ODX(大阪デジタルエクスチェンジ)とは、SBIグループと三井住友フィナンシャルグループが2021年に設立した、株式とセキュリティトークン(ST)のPTS(私設取引システム)を運営する証券会社です。

ODXは2023年12月25日、STを売買する市場「START」で取引を始めました。不動産などを小口化したSTは、それまで証券会社との相対取引(店頭)で売り買いするのが基本でした。STARTの登場で、投資家の注文同士を付け合わせる市場での売買という選択肢が加わっています。
STを発行する企業にとっては、発行後に投資家がどう換金できるかを募集の段階で示せるかが、新しい設計論点になりました。トークン化された資産は、将来AIエージェントによる決済や運用の対象にもなりうる領域です。
- ODXはSBIとSMFGが設立したPTS運営会社
- STARTは2023年12月開業のSTの二次流通市場
- 売買は証券会社経由、1日2回の競争売買
- 取扱いの中心は不動産ST、他資産の取扱いは今後
- 発行体の論点は発行基盤と証券会社と流通手段の組み合わせ
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ODXとは
ODXは、証券取引所ではなく金融商品取引業者(証券会社)として私設取引システムを運営する会社です。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)がSBIグループと2021年4月1日に設立し、株式とSTの2つのPTSを運営しています。

設立後の2021年11月には、野村ホールディングスと大和証券グループ本社を加えた4社が第三者割当増資の引受けに合意しました。この時点の出資比率は、SBI PTSホールディングスが70%、SMFGが20%、野村と大和が各5%でした。2023年11月にはSBIホールディングスが、Cboe Global Markets、Virtu Financial、Optiver Holdingの資本参画を公表しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX) |
| 設立 | 2021年4月1日 |
| 設立時の出資者 | SBIグループ、三井住友フィナンシャルグループ |
| 本社 | 大阪市北区 |
| 登録 | 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3328号 |
| 運営市場 | 株式PTS(2022年6月運用開始)、ST市場START(2023年12月売買開始) |
名称に「エクスチェンジ」とあっても、上場の考え方は東京証券取引所とは別物として捉えるのが正確です。
ODXのST市場STARTの概要
STARTは、ODXが運営するSTの二次流通市場で、ODXは「日本初のSTの二次流通市場」と位置づけています。2023年12月25日に売買取引を始めました。

開始時の取扱銘柄は、次の2つの不動産STでした。
| 銘柄 | 方式 |
|---|---|
| ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町 | デジタル名義書換方式 |
| いちご・レジデンス・トークン−芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩− | デジタル名義書換方式 |
※2023年12月25日時点でODXが公表した取扱銘柄です。
ケネディクスの銘柄は、2023年11月20日にODXからSTARTでの取扱い承認を得た公募型不動産STでした。開始時の取引参加者はSBI証券、大和証券、SMBC日興証券、野村證券の4社で、このうち野村證券とSMBC日興証券は参加予定者という扱いでした。
ODXの公式FAQでは、STARTで取引できるのはODXが取扱いを承認した不動産STとされています。ODXは不動産以外のSTの取扱いも目指しており、他資産の上場は今後の論点です。
ODXのPTSと証券取引所の違い
PTSとは、証券会社が運営するコンピュータ・システムを使って、取引所のように有価証券を売買できる仕組みです。根拠は金融商品取引法2条8項10号で、取引所に近い機能を持つため運営業務は原則として認可制とされています(金融庁の監督指針)。

| 項目 | 証券取引所(東証など) | ODXのSTART |
|---|---|---|
| 運営主体 | 金融商品取引所 | 証券会社(ODX)が運営するPTS |
| 取扱商品 | 上場株式など | ODXが取扱いを承認した不動産ST |
| 取引の入口 | 証券会社 | 取引参加者の証券会社のST取引用口座 |
| 売買の方式 | 取引所の売買制度 | 投資家の注文同士の競争売買、1日2回執行 |
STARTの売買は、午前11時30分と午後3時の1日2回にまとめて執行され、約定は保証されません。
発行体のケネディクスは、START上場によって、証券会社が相手方となる店頭での売買に加え、証券会社がSTARTへ注文を取り次ぐ方法でも売買できるようになり、取引価格の透明性が高まると説明しています。ST流通の手段は店頭の相対取引とSTARTの2つで、発行体はどちらを使うかを募集設計の段階で決めることになります。
STARTとブロックチェーンの関係
STARTはSTの市場ですが、売買の付け合わせそのものはブロックチェーン上で行われていません。ODXの公表資料では、マッチングシステムはAWSのクラウドサービスを活用し、将来はST発行基盤のブロックチェーンと連携するストレート・スルー・プロセッシング(STP)を見据えるとされています。

| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| STARTの売買はすべてブロックチェーン上で行われる | 付け合わせはクラウド上のマッチングシステムで行い、ブロックチェーン連携は将来の構想 |
| STの記録もODXが管理する | STの権利の記録はブロックチェーン・プラットフォーム側が担う。開始時のサポーターはBOOSTRYと三菱UFJ信託銀行の2者 |
| STARTに上場すれば発行基盤は問わない | 開始時にSTARTを支えたプラットフォーム運営者は2者で、どの発行基盤で発行するかが論点になる |
決済面の実証も進んでいます。ODXは2026年10月6日、STの二次流通取引でステーブルコインを使ったDvP決済の実証「Project Trinity」で、フェーズ2(業務運用検証)までの完了を公表しました。
発行体が選ぶ対象は、STARTそのものよりもSTARTと連携できる発行基盤と証券会社の組み合わせだといえます。
企業がODXのSTARTを使うメリット
STARTの最初の事例は、ケネディクスといちごの不動産STでした。発行体の側から見ると、得られる利点は大きく2つに分かれます。

メリット①:投資家に換金の手段を示せる
非上場の不動産STは、従来は証券会社との相対取引で売却するのが基本でした。STARTで売買できるようになると、募集時に投資家へ換金の選択肢を説明できます。購入をためらう理由の1つである「途中で売れるか」に、具体的な仕組みで答えられます。

メリット②:価格の透明性が高まる
STARTでは投資家の注文同士の競争売買で価格が決まります。ケネディクスが説明するとおり、取引価格の透明性の向上が期待でき、店頭で提示される価格だけに頼らずに済みます。

市場の規模も広がっています。ODXは2026年10月に、STARTの取扱い時価総額が1,000億円を突破したと公表しました。
ST発行からSTART上場までの流れ
STARTでSTを流通させるには、発行体のほかに少なくとも4種類の関係者が関わります。

- 発行体(不動産などの資産を持ち、STを発行する企業)
- 信託銀行(信託型のスキームで資産を受託する)
- ST発行基盤(STの権利をブロックチェーン上で記録する)
- 証券会社(STの引受・取扱いと、STARTへの注文の取次を担う)
- ODX(STARTでの取扱いを承認し、市場を運営する)
ST発行基盤には複数の選択肢があり、STARTの開始時点でサポーターとされたのはBOOSTRYと三菱UFJ信託銀行の2者でした。国内には他の発行基盤もあり、Pacific MetaはST発行基盤Progmatと戦略的業務提携を結んでいます。どの基盤を選ぶかは、組みたい証券会社とSTARTの取引参加者の顔ぶれとあわせて確認します。
個別の要件や費用は、資産の種類やスキームで大きく変わります。最初に確かめるべきは、資産の性質、スキームの形、証券会社と発行基盤の組み合わせ、STARTでの取扱いの見込みの4点です。
ODXのSTARTで注意したい点
STARTに上場しても、それだけで流動性が確保されるわけではありません。発行体が想定しておきたい点を3つの観点で見ます。

注意点①:売買が成立しない場合がある
STARTの売買は1日2回の執行で、約定は保証されません。売り注文に見合う買い注文がなければ換金できないため、投資家が想定した時期に売れないことがあります。

注意点②:売買の停止期間がある
ケネディクスの銘柄では、信託の各計算期日の6営業日前から2営業日前まで売買が停止されます。ODXの判断で一時的に停止することもあり、取扱いが廃止されると翌営業日以降はSTARTでの売買ができません。投資家への説明資料には停止の条件を明記しておく必要があります。

注意点③:取扱資産が不動産に限られる
公式FAQでは、STARTで取引できるのはODXが承認した不動産STです。不動産以外の資産をST化する場合、現時点ではSTARTでの流通を前提にできない点に注意します。売買は取引参加者の証券会社経由に限られるため、販売チャネルの設計とあわせて考えます。

ODXはSTARTの月次レポートを公開しており、売買の状況を確認する材料になります。
ODXを使ったST発行の検討の進め方
ST発行の検討は、資産を決めてから流通の手段を決めるまでを一続きで進めます。

- 資産の選定(ST化する資産と投資家像を決める)
- スキームの設計(信託型など、権利の持たせ方を決める)
- 発行基盤と証券会社の選定(STARTとの連携も含めて組み合わせを決める)
- 流通手段の決定(店頭の相対取引とSTARTのどちらを使うかを決める)
| 検討の目的・論点 | 確認すること | 確認先 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 資産の適格性 | ST化する資産の種類と、STARTの取扱対象に入るか | ODX公式FAQ、証券会社 | 資産の種類と流通先の候補が1枚にまとまっている |
| スキームの形 | 信託型などの権利の持たせ方と、関係者の役割 | 信託銀行、弁護士 | スキーム図と各者の役割が社内で合意されている |
| 発行基盤と証券会社 | STARTの取引参加者と連携できる組み合わせか | 証券会社、発行基盤の運営者 | 引受・取扱いを担う証券会社の候補が決まっている |
| STARTの要否と流通手段 | 店頭の相対取引とSTARTのどちらで流通させるか | 証券会社、ODX | 募集資料に記載する換金手段が決まっている |
| 投資家説明と開示 | 約定が保証されない点や売買停止の条件をどう示すか | 証券会社、弁護士 | 説明資料の該当箇所の案ができている |
資産、スキーム、発行基盤、流通手段の4つは互いに条件を縛り合います。STARTで流通させたい資産でも、組める証券会社や発行基盤によって選べるスキームが変わり、法務、証券、システムの各部門がそれぞれの論点だけを見ても答えが出ません。4つを同時に並べて判断する場面で、社内の検討は止まりやすくなります。ST発行の支援内容では、こうした組み合わせの検討の進め方を示しています。
Pacific Metaのサービス
セキュリティトークンによる資金調達を検討段階から支援します。
スキーム選定・規制対応・パートナー選定まで、STO・デジタル証券の発行検討を伴走します。
STO支援サービスの詳細を見るよくある質問
ODXはSBIの会社ですか?
ODXはSBIグループと三井住友フィナンシャルグループが設立した会社です。2021年11月時点の出資比率はSBI PTSホールディングスが70%で最も大きく、SMFG、野村ホールディングス、大和証券グループ本社も出資していました。その後、海外の市場関係者の資本参画も公表されています。
個人はSTARTのSTをどう買いますか?
取引参加者の証券会社でSTの取引用口座を開設し、証券会社を通して注文します。ODXに直接注文することはできません。売買は1日2回の執行で、約定は保証されない点を理解したうえで利用します。
STARTでは不動産以外のSTも取引できますか?
ODXの公式FAQでは、取引できるのはODXが取扱いを承認した不動産STとされています。ODXは不動産以外のSTの取扱いも目指しており、今後の対象拡大は公表資料で確認できます。
ODXとST市場STARTのまとめ
ODXはSBIとSMFGが設立したPTS運営会社で、2023年12月に開業したSTARTは不動産STを中心とする二次流通市場です。STを発行する企業にとっては、STARTを使うかどうかを含めた流通手段の設計が募集時の投資家説明を左右します。

STARTでの流通を視野に入れるなら、資産、スキーム、発行基盤、証券会社を一体で組み立てる必要があります。部門をまたぐ論点が多く、社内だけでは判断材料をそろえにくい領域です。