ふくおかフィナンシャルグループ傘下のデジタルバンク「みんなの銀行」は、ステーブルコイン決済サービスを手がける「Slash Vision」とWeb3領域における価値共創に向けた基本合意書(MOU)を締結しました。この提携では、みんなの銀行が提供するBaaS(Banking as a Service:銀行機能を外部企業へ提供するサービス)基盤を活用し、Slash Visionの決済アプリに日本円の入出金などの銀行機能を組み込む開発が進められます。伝統的な金融インフラと先進的なWeb3技術が交わることで、Web2とWeb3の間のシームレスな接続を目指す試みとして、ブロックチェーン業界におけるマスアダプション(広範な普及)を加速させる一歩として注目されます。
BaaSを軸にWeb2とWeb3の接続を目指す
2026年6月12日に開催されたみんなの銀行の開業5周年記者発表において、取締役頭取の永吉健一氏はBaaS事業の戦略について説明しました。永吉氏は「Web3はBaaSの延長線上にある」と述べ、AIやAPIとの親和性が高いWeb3領域での接続をBaaSを通じて進めていく考えを強調しました。
提携の初期段階として、みんなの銀行のBaaS基盤を通じて、Slash Visionが提供する「Slash App」に日本円の入出金をはじめとする銀行機能を組み込み、サービスの高度化を図る計画です。
将来的には、両社の技術とライセンスを組み合わせ、トークン化預金とステーブルコインの交換を含む「日本円とUSDC(米ドル連動型ステーブルコイン)のオンランプ/オフランプ(相互交換)機能」の搭載も構想されています。これに向け、Slash Visionのグループ企業であるVision Financial Servicesは、電子決済手段等取引業の登録準備を進めているとされています。
ソラナ基盤とターゲット顧客の共通点
両社が協業を進める背景には、ソラナ(Solana)ブロックチェーンとターゲット顧客という2つの共通点があります。
Slash Visionが手がけ、USDCをチャージして利用できる「Slash Card」は、基盤チェーンとしてソラナを採用しています。同カードは2026年4月に国内での発行が開始されたとされています。
一方、みんなの銀行側でも、RWA(現実資産)のトークン化やステーブルコイン活用に関する検討を進めており、こちらもソラナ上での構築を目指しています。永吉氏は「同じチェーン同士の方が、サービスの連携や接続が容易になる」と説明しました。
また、両社ともに「デジタルネイティブ世代」を主な顧客ターゲットとして位置づけており、利用者層の親和性が高いことも協業を後押ししています。みんなの銀行は、スマートフォン完結型の銀行サービスを展開し、累計口座数は170万を突破しています。
ステーブルコイン事業の今後の展開と課題
みんなの銀行は2025年7月に、ソラナチェーン上でのステーブルコイン発行に向け、Solana Japan、Fireblocks、TISとの共同検討を開始したと発表しています。
その後の進捗について永吉氏は、取り組み自体は継続しているものの、商用化の時期については「まだそこまでの段階にはない」と説明しました。現在は、業務要件やデータ管理、金融サービスとしての設計などの検討を進めている段階であり、ブロックチェーンの透明性と、金融サービスに求められる秘匿性の両立が課題になっているとの認識を示しました。
今回のSlash Visionとの具体的なサービス開始時期や提供形態についても、これから詳細を詰めていく段階としています。
ポイント
- みんなの銀行とSlash Visionが、BaaS基盤を活用したステーブルコイン決済ソリューションの共同開発に向けて基本合意(MOU)を締結した点で注目されます。
- 提携により、決済アプリへの日本円入出金機能の実装や、将来的には日本円とUSDCの相互交換機能の搭載を目指す点で注目されます。
- 両社ともにソラナチェーンを基盤として採用・検討しており、同一チェーンを活用することでシームレスなサービス連携が期待される点で注目されます。
- デジタルバンクの持つ銀行ライセンスやBaaS機能と、Web3決済プロジェクトの技術を掛け合わせることで、Web2とWeb3を繋ぐマスアダプションへの貢献が期待される点で注目されます。
- 実用化に向けては、ブロックチェーンの透明性と金融サービスに求められる秘匿性の両立などが今後の課題とされています。