イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、ネットワークのネイティブプライバシー(基盤レイヤーにおけるプライバシー機能)を強化するための短期的なアップグレード計画を提示しました。これは、ソーシャルメディアのX上で「プライバシーこそがイーサ(ETH)に真の貨幣性(Moneyness)をもたらす欠けている要素である」という議論が活発化したことを受けて示されたものです。提案されたロードマップは、取引の検閲耐性向上やメタデータ漏洩の防止など、実用的なプロトコルの改善に焦点を当てています。
Xでの議論から浮上した貨幣性とプライバシーの課題
イーサリアムコミュニティのメンバーや暗号資産アナリストの間で、イーサリアムのメインネット取引における実用的なプライバシー機能の欠如に対する懸念が示されました。X上での議論において、ネイティブプライバシーは資産に真の貨幣としての性質をもたらす要素であり、メインネットの利用需要を大きく高める要因になると指摘されました。これに対しブテリン氏は、現在開発中である複数の短期的なプロトコル改善策を提示し、イーサリアムがネイティブプライバシーの実現に向けて動いていることを明らかにしました。
ネイティブプライバシー強化に向けた3つの短期アプローチ
ブテリン氏が示したロードマップは、理論的な議論にとどまらず、以下のようなエンジニアリング面での実装に重点を置いています。
1. アカウント抽象化(AA)とFOCILの統合
アカウント抽象化(スマートコントラクトを用いて柔軟な取引承認を可能にする技術)と、検閲耐性フレームワークであるFOCILを組み合わせることで、プライバシープロトコルによる取引に対して強力なブロックへの取り込み保証を提供します。これにより、大手ブロック生成者(ブロックビルダー)によるプライベート取引の排除や検閲を防ぐことが期待されます。
2. キー付きノンス(Keyed Nonces)の導入(EIP-8250)
イーサリアムの取引は通常、順序を示すノンス(nonce)に従って処理されますが、これが原因で複数のプライベート取引を並行して行う際に衝突や遅延が発生する課題がありました。改善提案であるEIP-8250では、プライバシープロトコルのヌリファイア(nullifier)をキーとしてノンスを導出できるようにし、同一の共有送信者からの同時引き出しを可能にします。このEIP-8250は、イーサリアムの次期ネットワークアップグレードであるHegotaへの導入が計画されています。
3. アクセスレイヤーでのメタデータ保護
RPCクエリなどを介した外部からのユーザー活動の追跡を制限するため、データクエリ段階でのプライバシー強化が進められています。KohakuやPrivate Read(プライベートリード)といったソリューションにより、ユーザーがウォレットやアプリケーションとやり取りする際のメタデータ漏洩を防ぎます。
ビジネスパーソンにとっての重要性
暗号資産が真のデジタル通貨として機能するためには、取引の追跡可能性を抑え、匿名性を一定程度維持することが不可欠とされています。今回のプライバシー強化策は、機関投資家などのビジネス利用において懸念される機密性の確保に寄与する可能性があります。また、サードパーティのソリューションに依存せず、基盤レイヤー(L1)で直接ネイティブプライバシーを実装することで、イーサリアム全体の使いやすさと代替可能性(ファンジビリティ)が向上し、メインネットのトランザクション活性化につながると見られています。
ポイント
- イーサリアムの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が、基盤レイヤーでのネイティブプライバシーを強化する短期ロードマップを提示しました。
- X上での「プライバシーはイーサの貨幣性を高めるために欠かせない要素である」という議論に応じる形で示されました。
- 主な施策として、アカウント抽象化とFOCILの統合、キー付きノンス(EIP-8250)の導入、アクセスレイヤーでのメタデータ保護の3点が挙げられています。
- EIP-8250は、イーサリアムの次期アップグレードであるHegotaに含まれる予定です。
- サードパーティに依存しないL1でのプライバシー強化は、機関投資家の需要喚起やメインネットの活性化につながる可能性があるとして注目されます。