Aave V3のScrollインスタンス、TVLの90%急減を受け廃止が推奨される

Aaveのガバナンスにおいてリスク管理を担うLlamaRiskは、Ethereum(イーサリアム)のレイヤー2ソリューションであるScroll(スクロール)ネットワーク上のAave V3インスタンスについて、事実上の廃止(デプレケーション)を推奨しました。これは、主要プロトコルの移行に伴いScrollネットワーク全体の預かり資産(TVL)がわずか1週間で約90%減少したことを受けた措置です。流動性が大幅に低下した市場でのリスクを最小限に抑えるため、新規の利用を制限する内容となっています。

資産供給・借入上限を「1」に制限する廃止案

Aave V3のScrollインスタンス、TVLの90%急減を受け廃止が推奨される

LlamaRiskは、Aave V3 Scroll上のすべての資産について、供給上限(サプライキャップ)および借入上限(ボロウキャップ)を「1」に引き下げることを推奨しました。この措置により、新規の資産供給や借入が実質的に不可能となり、インスタンスは廃止に向けた段階に入ります。

具体的な調整案として、WETHの供給上限を5,000から1へ、USDCの供給上限を2,000,000から1へと大幅に引き下げることが提示されています。これらの制限は、新たなリスクへの露出を防ぎながら、既存のユーザーが安全にポジションを解消できるようにすることを目的としています。

ether.fiの移行に伴うScrollネットワークのTVL激減

今回の廃止推奨の背景には、Scrollネットワークにおける急激なアクティビティの低下があります。流動性再ステーキングプロトコルであるether.fiがOptimism(オプティミズム)ネットワークへ移行したことをきっかけに、ScrollのTVLは1週間で2億2,700万ドルから2,330万ドルへと急落しました。

ネットワーク全体の資産が約10分の1にまで減少したことで、Scroll上のDeFiエコシステム全体の流動性が損なわれる事態となっています。Aave V3 Scroll市場には現在1,219万ドルの資産が残っていますが、ネットワーク全体の衰退がプロトコルの運用に直接的な影響を及ぼしています。

流動性不足と高リスクな運用ポジションへの懸念

LlamaRiskは、現在の市場環境が非常に低流動性であることを警告しています。特に懸念されているのが、LST(液体ステーキングトークン)を利用したループ運用(資産を担保に同系統の資産を借り入れる戦略)のポジションです。

報告によると、これらのポジションの多くで健康指数(ヘルスファクター:債務の健全性を示す指標)が「1」に近い危険な水準にあります。流動性が乏しい中で価格変動が起きた場合、適切な清算が行われず、プロトコルに損失が生じるリスクが高まっていると見られます。今回の制限措置は、こうした不安定な状況下で被害を拡大させないための防衛策としての側面が強いとされています。

ポイント

  • LlamaRiskがAave V3 Scrollの全資産の上限を1に設定することを推奨し、事実上の廃止プロセスを提案しました。
  • ether.fiのOptimism移行により、Scrollネットワーク全体のTVLが2億2,700万ドルから2,330万ドルへ約90%減少したことが主な要因です。
  • Aave上の市場では流動性が欠如しており、健康指数が1に近いリスクの高いループポジションの存在が問題視されています。
  • この措置により、新規のリスクを遮断しつつ、既存ユーザーが安全に資産を引き揚げられる環境を整える狙いがあります。
  • 急激なネットワークの流動性低下が、個別のDeFiプロトコルの存続に直結する事例として注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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