米決済企業Block(ブロック)のジャック・ドーシー氏が開発した分散型ピアツーピア(P2P)メッセージングアプリ「Bitchat」が、中国のApp Storeから削除されました。この措置は、中国のインターネット規制当局である中国サイバースペース管理局(CAC)の要請を受けたApple(アップル)によるものです。プライバシー保護と検閲耐性を持つ分散型技術が、特定の地域規制によって制限を受けた事例として注目されます。
中国当局による規制と削除の経緯
ジャック・ドーシー氏は2026年4月6日、X(旧Twitter)への投稿を通じて、Bitchatが中国のApp Storeから削除されたことを明らかにしました。ドーシー氏が公開したAppleからの通知(2月28日付け)によると、削除の理由はCACからの要請に基づいています。
CACは、Bitchatが「世論属性または社会的動員能力を有するインターネット情報サービスのセキュリティ評価に関する規定」の第3条に違反していると主張しています。同アプリが中国国内で違法とされるコンテンツを含んでおり、AppleのApp Reviewガイドラインに準拠していないと判断されました。今回の措置により、通常のアプリストアだけでなく、開発中のアプリを試用するためのTestFlight版も中国国内では利用不能となっています。
Bitchatの技術的特徴とプライバシー機能
Bitchatは、既存のメッセージングアプリとは異なる技術的アプローチを採用しています。最大の特徴は、Bluetoothのメッシュネットワーク(デバイス同士が網目状に接続し、データを中継する通信方式)を介して、端末間でメッセージを直接やり取りできる点です。
この仕組みにより、インターネット接続を必要とせずに通信が可能となります。また、利用にあたって名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報の登録が一切不要であるため、プライバシーを極めて重視した通信手段として設計されています。このような中央サーバーを介さない分散型の仕組みが、結果として中国の規制当局による「社会的動員能力」に関する規定に抵触したと見られます。
業界への影響と現在の状況
Bitchatは中国のApp Storeからは排除されましたが、その他の国や地域のApp Storeでは引き続き利用可能です。Web3やブロックチェーン技術を活用した分散型コミュニケーションツールは、プライバシーや検閲耐性を強みとする一方で、各国の法規制やプラットフォーム企業のポリシーとの整合性が課題となることが改めて浮き彫りになりました。
特に、インターネットインフラに依存しないP2P通信技術は、通信の自由を確保する手段として期待される反面、当局による管理が困難なため、今後も特定の市場において同様の制限を受ける可能性があります。
ポイント
- ジャック・ドーシー氏が開発したP2Pアプリ「Bitchat」が、中国のCAC(サイバースペース管理局)の要請により、同国のApp Storeから削除されました。
- 削除の根拠は、世論形成や社会的動員能力を持つサービスに対するセキュリティ規定への違反とされています。
- BitchatはBluetoothメッシュネットワークを利用し、インターネット接続や個人情報登録なしで通信できる技術的特徴を持っています。
- 中国では正式版だけでなくTestFlight版も利用不可となりましたが、他国では引き続き提供が継続されています。
- 分散型技術によるプライバシー保護機能が、国家レベルの規制と対立した象徴的な事例といえます。