予測市場大手のカルシとポリマーケットが、米ネバダ州およびワシントン州で進む賭博関連訴訟の差し止めを求めた申し立てにおいて敗訴しました。2026年5月21日、第9巡回区控訴裁判所の3人体制の合議体は、両社による下級審判断の差し止め請求を退け、訴訟を州裁判所に戻す命令を下しました。この判断は、連邦規制下またはその枠組みを主張する予測市場プラットフォームにとって新たな後退となり、州政府による賭博規制の適用を巡る対立がさらに深まる可能性があります。
連邦裁判所の管轄主張が退けられ、舞台は州裁判所へ
第9巡回区控訴裁判所の合議体は、カルシとポリマーケットがこれらの訴訟を連邦裁判所で扱うべきだと主張するうえで、勝訴の見込みを十分に示せなかったと判断しました。
米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下で運営される中央集権型のカルシと、ポリゴンブロックチェーン上で暗号資産を用いて動作するとされているポリマーケットは、スポーツや政治などのイベント結果に連動する契約について、CFTCが排他的管轄権(特定の事項についてその機関だけが持つ独占的な管轄権)を持つと主張してきました。
しかし、裁判所は、企業側が連邦法による州法の無効化、いわゆるプリエンプション(連邦法による州法の無効化)を抗弁として主張しているだけでは、連邦裁判所の管轄が自動的に生じるわけではないと指摘しました。命令では、商品取引所法に基づくプリエンプション抗弁は積極的抗弁(相手の請求を認めつつそれを覆すための新たな事実を主張すること)であり、それだけで連邦問題管轄を生じさせることはできないと説明されています。また、ポリマーケットがCFTCの監督要件を遵守しているため連邦当局の監督下で運営されているとする主張も退けられました。
ネバダ州とワシントン州における具体的な争点
今回の訴訟において、ネバダ州とワシントン州は、両社が提供する予測市場の契約が州法上の無免許賭博にあたると主張しています。
ネバダ州の訴訟では、カルシとポリマーケットがゲーミングライセンス(賭博事業を運営するための許可証)を持たずに商品を提供している点が主な争点となっています。一方、ワシントン州の訴訟では、カルシの商品が違法賭博に該当するかが焦点となっています。
予測市場は現実世界の出来事の結果に連動する契約を取引する仕組みですが、州の規制当局はこれらを州法で規制すべき賭博行為とみなしており、連邦法を盾にする企業側との間で解釈の相違が浮き彫りになっています。
激化する連邦と州の管轄権争いと業界への影響
今回の判断は、連邦規制下の予測市場プラットフォームにとって新たな後退を意味します。米国ではオハイオ州やネバダ州でも、州の賭博規制当局側に有利な流れが強まっています。
一方で、連邦機関であるCFTCは、州政府による連邦規制市場への干渉は不当であるとして反撃を進めています。CFTCはこれまでに、ウィスコンシン州、ミネソタ州、ニューヨーク州などの州政府を相手取り、連邦規制の独占的権限を主張して提訴を行ってきました。
このように、急速に拡大する予測市場の監督権限を巡る連邦と州の対立は激化しており、今回の判決は州独自の賭博規制を適用しようとする動きをさらに後押しする可能性があると見られます。
ポイント
- カルシとポリマーケットによる、ネバダ州・ワシントン州の賭博訴訟に対する差し止め請求が却下され、訴訟は州裁判所へ差し戻されました。
- 裁判所は、連邦法による州法の無効化(プリエンプション)を主張するだけでは連邦裁判所の管轄を認める根拠にはならないと判断しました。
- ネバダ州はゲーミングライセンスの有無を、ワシントン州は商品の違法賭博該当性をそれぞれ争点としており、州法に基づく規制の適用を求めています。
- CFTCは予測市場の監督権限が連邦政府にあるとして複数州を提訴していますが、今回の判決は州の規制当局側に有利な流れを強める可能性があります。
- 予測市場の法的地位を巡る連邦と州の管轄権争いは、今後のWeb3や金融ビジネスにおける規制環境に影響を与える可能性があります。