シンガポール金融管理局(MAS)は、現地の暗号資産リクイディティプロバイダーであるBsquared Technology Pte Ltd(以下、BSQ)の主要決済機関ライセンスを取り消しました。この措置は2026年5月14日付で発効し、同社はシンガポール国内でのデジタル決済トークン(DPT)サービスの提供が禁止されました。シンガポールが業界のリスク低減に努める中で、規制当局によるライセンスの取り消しは極めて異例の措置とされています。本件は、同国におけるWeb3・暗号資産企業への厳格なコンプライアンス管理を改めて浮き彫りにする出来事として注目されます。
ライセンス取り消しの経緯と重大な違反内容
MASの発表によると、BSQは2025年1月1日に「2019年決済サービス法(Payment Services Act 2019)」に基づくデジタル決済トークンサービスのライセンスを取得していました。しかし、同年に行われたMASの立ち入り検査により、同社の体制に複数の重大な違反が認められました。
具体的には、リスク管理体制や利益相反(コンフリクト・オブ・インタレスト)ポリシーにおける重大な弱点が指摘されたほか、関連会社とのアウトソーシング(外部委託)に関するガイドラインを遵守していなかったことが判明しました。さらに、ライセンスの初回申請時から検査期間にかけて、実質的に重要となる事項について、虚偽または誤解を招く情報を複数回にわたりMASに提出していたことが明らかになっています。
顧客資金への影響と今後の規制当局の対応
BSQはライセンス保有期間中、限定的な事業活動しか行っておらず、現在未払いの顧客資金や資産は保有していないと報告しています。しかし、同社はすべての顧客資金が適切に処理されていることを確認するため、監査人が発行した閉鎖証明書(closure certificate)を提出する必要があります。
また、MASは今回の違反を非常に深刻に受け止めており、同社の主要役員の責任範囲について現在見直しを進めています。シンガポールは暗号資産産業のリスク軽減を重視しており、規制要件に違反したり、不正確な情報を提供したりする事業者に対しては、今後も厳格な対応が取られる方針とされています。
ポイント
- 異例のライセンス取り消し処分:シンガポール金融管理局(MAS)が暗号資産関連の主要決済機関ライセンスを取り消すのは珍しい動きであり、同国の厳しい規制姿勢を示す点で注目されます。
- 虚偽情報の提供と管理体制の不備:リスク管理や利益相反ポリシーの弱点に加え、申請時や立ち入り検査時に虚偽または誤解を招く情報を複数回提出したことが、取り消しの決定的な要因となりました。
- 顧客資産への直接的な影響は限定的:BSQはライセンス保有中の活動が限定的であり、未払いの顧客資産はないと報告されていますが、監査人による証明書の提出が求められています。
- 役員責任の追及と厳格化する規制環境:MASは現在、同社役員の責任範囲を調査中であり、コンプライアンスを遵守しない事業者に対する厳しい監視が今後も継続される見通しです。