分散型AIネットワークであるBittensor(ビットテンソル)の主要なサブネット運営者であるCovenant AIが、ネットワークからの離脱を表明しました。このニュースを受けて、ネイティブトークンであるTAOの価格は24時間で9%以上下落し、一時は約337ドルから284ドル付近まで値を下げたとされています。今回の離脱は、プロジェクトが掲げる分散型の理念と実際の運営状況の乖離を浮き彫りにした形となりました。
Covenant AIの離脱とガバナンスへの批判
Covenant AIは、Bittensorエコシステムにおいて最も著名な貢献者の一つであり、複数の主要なサブネット(特定のタスクを実行するネットワーク内の個別ユニット)を運営していました。同社の創設者であるSam Dare氏は、離脱の理由として、ネットワークのガバナンスが実質的に中央集権化されていることを挙げています。
Dare氏は、Bittensorのガバナンス構造を「分散化を装った演劇(decentralization theatre)」と厳しく批判しました。具体的には、共同創設者であるJacob Steeves氏が、合意形成プロセスを経ることなく一方的に支配権を行使していると主張しています。
Covenant AIが指摘した具体的な問題点は以下の通りです。
- 特定のサブネットに対する報酬(エミッション)の停止
- コミュニティチャンネルにおけるモデレーション権限の剥奪
- サブネット用インフラの独断的な廃止
- 運営上の対立が生じたタイミングに合わせた、創設者側による大規模なトークン売却の疑い
同社は、投資家に対して「分散型でパーミッションレス(自由参加型)なインフラ」であると説明してきた手前、実態が伴わないネットワークでの開発を継続することはできないと述べています。
技術的実績と業界への影響
Covenant AIは、Bittensor上で「Covenant-72B」と呼ばれる720億パラメータを持つ大規模言語モデル(LLM)の分散型トレーニングを成功させたことで知られています。このプロジェクトは、データセンターを使用せず、70以上の独立したノードを統合してMeta社のLlama 2 70Bに匹敵する性能を実現したとされ、NVIDIAのCEOであるジェンスン・フアン氏からも言及されるなど、業界内で高い評価を得ていました。
このような実績を持つ主要チームの離脱は、Bittensorネットワークの信頼性に大きな影響を与える可能性があります。特に、GrayscaleによるETF申請や大手企業からの注目を集めていた時期だけに、今回のガバナンス危機は投資家や開発者のマインドに冷や水を浴びせる形となりました。
一方、Bittensorの創設者であるJacob Steeves氏は、今回の事態について、最終的には特定の個人や組織に依存しない「ヘッドレス(主導者のいない)」でコモディティ化されたサブネットが誕生するきっかけになるとの見解を示したと報じられています。
ポイント
- 主要なサブネット運営者であるCovenant AIが、中央集権的な支配を理由にBittensorからの離脱を表明しました。
- 独自トークンTAOの価格は、この発表を受けて一時9%から15%程度の下落を記録しました。
- 離脱の背景には、創設者のJacob Steeves氏による報酬停止やインフラ廃止など、一方的な権限行使への不満があるとされています。
- Covenant AIは、NVIDIAのCEOからも注目された「Covenant-72B」の開発元であり、その離脱はネットワークの技術的信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
- 今後は、Covenant AIはネットワーク外で開発を継続する方針であり、Bittensor側のガバナンス体制がどのように改善されるかが注目されます。