SECが2025年度の執行結果を公表、過去の仮想通貨関連訴訟における「投資家利益の欠如」を認める

米国証券取引委員会(SEC)は、2025年度の執行結果に関する報告書を公表しました。この中でSECは、過去に行われた仮想通貨関連の登録案件やディーラーの定義に関する訴訟について、連邦証券法の解釈に誤りがあったことを認め、投資家への利益をもたらさなかったと総括しています。2025年4月にポール・アトキンス氏が委員長に就任して以来、同機関の規制方針は執行件数の確保から、実質的な投資家保護を重視する方向へと大きく転換しています。

過去の執行方針に対する法的再評価とリソース配分の修正

SECが2025年度の執行結果を公表、過去の仮想通貨関連訴訟における「投資家利益の欠如」を認める

SECは報告書において、ゲーリー・ゲンスラー前委員長時代に進められた特定の仮想通貨関連訴訟を「連邦証券法の誤解解釈」であったと評価しました。特に対象となったのは、7件の仮想通貨企業登録に関する案件と、6件のディーラーの定義(有価証券の売買を業として行う者の定義)に関する執行措置です。

これらのケースについて、SECは直接的な投資家への被害を特定できておらず、結果として投資家に対する利益や保護も生み出さなかったと明記しています。報告書では、投資家保護という本来の目的よりも訴訟件数の積み上げを優先する偏りがあったことや、それによるリソースの誤配分があったことが認められました。

ポール・アトキンス委員長による「執行による規制」の停止

2025年4月にポール・アトキンス(Paul Atkins)氏がSEC委員長に就任して以降、同機関の執行方針は明確に変化しています。アトキンス委員長は、明確なルール作りを介さずに訴訟を通じて規制を進める「執行による規制(regulation by enforcement)」を停止する方針を打ち出しました。

この方針転換を背景に、SECは2025年2月以降、Coinbase、Binance、Kraken、Consensys、Cumberland DRW、Dragonchain、Balinaといった主要な仮想通貨関連企業やプロジェクトに対する執行措置を相次いで取り下げています。これは、過去の訴訟が個別の判断ではなく、組織的な方針転換(コース修正)の一環として行われたことを示しています。

今後の注力分野と業界への影響

SECは今後、形式的な登録違反の追及に代わり、詐欺、市場操作、信頼の悪用といった、投資家に重大な被害を与える不正行為にリソースを集中させるとしています。2025年度の執行件数は前年度から減少しており、質を重視したアプローチへの移行が鮮明になりました。

また、アトキンス委員長は、仮想通貨関連のスタートアップ企業が投資家保護を維持しながら資金調達を行えるよう、一定の条件下で規制の適用を猶予する「セーフハーバー」ルールの策定についても言及しています。これにより、Web3業界のビジネスパーソンにとっては、より予見可能性の高い規制環境が整備される可能性があります。

ポイント

  • SECが2025年度の報告書で、過去の仮想通貨関連訴訟が投資家利益に寄与しなかったことを公式に認めた点。
  • 以前の法的解釈を「連邦証券法の誤解解釈」と定義し、訴訟件数を優先したことによるリソースの誤配分があったと総括した点。
  • ポール・アトキンス委員長の下で、CoinbaseやBinanceなど主要企業への訴訟が取り下げられ、規制方針が「執行」から「保護」へ転換した点。
  • 今後は詐欺や市場操作などの重大な不正行為にリソースを集中させ、業界のイノベーションを阻害しない姿勢を示している点。
  • 仮想通貨スタートアップ向けのセーフハーバー(適用除外)ルールの策定など、新たな規制枠組みの構築が進められている点。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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