り出す計画を示しました。
こうした動きの背景には、米国の規制環境の変化も影響していると見られます。ワシントンではステーブルコイン規制をめぐる議論が進んでおり、「GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」の成立がステーブルコインの普及を後押しするとの見方が出ています。GENIUS法は、ステーブルコインの発行や管理に関する連邦レベルの規制枠組みを構築するもので、2025年に成立した米国初の主要な暗号資産関連法案とされています。
ポイント
- ダイモンCEOによる競合認識: ステーブルコインやスマートコントラクトを活用する勢力を「全く新しい競合」と定義し、警戒感を示しました。
- Kinexysの拡大: 三菱商事やブラックロックなどの大手と提携し、1日100億ドルの取引量を目標に掲げています。
- トークン化の推進: 不動産やプライベートクレジットといった伝統的な資産のトークン化を本格化させる方針です。
- 規制による後押し: GENIUS法の成立により、ステーブルコインの普及と金融業界への統合が加速する可能性があります。
- 過去最高益の中での変革: 2025年度の売上高1855億ドル、純利益570億ドルという過去最高益を達成しながらも、テクノロジー対応を最優先課題としています。