欧州委員会は、EUの画期的な暗号資産規制である「MiCA」の運用状況を評価するためのパブリックコンサルテーション(意見公募)を開始しました。この意見公募の期限は2026年8月31日までとなっており、広く一般や業界関係者からのフィードバックを募ります。今回の見直しは、急速に進化するデジタル資産市場やグローバルな規制競争の激化を背景に、現在の枠組みが依然として目的に適しているかを検証することを目的としています。規制の過度な負担を軽減し、欧州市場の競争力を維持するため、より高い比例性を求める声も上がっています。
欧州委員会によるMiCA規制の評価プロセスの開始
欧州委員会は2026年5月20日、EUの包括的な暗号資産規制である「MiCA(Markets in Crypto-Assets Regulation)」について、施行後の運用の実態を調査し、必要に応じた更新を検討するためのコンサルテーションを正式に開始しました。
MiCAは2024年に施行され、EU全域で暗号資産や関連サービスを管理する統一的な法的枠組みを構築したとされています。しかし、施行後もデジタル資産市場は急速な進化を続けており、米国やアジアなど他の主要地域でも暗号資産規制の整備が進んでいます。これに伴い、欧州委員会は現行の規制が市場や国際的な動向に照らし合わせて「目的に適しているか」を再評価する必要があると判断しました。
今回のコンサルテーションは、一般個人を対象としたオープンな「パブリックコンサルテーション」と、暗号資産発行者、サービスプロバイダー、金融機関、規制当局、学術界などの専門的なステークホルダーを対象とした、より技術的・法的な質問を含む「ターゲットコンサルテーション」の2つのルートで実施されます。意見の募集は2026年8月31日まで行われ、収集されたフィードバックは今後のEUのデジタル資産政策に反映される予定です。
議論の対象となる主要な領域とDeFiやステーブルコインの課題
今回の再評価では、MiCAの根幹をなすさまざまなモジュールや規制ルールが検証の対象となります。
具体的には、ステーブルコイン(資産参照トークンや電子マネートークン)や、暗号資産発行者、暗号資産サービスプロバイダーに関連するルールが含まれます。特にステーブルコインに関しては、現行のMiCAで禁止されている金利やそれに類する報酬の提供を再検討すべきかどうかが議論される見込みとされています。
また、主に中央集権的なサービスを想定して設計されたMiCAにおいて、管理主体の明確でない「DeFi(分散型金融)」をどのように監視・規制するかという課題や、伝統的な金融商品と暗号資産の境界線上にあるグレーゾーン(ラッピングトークンや合成資産、トークン化ファンドなど)の分類に関する課題も、今回の見直しの重要な焦点と報じられています。
業界が求める比例性と欧州市場の競争力維持
今回の見直しにあたり、MiCAの主要な交渉者や業界関係者からは、規制の過度な負担を防ぎ、欧州の競争力を維持するために、より高い「比例性(均衡性)」を確保すべきだという意見が上がっています。
比例性とは、企業の規模や取扱業務のリスクのレベルに応じて、適切な強度の規制を適用する原則を指します。一律に厳しいルールを適用するアプローチは、特にスタートアップや中小規模の事業者にとって大きな参入障壁となり、欧州におけるイノベーションを阻害する可能性があると懸念されています。
例えば、ステーブルコインを扱う事業者に対して、MiCAのライセンスと決済サービス指令に基づくライセンスの双方が重複して要求される「二重ライセンス」の懸念などが指摘されており、こうした規制の重複や複雑さを解消することが、欧州市場の健全な発展と国際的な競争力の維持につながると見られています。業界は、欧州市場がグローバルなイノベーション競争で後れを取らないよう、安全性を確保しつつも柔軟性を持たせた改善を求めていく可能性があります。
ポイント
- 欧州委員会がEUの暗号資産規制「MiCA」の運用状況を再評価するため、2026年8月31日を期限とする意見公募を開始しました。
- 今回の見直しは、デジタル資産市場の急速な進化や、米国・アジアにおける規制の進展など、世界的な規制競争の激化を背景に実施されます。
- ステーブルコインに対する金利提供の禁止ルールや、DeFi(分散型金融)の監視、金融商品の分類におけるグレーゾーンの解消などが主な検証対象とされています。
- 主要交渉者や業界関係者からは、中小企業への過度な負担を避け、欧州市場の競争力を維持するために、企業の規模やリスクに応じた比例性を重視したルール改善を求める声が上がっています。