規制対応型クロスボーダー決済トレーダム ペイメント提供開始、JPYCとの連携でステーブルコインの実需利用を促進

海外取引向けの為替リスク管理サービスを提供するトレーダム株式会社は、2026年5月22日、海外の買い手がステーブルコインで決済し、日本国内の売り手が原則として日本円などの法定通貨で受け取ることができるクロスボーダー決済サービス、トレーダム ペイメントの提供開始を発表しました。同日に東京都内で開催された記者発表会には、サービス連携先であるJPYC株式会社の代表取締役、岡部典孝氏らも登壇しました。ステーブルコインのビジネス活用や今後の法規制対応、AIエージェント時代における役割などが語られ、Web3業界における実需決済の新たな展開として注目されます。

ステーブルコインを介した新たなクロスボーダー決済の仕組み

規制対応型クロスボーダー決済トレーダム ペイメント提供開始、JPYCとの連携でステーブルコインの実需利用を促進

トレーダム ペイメントは、海外の購入者がUSDCなどの米ドル連動型ステーブルコインで支払った後、トレーダム社側で日本円建てステーブルコインのJPYCに交換し、JPYC社を通じて日本円に償還した上で、日本国内の売り手企業の銀行口座へ日本円を送金するサービスです。

この仕組みにより、日本企業はステーブルコインを直接保有・管理するリスクや手間を負うことなく、海外で広がるデジタル決済ニーズに対応できます。従来の国際送金において課題であった手数料の高さ、着金までの時間、営業時間の制約、小口決済との相性などを解消し、より低コストでスピーディーなクロスボーダー決済の実現を目指しています。トレーダム社によると、海外の支払人がステーブルコインで支払い、日本企業が法定通貨で受け取るクロスボーダー決済サービスとしては、国内初の取り組みとされています。

発表会で岡部氏はステーブルコインのクロスボーダー利用について、政府や自民党内でも後押しする動きがあると言及し、今回の取り組みは時代の流れに沿ったサービスであると評価しました。

JPYCの1回100万円への上限変更と規制対応への展望

JPYC社は5月15日、発行・償還プラットフォームであるJPYC EXのアップデートを発表し、発行上限を従来の1日100万円から1回100万円に変更しました。

発表会において岡部氏は、従来の1日100万円では企業間を含む決済において発行上限としてあまりに小さすぎたため、今回の変更に至ったと説明しました。短時間での連続発行はできないものの、この変更はトレーダムのようなクロスボーダー決済における利便性を高めるものとされています。

また岡部氏は、トレーダム側が今後、電子決済手段等取引業など必要な登録を進めることで発行体との取引のあり方も変わり得るとの見方を示し、登録取得までの過程において今回の1回100万円への上限変更は意味があるとの認識を示しました。さらに今後は、償還に関する改善も検討しているとしています。

AIエージェント決済と競合による業界活性化への期待

発表会では、未来の決済インフラにおけるステーブルコインの役割についても議論されました。岡部氏は、将来的に普及が見込まれるAIエージェント(自律的に行動するAIシステム)が銀行口座を持たない、いわゆるアンバンクな存在であることに触れ、AIはほぼ全てアンバンクであるため、ステーブルコインが使われるようになるのは確実であるという見解を示しました。

さらに、国内の円建てステーブルコインをめぐる競合関係についても話題が及びました。SBIホールディングスの北尾吉孝氏が5月1日の決算説明会にて、同社が進める信託型円建てステーブルコインのJPYSCに言及し、JPYCの買収を検討したものの価格面で折り合わず断念したことや、自社が動き出したら潰れてしまうのではないかと考えたなどと発言したことが報じられていました。

これに対し岡部氏は、北尾氏の発言を北尾さん流のエール、あるいは叱咤激励だと受け止めていると説明しました。他社との競争を歓迎する姿勢を示し、信託型の第1号として3メガバンクやSBIにしっかり取り組んでほしいと述べた上で、無事故・無違反で業界全体を盛り上げていきたいと語りました。

ポイント

  • トレーダム社が、海外の支払人がステーブルコインで決済し、日本企業が法定通貨で受け取れる国内初のクロスボーダー決済サービスであるトレーダム ペイメントの提供を開始しました。
  • 決済プロセスにおいて、USDC等のステーブルコインから日本円建てステーブルコインのJPYCへの交換・償還ステップを組み込むことで、日本企業がステーブルコインを直接管理しない仕組みを実現しています。
  • JPYC社は発行上限を1日100万円から1回100万円に引き上げ、企業間決済などの実用性を向上させました。
  • 岡部氏は、銀行口座を持たないAIエージェントの決済手段として、ステーブルコインが不可欠になると予測しています。
  • SBI北尾氏の買収断念や競争に関する発言に対し、岡部氏は叱咤激励と受け止め、業界全体の発展を歓迎する姿勢を表明しました。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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