米決済大手のVisa(ビザ)は、年次イベント「Visa Payments Forum 2026」において、人工知能(AI)、ステーブルコイン、トークン化を軸とする新たな決済インフラ構想を発表しました。また、OpenAIとの戦略的提携も発表し、AIエージェントが自律的に取引を行う「エージェント型コマース」への対応を本格化させています。この取り組みは、従来の決済ネットワークにAIやブロックチェーン技術によるプログラム可能なマネーを融合させ、安全で信頼性の高い次世代の決済環境を再構築する試みとして注目されます。
ステーブルコイン決済の拡大とバックエンドの再構築
Visaの最高製品・戦略責任者であるJack Forestell(ジャック・フォレステル)氏は、AIが商取引のフロントエンドを変革する一方で、ステーブルコインがバックエンドを再構築していると述べています。同社は、これら新たな仕組みを安全かつ信頼できる形で世界規模に機能させることを目指しています。
ステーブルコイン分野において、同社は複数の地域、ブロックチェーン、通貨にまたがる決済実証を拡大しています。すでにVisaNet上で処理されたステーブルコイン決済額は数十億ドル規模に達しており、2026年3月時点における年率換算のペースは約70億ドル(約1兆1200億円、1ドル=160円換算)となりました。
現在、発行銀行はすでにVisaとの間でオンチェーン上の週7日決済を行っていますが、今後はこの対象を加盟店契約会社にも広げる方針が示されています。これにより、ブロックチェーンを活用した常時稼働の決済ネットワークがさらに拡大するものと見られます。
OpenAIとの提携によるAIエージェント決済の実現
AI分野では、AIエージェントが消費者や企業に代わって自動的に取引を開始する「エージェント型コマース」への対応を強化しています。その中核となるのが、AIエージェントが安全に商品やサービスを検索し、取引を完了させるための基盤「Visa Intelligent Commerce」です。
具体的な取り組みとして、加盟店が自社サイトでAIエージェントによる操作や購入完了が可能かを評価できる「Agent Score」や、信頼できるエージェントや加盟店を登録する「Agentic Directory」が導入されました。
さらに、AI開発大手のOpenAIとの戦略的提携により、ユーザーが設定した支出上限や加盟店制限、承認条件といったルールのもとで、AIエージェントが安全にVisa決済を開始できる環境が整えられます。
トークン化の機能強化と不正検知AIの導入
安全な取引の実現に向けて、トークン化(カード情報を安全な暗号化トークンに置き換える技術)の機能強化とAIモデルの活用も進められています。
トークン化においては、取引の種類や場所、支払主体に関するデータを拡充し、利用履歴などに基づく信頼シグナルを提供します。これにより、カード発行会社は承認判断に使える情報が増え、加盟店は誤った取引拒否を減らすことが可能になります。
加えて、数十億件の取引データで訓練された新たなAIモデル「Large Transaction Model」が発表されました。このモデルは、不正検知の精度を向上させつつ、誤った取引拒否を減らして決済承認率を改善することを目指しています。
ポイント
- VisaはAI、ステーブルコイン、トークン化を統合した新たな決済インフラ構想を発表しました
- ステーブルコイン決済の年率換算ペースは2026年3月時点で約70億ドルに達しており、今後は加盟店契約会社にも週7日オンチェーン決済を拡大する方針です
- OpenAIとの戦略的提携により、あらかじめ設定された制限下でAIエージェントが自律的に決済を実行できる環境を整備します
- AIエージェントの安全な取引を支援する「Agent Score」や「Agentic Directory」などのツールを導入します
- 数十億件の取引データで訓練されたAIモデル「Large Transaction Model」の導入により、不正検知と決済承認率の向上を目指します