2026年4月21日、韓国銀行の新総裁に就任した申鉉松(シン・ヒョンソン)氏は、就任式での演説において中央銀行デジタル通貨(CBDC)とトークン化預金の活用を拡大する方針を明らかにしました。申総裁は、ブロックチェーン技術を活用した金融イノベーションを支援しながら、韓国の決済システムの安定性を守る姿勢を強調しています。この方針は、韓国におけるデジタル通貨インフラの整備を中央銀行主導で加速させる重要な転換点になると見られます。
デジタル通貨インフラの柱となる2つの主要プロジェクト
申総裁は、今後の取り組みの核として「漢江プロジェクト」の第2段階と「アゴラプロジェクト」の推進を挙げました。漢江プロジェクトは、CBDCとトークン化預金(銀行預金をデジタル資産化したもの)を実生活の決済や政府補助金の支給などに活用する実証試験です。一方のアゴラプロジェクトは、国際決済銀行(BIS)や日本銀行、ニューヨーク連邦準備銀行など7つの中央銀行が参加する国際的な枠組みであり、トークン化された通貨を用いたクロスボーダー決済の効率化を目指しています。これらのプロジェクトを通じて、韓国ウォンの国際的なデジタル決済システムにおける地位を強化する狙いがあるとされています。
ステーブルコインから中央銀行主導の通貨体制への焦点移行
今回の就任演説では、これまで議論されていたステーブルコイン(法定通貨等に価値を固定した暗号資産)に関する直接的な言及はありませんでした。申総裁は国際決済銀行(BIS)の通貨経済局長を務めていた際、異なる発行体によるステーブルコインが決済システムの分断を招く可能性を指摘し、批判的な立場をとっていた経緯があります。就任前の人事聴聞会ではウォン建てステーブルコインに条件付きで賛成していましたが、総裁就任後はCBDCとトークン化預金に議論を絞っており、民間主導のステーブルコインよりも、中央銀行の管理下にあるデジタル通貨インフラを優先的に構築する姿勢が鮮明になっています。
韓国におけるブロックチェーン活用の現状と展望
韓国では、デジタル通貨を巡る動きが急速に進展しています。2026年4月中旬には、政府支出をトークン化預金で行う試験事業が開始されたほか、民間ではRippleと教保生命が提携して国債のトークン化実証に着手するなど、ブロックチェーン技術の社会実装が進んでいます。新総裁のもとで韓国銀行がCBDC中心の路線を推し進めることにより、今後は公共・民間の両面でトークン化された資産の流通がより本格化する可能性があります。
ポイント
- 韓国銀行の新総裁に申鉉松氏が就任し、CBDCとトークン化預金の活用拡大を最優先課題として提示しました。
- 国内の実証事業「漢江プロジェクト」第2段階を通じて、実生活や公共財政でのデジタル通貨利用を検証します。
- 国際プロジェクト「アゴラ」への参画を推進し、デジタル決済環境における韓国ウォンの国際的地位向上を目指します。
- ステーブルコインへの言及を避け、決済システムの安定維持と分断防止を重視する中央銀行主導の姿勢を示しました。
- 政府支出のトークン化や国債のトークン化実証が進む中、韓国の金融インフラのデジタル化がさらに加速する見通しです。