日本円ステーブルコイン比較!JPYC・JPYSC・メガバンク共同発行の違いと選び方【2026年】

日本円ステーブルコインは、JPYCのように今すぐ入手できるものから、3メガバンクが共同で準備を進めるものまで複数の銘柄が動き出しており、発行体も制度も入手経路もそれぞれ異なります。

ブロックチェーン上で動く日本円は、人間の決済だけのインフラではありません。AIエージェントが支払いの主体になるエージェント経済圏では、オンチェーンで安定した価値を保つ通貨が決済の土台になり、円建てステーブルコインはその経済圏へ日本円を接続する入り口になります。

この記事では、決済・財務・新規事業部門の担当者が社内比較資料の土台に使えるよう、主要銘柄の横並び比較、制度区分ごとの違い、手数料、リスク、自社に合う選び方までを2026年8月時点の一次情報で整理します。

この記事の要点です。

  • 一般の個人・法人が制限なく入手できるのは現状JPYCのみ。JPYSCは発行済みだがSBI VCトレード口座内限定(2026年8月時点)
  • 制度区分は資金移動業型・信託型・預金型の3つで、裏付け資産の保全の仕組みと利用条件が異なる
  • 3メガバンク共同発行やEJPYは準備・計画段階で、3メガは2026年度中の実取引開始をめざす段階
  • 自社で使う銘柄は用途(決済・送金・資金管理)→制度区分→コストの順で絞り込む
監修:ブロックチェーンマガジン編集部

株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイト編集方針をご覧ください。

日本円ステーブルコインとは

日本円ステーブルコインとは、日本円と1対1の価値の連動を目指して発行され、ブロックチェーン上で送金・決済・保有ができるデジタルマネーです。1単位が1円に対応し、発行体が円建て資産などの裏付けを保有することで価値を安定させます。ステーブルコイン全体の仕組みは別記事で解説しているため、この記事は円建ての各銘柄の比較と、自社の用途に合うものの選び方に絞ります。

日本円ステーブルコインの発行と償還の仕組みの図

法制度の面では、日本では法定通貨建てで発行価格と同額での償還が想定される一部のステーブルコインについて、資金決済法上の「電子決済手段」として整理される枠組みが設けられています。2026年6月1日に施行された改正資金決済法では、電子決済手段の枠組みに加えて裏付け資産の厳格な管理義務が定められ、発行体が守るべきルールが一段明確になりました。JPYCはこの枠組みのもとで資金決済法上の電子決済手段として発行されており、発行体のJPYC株式会社は資金移動業者として金融庁の登録一覧に掲載されています。

実物のサービスも動き始めています。2025年10月27日にJPYC株式会社が資金移動業型の「JPYC」の発行を開始し、2026年6月24日にはSBI新生信託銀行が発行する信託型の「JPYSC」がSBI VCトレードで取扱を開始しました。2025年9月に当社Pacific Metaが共催したJapan Stablecoin Summit 2025には300名が来場しており、発行体・金融機関・事業会社が同じテーブルで実装を議論する段階に入っています。

つまり現在は制度の枠組みと複数の発行体が揃い、「どの銘柄を使うか」を比較検討できる局面です。

日本円ステーブルコイン主要銘柄の一覧比較

比較の前に、この一覧の範囲を定義します。この記事では「日本円と1対1の連動を掲げてブロックチェーン上で発行・流通する(または発行を公表している)もの」を円建てステーブルコインとして数えます。法的には電子決済手段に当たるものと、銀行預金をトークン化した預金型(預金トークン)で性質が異なるため、表の制度区分の列で明示します。海外発行の円建てステーブルコイン(GYEN)は発行体の公表で日本国内居住者への販売が対象外とされているため、参考行に分けます。

この基準で数えると、国内の日本円ステーブルコインは発行済み・準備中を合わせて6銘柄です。参考として海外発行の1銘柄を加えた7本を横に並べます(2026年8月13日時点の各発行体公表情報にもとづく整理)。

銘柄発行体制度区分提供状況入手経路・利用可能者主な想定用途
JPYCJPYC株式会社資金移動業型(電子決済手段)2025年10月27日発行開始発行・償還プラットフォームJPYC EX。個人・法人とも利用可少額の対外決済・送金、法人の資金管理
JPYSCSBI新生信託銀行信託型(信託受益権)2026年6月24日取扱開始SBI VCトレード口座内限定(入出庫は未対応)口座内での売買・保有(流通拡大は今後)
3メガバンク共同ステーブルコインみずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行の3行(共同委託者。発行は受託者の信託銀行等)信託型計画段階。2026年度中の実取引の開始をめざす(2026年6月10日発表)非公表企業間決済(詳細は今後公表)
EJPY日本ブロックチェーン基盤株式会社信託型(受託者は協議中)計画段階。2026年度内の発行・流通を目指す(2026年5月13日発表)非公表(決定次第公表)Japan Open Chain上の決済(詳細は今後公表)
トチカ北國銀行預金型2024年4月1日サービス開始マイナンバーカードと北國銀行の普通預金口座を持つ人地域内の店舗決済(トチツーカ加盟店)
DCJPY民間銀行(事例ではGMOあおぞらネット銀行)預金型(トークン化預金)2024年8月28日発表の取引で利用開始非公表(DCJPYネットワーク参加者向け)企業間の決済・デジタルアセット取引
(参考)GYENGMO-Z.com Trust Company(米国法人)海外発行(米銀行法規制下)発行済み日本国内居住者への販売は対象外海外市場での円建て取引

表の6銘柄は提供状況で3区分に分かれます。第1に、一般の個人・法人が制限なく入手できるのはJPYCです。第2に、JPYSC・トチカ・DCJPYは発行済みですが利用者が限定され、JPYSCはSBI VCトレードの口座内(パブリックチェーン上での流通は監督当局の確認後を目指す段階)、トチカは北國銀行の口座保有者、DCJPYはネットワーク参加者に限られます。第3に、3メガバンク共同ステーブルコインとEJPYは発表済みでもまだ発行されていない計画段階で、既発行の銘柄と同列には比較できません。

流通の実績にも差があります。JPYCはJPYC社の発表によると2026年5月30日時点で累計発行額30億円超・累計口座19,000件、2026年7月10日の発表ではオンチェーン流通額が20億円を超えました(累計発行額は発行の総量、流通額はオンチェーン上に存在する残高で、指す量が異なります)。一方で3メガバンク共同ステーブルコインは、2025年11月に金融庁のFintech実証実験ハブの支援決定を受けた実証実験を経て、2026年6月10日に3行が信託契約にもとづく共同発行と、運営・ガバナンスを検討する協議会の設置に向けた基本合意を発表した段階です。EJPYも発行体の日本ブロックチェーン基盤株式会社が2026年5月13日に発行方針の決定を公表し、受託者となる事業者と協議を進めているとしています。発表の見出しだけを見ると横一線に見えますが、実際に動いている量と時期はここまで違います。

一般の法人が今すぐ入手して使えるのは現状JPYCが中心で、企業間の大口決済はメガバンク系を含む信託型が2026年度中の立ち上がりを待つ候補、地域決済や特定ネットワーク内の用途は預金型という住み分けです。自社の用途がどこに当たるかは、後述の選び方の章で判断基準を示します。

資金移動業型・信託型・預金型のステーブルコイン制度差

前章の表にあった「制度区分」は銘柄を選ぶ際の土台になる違いです。日本円ステーブルコインの発行スキームは資金移動業型・信託型・預金型の3類型に分かれ、発行できる主体、裏付け資産の守り方、償還の受け方が変わります。銀行が関わるデジタル円がすべて同じ制度に乗っているわけでもなく、信託型と預金型では保有者の権利の性質が異なります。

日本円ステーブルコイン3類型(資金移動業型・信託型・預金型)の制度差の図
項目資金移動業型信託型預金型
発行主体の例資金移動業者(JPYC株式会社=関東財務局長第00099号・第二種)信託銀行等(JPYSC=SBI新生信託銀行。3メガバンク共同型は3行が共同委託者)銀行(トチカ=北國銀行、DCJPYの事例=GMOあおぞらネット銀行)
裏付けの守り方発行残高に応じた資産の保全義務。JPYCは円預貯金・国債で発行残高の100%以上を保全信託契約にもとづき受託者が財産を管理銀行預金そのものが裏付け(預金債権)
1回あたりの金額JPYCは発行・償還1回あたり上限100万円(利用者間送金に上限規定なし)SBI VCトレードはJPYSCの売買・入出庫に金額制限を設けていない各銀行のサービス設計による
保有者の権利発行体への償還請求信託受益権にもとづく償還預金債権

個人・法人が直接入手できる資金移動業型

資金移動業型は資金移動業の登録を受けた事業者が発行する形です。JPYCがこの類型で、金融庁の資金移動業者登録一覧(2026年7月31日時点)に第二種資金移動業者として掲載されています。第二種の制約として発行・償還は1回あたり100万円が上限ですが、利用者間の送金自体に上限規定はありません。

企業から見た特徴は、公開されたプラットフォーム経由で個人・法人がそのまま入手できる開放性です。少額の対外決済や送金を試す入り口として、参入障壁が最も低い類型といえます。

大口決済を想定する信託型

信託型は信託銀行等が受託者となる信託契約にもとづいて発行する形です。JPYSCのほか、3メガバンク共同ステーブルコインも3行を共同委託者とする信託契約で発行するスキームが公表されており、EJPYも信託型スキームでの発行方針を決定しています。

金額面の設計は資金移動業型と対照的です。SBI VCトレードはJPYSCの売買・入出庫に金額制限を設けないと公表しており、JPYCの1回100万円上限とは異なる水準の取引を想定できます。企業間の大口決済で信託型が候補に挙がる理由がここにあります。ただし2026年8月時点でJPYSCは口座内限定、メガバンク系とEJPYは計画段階のため、実際に大口決済へ使える時期は各行・各社の公表を待つ必要があります。

銀行預金をトークンにした預金型

預金型は銀行預金そのものをブロックチェーン上で移転できるようにした形で、預金トークンとも呼ばれます。トチカは北國銀行が発行し、マイナンバーカードと同行の普通預金口座を持つ人が地域の加盟店決済に使います。DCJPYは株式会社ディーカレットDCPが運営するネットワーク上で民間銀行が発行するトークン化預金で、2024年8月にはGMOあおぞらネット銀行が発行するDCJPYを使った環境価値の決済取引が始まりました。

保有者の権利が預金債権のまま残る点が、電子決済手段型との根本的な違いです。この違いは次々章の用語整理で改めて切り分けます。

3類型の制度差は安全性の優劣ではなく、上限・償還・権利の設計差です。自社の用途に対してどの設計が合うかという軸で見ると、比較が具体的になります。

日本円ステーブルコインの手数料比較

銘柄の絞り込みで次に効くのがコストです。発行(入手)・償還(出金)・送金の3つの場面に分けて、公表されている手数料を横並びにします(2026年8月13日時点・各発行体の公表資料にもとづく)。

銘柄発行・入手償還・出金送金
JPYC無料(将来徴収の可能性の注記あり)。1回上限100万円・下限3,000円無料(同上)。上限・下限も同じチェーンごとのガス代がかかる
JPYSC入出金手数料は無料、取引はスプレッドなし同左口座内限定のため外部送金は未対応
3メガバンク共同非公表非公表非公表
EJPY非公表(発行条件は決定次第公表)非公表非公表
トチカチャージは預金口座から(利用者手数料の記載なし)換金は月1回まで無料、2回目以降は1回110トチカ加盟店側の決済手数料0.5%(税込)
DCJPY非公表非公表非公表

まず注意したいのは「無料」の読み方です。JPYCの発行・償還手数料は契約締結前交付書面(2026年6月2日時点)で無料とされていますが、将来徴収の可能性が明記されています。また手数料が無料でも、ブロックチェーン上の送金にはチェーンごとのガス代がかかります。JPYCはEthereum・Avalanche・Polygon・Kaiaの4チェーンに対応しており(2026年6月2日時点)、どのチェーンで運用するかによって送金コストの水準が変わります。手数料欄の「無料」だけで比較を終えず、償還の条件とチェーン別のコストまで含めた総コストで比較します。

注目したいのは、空欄の多さそのものです。6銘柄のうち3銘柄(3メガバンク共同・EJPY・DCJPY)は手数料が全項目非公表で、比較表が埋まらない状態が2026年8月時点の実態です。計画段階・限定提供の銘柄はコスト構造を公表しておらず、検討初期の企業が使える情報には大きな格差があります。裏を返せば、非公表の銘柄を候補に含める場合は、公表を待つか発行体側への直接確認を前提に検討スケジュールを組む必要があります。

また預金型のトチカは、コストの負担者が他の銘柄と異なります。利用者側のチャージに手数料の記載はなく、換金も月1回までは無料ですが、加盟店側が0.5%(税込)の決済手数料を負担する設計です(2024年4月1日の北國銀行リリースにもとづく)。企業が「支払う側」で使うのか「受け取る側」で使うのかによって、同じ銘柄でもコストの見え方が変わる実例です。

なお銀行振込など従来手段との比較は、送金額・頻度・相手先の口座環境で結論が変わるため一概に示せませんが、上表のとおり発行・償還を無料とする銘柄が存在すること自体が、既存の送金コストを見直す材料になります。

日本円ステーブルコインと混同されやすい用語の違い

円建てのデジタル通貨には似た名前が多く、社内資料の段階で混同が起きがちです。混同の原因ははっきりしていて、「日本円と連動するデジタルなお金」という見た目が同じでも、保有者が持つ権利と発行主体の規制がそれぞれ違うためです。ここを混ぜたまま検討を始めると、会計処理や利用可否の確認先まで揃ってずれます。

見た目ではなく権利と発行主体の軸で切ると、次のように整理できます。

用語保有者の権利発行主体日本円ステーブルコイン(電子決済手段型)との違い
預金トークン(トチカ・DCJPY)預金債権銀行銀行預金の移転手段であり、預金の枠組みの中で動く
CBDC(デジタル円)制度設計は検討中で、権利の性質も未確定中央銀行日本銀行が検討を進めている段階で、発行は決定していない
ドル建てステーブルコイン(USDC・USDTなど)発行体への償還請求(米ドル建て)海外の発行体連動先が米ドルで、為替変動の影響を受ける
海外発行の円建てステーブルコイン(GYEN)発行体への償還請求米国法人(GMO-Z.com Trust Company)円建てだが米銀行法規制下で発行され、日本国内居住者への販売は対象外

このうち実務で最も混同されやすいのが預金トークンです。トチカやDCJPYは「円建てステーブルコイン」として紹介されることもありますが、保有者の権利は預金債権のままで、電子決済手段として発行されるJPYCやJPYSCとは法的な性質が異なります。本記事の一覧表で制度区分の列を分けているのはこのためです。

CBDCは中央銀行自身が発行するデジタル通貨で、民間発行のステーブルコインとは主体がそもそも違います。日本では発行の可否自体が決まっておらず、比較検討の対象になる段階ではありません。

またGYENのように円建てでも海外発行のものは、扱いが別枠になります。GYENはGMOインターネットグループの米国法人が米銀行法規制のもとで発行し、裏付け資産は連邦預金保険公社(FDIC)の被保険銀行で保管されますが、発行体の公表では日本国外で流通するものとされ、日本国内居住者への販売は対象外です。「円建て」という言葉だけで国内の検討リストに載せないよう注意が必要です。

ドル建てのUSDC・USDTとの違いは、連動先の通貨そのものです。ドル建てで受け取った資産は円換算の価値が為替で動くため、円建ての決済・資金管理を目的とする場合の代替にはなりません。国境をまたぐ取引でドル建てを使う場面と、国内の円建て決済を設計する場面は要件を分けて整理します。

日本円ステーブルコインに関するよくある誤解

検討の初期に見かける説明には、実態とずれているものが混ざっています。社内の議論で引っかかりやすい4つを、実際の内容と対にして整理します。

よく見かける説明実際
円建てステーブルコインはどれも同じ制度に乗っている資金移動業型・信託型・預金型の3類型があり、発行主体・金額設計・保有者の権利が異なる。同じ「銀行系」でも信託型と預金型は別物
手数料無料だからコストゼロで使えるJPYCの発行・償還無料には将来徴収の可能性が注記されており、送金時にはチェーンごとのガス代がかかる。総コストで見る必要がある
銀行が発行するなら元本保証と同じ類型ごとに保全の仕組みが違い、権利の性質も預金債権・信託受益権・償還請求権と分かれる。「銀行が関与している」ことと保証の中身は切り分けて確認するもの
まだ構想段階で実物はないJPYCは2025年10月から発行済みで、2026年7月10日のJPYC社発表ではオンチェーン流通額が20億円を超えた。トチカ・DCJPYも稼働済み。一方で3メガバンク共同型とEJPYは計画段階で、銘柄ごとに進度が違う

4つに共通するのは、「円建てステーブルコイン」をひとくくりに語ると誤るという構造です。銘柄ごとの制度区分と提供状況を確認してから議論する、という手順を踏むだけで、この種の誤解はほぼ避けられます。

日本円ステーブルコインのリスク

制度が保全義務を課していても、リスクがゼロになるわけではありません。2026年6月施行の改正資金決済法は裏付け資産の厳格な管理を発行体に義務づけましたが、発行体ごとの保全・償還体制の確認は利用者側の仕事として残ります。企業が保有・利用を検討する際に確認すべきリスクは、発行体・準備資産・規制・スマートコントラクト・カウンターパーティーの5つです。それぞれ、円建てステーブルコイン固有の確認論点まで下ろして整理します。

発行体リスク

発行体の経営や事務処理体制に問題が生じると、発行・償還の停止や遅延が起こりえます。円建てステーブルコインは発行体ごとに保全・償還の体制が異なるため、確認も銘柄単位で行います。JPYCであれば裏付け資産を円預貯金・国債で発行残高の100%以上保全すると公表しており、この公表内容と実際の運営体制が確認の起点になります。

準備資産リスク

裏付けとなる資産の構成と管理方法のリスクです。円建て資産で保全されていても、資産の種類・保管先・分別管理の方法は発行体ごとに違います。信託型は信託契約にもとづく管理、資金移動業型は保全義務にもとづく管理と、守られ方の仕組み自体が類型で異なるため、自社が使う銘柄の保全スキームを一次情報で確認しておく必要があります。

規制リスク

2026年6月1日施行の改正資金決済法で裏付け資産の管理義務が強化されたように、制度は現在も動いています。規制の変更は手数料体系・利用条件・会計処理に波及しうるため、導入後も金融庁の公表を追う体制が要ります。計画段階の銘柄は、規制対応の結果として提供時期や仕様が変わる可能性も織り込んでおくべきです。

スマートコントラクトリスク

ブロックチェーン上で発行される以上、トークンを制御するプログラムの不具合や脆弱性のリスクは残ります。対応チェーンが複数ある銘柄では、どのチェーンで運用するかによって技術リスクの所在も変わります。発行体の監査体制や過去のインシデント対応を確認の対象に含めます。

カウンターパーティーリスク

発行体以外の関与者、たとえば取扱事業者・受託者・ネットワーク運営者に起因するリスクです。JPYSCのようにSBI VCトレードの口座内で保有する形では同社のサービス継続が前提になり、DCJPYのようにネットワーク型の仕組みでは運営会社と参加銀行の双方が関与します。自社とトークンの間に何社が挟まるかを図にして、それぞれの障害時に何が起きるかを確認しておくと、リスクの全体像を漏れなく押さえられます。

どのリスクでも問われるのは、制度が守ってくれる範囲と発行体・関与者を自社で確認すべき範囲の線引きです。この線引きの作業が、次章の選定プロセスにそのまま組み込まれます。

自社に合う日本円ステーブルコインの選び方と検討の進め方

自社で使う銘柄は用途から逆算して絞り込みます。ここまでの比較を、企業の代表的な3つの用途に当てはめます。

  • 少額の対外決済・送金:一般に入手できる資金移動業型(現状はJPYC)が起点。1回100万円の発行・償還上限が業務フローに収まるかを確認
  • 企業間の大口決済:信託型が候補。ただしJPYSCは口座内限定、メガバンク系は2026年度中の実取引の開始をめざす段階のため、開始時期を前提に計画を組む
  • 待機資金・余剰資金の管理:入手のしやすさと償還条件が効くため、まず資金移動業型で小さく検証し、大口化の段階で信託型を再評価

3つの用途は排他ではありません。少額決済で運用に慣れてから資金管理へ広げる、あるいは資金管理の検証と並行して大口決済の情報収集を進めるといった段階設計が現実的です。重要なのは、最初の用途を1つに絞って比較表の列(制度区分・提供状況・入手経路・手数料)を自社の要件に読み替えることで、全銘柄を等距離で調べ続ける進め方では時間だけが過ぎます。

実際に企業の検討はすでに動き始めています。当社Pacific Metaは2026年2月に株式会社Wizleapに対し、ステーブルコインを活用した企業資産管理に向けた体制構築・業務プロセス整備の支援を開始しました。また当社自身も2026年5月にJPYCを活用した資産運用を開始しており、保有・運用・決済を一体で扱う法人の資金管理は、すでに検証が始まっている用途です。

用途と候補銘柄が決まったら、用途の特定から実行設計まで4段階で着手します。

  1. 用途の特定:どの業務のどの支払い・資金移動を置き換えるかを1つに絞る
  2. 銘柄の確認:候補銘柄の制度区分・提供状況・手数料を発行体の一次情報で確認する
  3. 社内論点の整理:法務・会計・システムの各部門で確認事項を洗い出す
  4. 小規模な実行設計:金額・期間・対象業務を限定した検証の計画を作り、稟議に載せる

このうち3の社内論点は、次のチェックリストで漏れを防げます。

検討の目的・論点確認すること確認先(一次情報)完了の判定
用途と銘柄の適合候補銘柄の制度区分・提供状況・入手経路が自社の用途に合うか各発行体の公式リリース・サービスページ候補を1〜2銘柄に絞り、選定理由を1枚にまとめた
コストの見積もり発行・償還手数料、送金時のガス代、非公表項目の有無発行体の交付書面・料金ページ想定取引量での年間コスト試算表ができた
法務・規制の確認自社の利用形態が電子決済手段の枠組みでどう扱われるか金融庁の公表資料、発行体の登録情報必要な社内規程の改定箇所を特定した
会計・税務の処理保有時・決済時の勘定科目と期末評価の方針顧問税理士・監査法人への確認記録経理部門が処理方針の合意文書を作成した
リスク管理体制5つのリスクごとの確認結果と、障害時の代替手段発行体の保全スキーム公表資料リスク評価シートが役員会説明に使える状態になった

制度区分・用途・コストの3つの変数は、法務・財務・事業部門にまたがって絡み合います。とくに非公表項目の多い銘柄を候補に含める場合、公表待ちの項目と自社で判断できる項目の切り分けが社内だけでは付きにくく、検討が止まる原因になりがちです。外部の知見を入れるなら、この切り分けの段階が最も効果的です。

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日本円ステーブルコインに関するよくある質問

CBDC(デジタル円)が発行されたら日本円ステーブルコインは不要になりますか

CBDCは中央銀行が発行するデジタル通貨で、日本では発行の可否を含めて検討段階にあり、発行は決定していません。一方で民間発行のステーブルコインはすでに稼働しており、企業間決済や資金管理など民間主導で設計できる用途を担っています。両者は発行主体も設計思想も異なるため、CBDCの検討状況を理由に企業側の検討を止める必要はありません。

JPYSCはなぜSBI VCトレードの口座内でしか使えないのですか

SBI VCトレードの公表によると、JPYSCは2026年8月時点で入出庫に未対応で、口座内での売買・保有に限定されています。監督当局の確認を経たうえでパブリックチェーン上での流通を目指すとされており、外部のウォレットや他社サービスへ移して使える段階ではありません。口座外での利用を前提とする業務設計は、流通開始の公表を待ってから具体化するのが確実です。

GYENのような海外発行の円建てステーブルコインは国内で使えますか

GYENはGMOインターネットグループの米国法人GMO-Z.com Trust Companyが米銀行法規制のもとで発行する円建てステーブルコインですが、発行体の公表では日本国外で流通するものとされ、日本国内居住者への販売は対象外です。国内企業の検討対象は国内の制度区分に乗る銘柄に絞ります。

法人が日本円ステーブルコインを保有する場合の会計・税務はどうなりますか

電子決済手段として発行されるステーブルコインの会計処理は、暗号資産とは区別して整理が進められています。勘定科目や期末の評価方法は利用形態によって変わるため、導入前に顧問税理士・監査法人への確認が必要です。なお暗号資産を併せて扱う場合の参考として、暗号資産の売却益は、現時点では原則として雑所得(総合課税)として扱われます。2026年7月に成立した金融商品取引法の改正法に伴い、暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産の売却など一定の取引から生じる所得は、改正法の施行日の翌年1月以降に申告分離課税へ移行する予定です(施行日は本記事の基準日時点で確定していません)。取引時点の取扱いは国税庁の公表資料で確認してください。

日本円ステーブルコインのまとめ

日本円ステーブルコインは、JPYC・JPYSC・3メガバンク共同・EJPY・トチカ・DCJPYと顔ぶれが揃い、制度区分の異なる複数の選択肢から用途で選ぶ市場になりました。今すぐ入手できる銘柄と計画段階の銘柄が混在し、手数料などの公表状況にも差があるため、比較は「自社の用途→制度区分→提供状況→コスト」の順で絞り込みます。

一方で、非公表項目の扱い、会計処理の方針、リスク評価の粒度といった論点は、部門をまたぐうえに前例の少ない判断が続くため、社内の情報だけで結論を出しにくい領域です。候補銘柄を絞る前の論点整理の段階から外部の実装知見を組み合わせると、検討の手戻りを減らせます。日本円がブロックチェーン上で動く前提はすでに整っており、Blockchain Magazineでは今後も各銘柄の一次情報にもとづく更新を続けます。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言・投資助言ではありません。暗号資産には価格変動リスクがあり、投資元本を失う可能性があります。個別の判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。