米国の銀行業界団体が、ステーブルコインの利回り(イールド)付与を制限する法案の妥協案に対し、反対のロビー活動を拡大させています。この動きは、デジタル資産市場の規制枠組みを定める「CLARITY法(Digital Asset Market Clarity Act)」の進展に影響を与える可能性があります。ホワイトハウスの経済諮問委員会(CEA)がステーブルコインの利回り禁止による銀行へのメリットは限定的であるとする報告書を公表したのに対し、銀行側は預金流出のリスクを強調して強く反論しています。
ステーブルコイン利回りを巡る「妥協案」の内容
現在、トム・ティリス上院議員(共和党)とアンジェラ・アルソブルックス上院議員(民主党)の間で、ステーブルコインの利回りに関する妥協案が検討されています。この案の核心は、報酬の種類を以下の2つに分けることにあります。
- パッシブ・イールド(受動的な利回り): ステーブルコインを保有しているだけで利息のような報酬が得られる仕組み。妥協案では、これを禁止する方向で調整されています。
- アクティビティ・ベースの報酬: 取引や決済、プラットフォームの利用など、特定の活動に関連して付与される報酬。こちらは許可される方針です。
この区分けは、ステーブルコインが銀行預金の代替品として機能することを防ぎつつ、決済手段としてのイノベーションを維持することを目的としています。
銀行業界とホワイトハウスによる対立の激化
銀行業界団体である消費者銀行協会(CBA)やアメリカ銀行協会(ABA)は、この妥協案でも不十分であるとして、ロビー活動を強化しています。
対立の背景には、2026年4月8日に発表されたホワイトハウス経済諮問委員会(CEA)の報告書があります。同報告書は、ステーブルコインの利回りを禁止しても銀行の貸出額は21億ドル(約0.02%)程度の増加にとどまり、一方で消費者は年間8億ドルの利益を失うと分析しました。
これに対し、銀行側は以下の点を主張して反論しています。
- 預金流出のリスク: 利回りが許可されれば、特に地域銀行から資金が流出し、貸出能力が低下する可能性がある。
- 報告書の不備: ABAは、報告書が「利回りを禁止した場合の影響」という誤った問いを立てており、将来的にステーブルコイン市場が急拡大した際の預金流出リスクを過小評価していると批判しています。
法案の現状と今後のスケジュール
CLARITY法案は2025年7月に下院を通過しましたが、上院では利回り規制を巡る対立から停滞が続いています。
直近の動きとして、ティリス議員は2026年4月17日、上院銀行委員会のマークアップ(法案審議)の日程が不透明であることを理由に、妥協案の条文公開を延期すると述べました。一部の分析では、同委員会が4月中に法案を通過させられなければ、2026年内の成立の可能性は極めて低くなると予測されています。
ポイント
- 利回り規制の区分: 保有するだけの「受動的な利回り」を禁止し、利用実績に応じた「活動ベースの報酬」を認める妥協案が議論されています。
- 銀行業界の反発: 妥協案であっても銀行預金からの資金流出を招くとして、銀行団体が上院銀行委員会の議員らに対しロビー活動を広げています。
- ホワイトハウスとの見解相違: 利回り禁止の経済的メリットは小さいとする政府報告書に対し、銀行側は「リスク評価が不十分」として対立しています。
- 審議の停滞: 妥協案の条文公開が延期されており、2026年内の法案成立には、4月中の委員会審議が重要な節目となると見られています。
- 業界への影響: この法案の行方は、米国内の取引所やプロトコルがステーブルコインに関連した報酬プログラムを継続できるかどうかの法的根拠となります。