米商品先物取引委員会(CFTC)は2026年6月10日、急速に拡大している予測市場に対する包括的な規制案を発表しました。一部の州当局による反対があるものの、スポーツ賭博は全面的に容認する一方、テロや暗殺、戦争に関連する契約は厳しく制限する内容となっています。この規制案は、市場の急成長に伴うインサイダー取引への懸念や、監督機関としての管轄権および監督能力をめぐる議論が高まる中で発表され、今後の業界のあり方に大きな影響を与える可能性があると見られます。
規制案の具体的内容と対象範囲
今回発表された267ページに及ぶ規制案では、取引される契約の種類ごとに許容または禁止の推定を設けたうえで、個別に「公共の利益」の観点から審査する仕組みが提案されています。
スポーツ分野においては、最終スコアや勝敗などの結果に基づく契約が原則として容認される見込みです。CFTCはスポーツに関するベットについて、公共の利益に関する懸念を引き起こす可能性は低いとの見解を示しています。一方で、特定のプレーや選手の負傷、ユース年代のスポーツを対象とした契約は禁止される方針です。なお、選挙や金融イベントについては、規制対象となる「賭博」には含まれないとされています。
これに対し、テロ、暗殺、戦争などに関連する契約は、より厳格に制限されることになります。
予測市場の急成長とインサイダー取引対策
Polymarket(ポリマーケット)やKalshi(カルシ)などのプラットフォームは、2024年の選挙を契機に利用が拡大し、市場が急成長しました。これらは、将来発生するイベントの結果を予測して取引を行う予測市場プラットフォームであるとされています。
市場の拡大に伴い、インサイダー取引などの不正行為が問題視されてきました。実際に2026年春には、非公開情報を用いてPolymarketで賭けを行ったとして現役の陸軍兵が司法省に逮捕される事案が発生しています。これを受けて各プラットフォームは、不正対策を相次いで導入するなど、市場の健全性を高めるための対応を進めています。
州政府との管轄権争いと監督能力を巡る懸念
今回の規制案の背景には、二つの大きな緊張関係が存在しています。
一つは、州政府との管轄権をめぐる対立です。CFTCは予測市場を連邦規制下にあると位置づけていますが、ミネソタ州やウィスコンシン州などの一部の州政府が州内での禁止措置をとったことに対し、これを越権行為として提訴するなど対立が続いています。
もう一つは、CFTCの監督能力に対する懸念です。エリザベス・ウォーレン米上院議員は2026年6月5日にCFTCのマイケル・セリグ委員長へ書簡を送り、職員の約25%削減や執行件数の減少を指摘しました。ウォーレン上院議員は、CFTCが暗号資産企業と予測市場の双方を十分に監督できる体制にあるのか疑問を呈しています。
これに対し、セリグ委員長は「責任あるイノベーションを妨げることなく、規制対象市場の健全性を守る」との声明を発表し、今後も追加の規則整備を行う可能性を示唆しています。
ポイント
- 米CFTCが、急成長する予測市場の健全性を確保するための包括的な規制案を発表しました。
- スポーツの勝敗などの契約は原則容認される一方、テロや暗殺、戦争に関する契約は厳しく制限されます。
- 予測市場は2024年の選挙を機に急成長したものの、インサイダー取引などの不正対策が課題となっています。
- 規制の主導権を巡り、CFTCと一部の州政府との間で管轄権争いが続いています。
- 職員削減に伴うCFTCの監督能力への懸念が、米上院議員などから指摘されています。