ステーブルコイン「USDT」の発行元であるTether(テザー)社が、ビットコインマイニング特化の金融サービス企業Antalpha(アンタルファ)に大規模な出資を行っていたことが明らかになりました。米証券取引委員会(SEC:投資家保護を目的とする連邦政府機関)への提出書類によると、テザー社は同社の発行済株式の約8.2%を保有しています。この動きは、テザー社が暗号資産の発行にとどまらず、マイニングやAI、フィンテックといった幅広いインフラ領域へ投資を拡大する戦略の一環と見られます。
SEC提出書類で明らかになった8.2%の出資比率
今回の出資は、アンタルファが2025年に実施した新規株式公開(IPO)を通じて行われたものです。テザー社は約195万株を保有しており、これはIPO後の発行済株式の約8.2%に相当します。当時のIPOにおいて、テザー社は投資家向けに販売された株式の過半数を引き受けたとされています。
アンタルファは2025年5月にナスダック市場へ上場し、1株あたり12.80ドルの公開価格で約4900万ドル(約76億円)を調達しました。同社の2025年通期の業績は好調で、売上高は前年比68%増の約8000万ドル、純利益は前年の3倍以上となる1850万ドルを記録しています。しかし、現在の株価は約9.30ドルと公開価格から27%以上下落しており、マイニング業界全体の構造変化が投資家の評価に影響していると見られます。
マイニング業界の変遷とアンタルファの役割
アンタルファは、世界最大級のマイニング機器メーカーであるBitmain(ビットメイン)と密接な関係を持ち、ビットコインやマイニング機器を担保としたローンを提供するなど、マイニング業者向けの金融ソリューションを主力事業としています。
近年、マイニング業界では従来の採掘事業から、AI(人工知能)やHPC(高性能コンピューティング:科学技術計算などの膨大な計算処理を行うシステム)分野への事業転換を進める企業が増えています。こうした業界の変化の中でも、テザー社はマイニング関連のインフラへの関与を強めています。テザー社は2026年2月にビットコインマイニング専用のオペレーティングシステム「MOS」をオープンソース化するなど、技術面での支援も展開しています。
2026年におけるテザー社の多角的な投資戦略
テザー社は2026年に入り、暗号資産の枠を超えた広範な領域への投資を加速させています。ビットコイン上でのUSDT決済インフラを構築するUtexoや、プログラマブル金融インフラを開発するArk Labs(アーク・ラボ)への資金提供に加え、RWA(現実資産:不動産や債券などの実物資産をブロックチェーン上でトークン化したもの)領域のスタートアップであるKAIOへの投資も行っています。
さらに、同社は2026年1月に米国向け規制準拠ステーブルコイン「USAT」をローンチし、4月にはセルフカストディ型(ユーザー自身が秘密鍵を管理する形式)ウォレット「tether.wallet」をリリースするなど、自社プロダクトの拡充も進めています。今回のアンタルファへの出資判明は、テザー社がビットコインのエコシステム全体を支えるインフラ企業としての地位を固めようとする姿勢を裏付けるものと言えます。
ポイント
- テザー社がマイニング金融Antalphaの株式約8.2%(195万株)を保有していることがSECの書類で判明しました。
- Antalphaは2025年のIPOで約4900万ドルを調達し、2025年通期で純利益が3倍以上に成長するなど堅調な業績を維持しています。
- マイニング業界がAIやHPC分野へシフトする中、テザー社はマイニングインフラへの投資を継続し、業界内での影響力を強めています。
- 2026年のテザー社は、AI、フィンテック、RWA、消費者向けハードウェアなど、多角的な投資戦略を鮮明にしています。
- 自社ウォレットのローンチや米国規制準拠ステーブルコインの発行など、インフラ提供者としての事業拡大を急いでいる点が注目されます。